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第三章

 茶室に言った、茶道部の部室であり活動の場所であるそこに。学園の中にある庭の中の見事な庵の中に入ってだ。
 部員達に挨拶をするとだ、まずは部長がだった。
 寿子にだ、にこりと笑ってこう言った。
「はじめまして、水野さん」
「はい、これから宜しくお願いします」
「正座は大丈夫かしら」
「ある程度は」
「ならいいわ、茶道は正座だからね」
「そうして座ってですね」
「お茶を淹れてね」
 そして、というのだ。
「飲むものだからね」
「だからですね」
「そう、だから正座が平気ならね」
「問題ありませんか」
「まあ駄目でもそのうち慣れるから」
 部長は寿子ににこにこと笑ってこうも言った。
「だからね」
「心配せずにですか」
「そう、楽しんでね」
「まさか水野さんが入部するなんてね」
「うちにね」
 二年の娘達が寿子を見つつ言う。
「想像もしてなかったけれど」
「それでもね」
「一緒の部活になったからにはね」
「楽しくやりましょう」
「皆でね」
「そうしましょう」
 部長以外の三年生もこう言う、そしてだった。
 一年の後輩達もだ、こう言うのだった。
「あの人確か二年生で成績一番なのよね」
「特に数学はいつも満点らしいわよ」
「そんな凄い人がうちに来たのね」
「勉強とか教えてもらえるかしら」
「そうだったら有り難いわよね」
 こうした話もしてだった、そのうえで。
 部員達は寿子の入部を歓迎してくれた、そして。
 寿子ははじめて茶道をしてお茶を飲んだ、だが。 
 勝手がわからないのでだ、部長に全て聞いた。そうして手順を守ってだった。
 何とか一杯飲んだ、そうしてこう言った。
「結構なお手前で」
「いえ」
 淹れた部長は微笑で応えた、そのうえで寿子にあらためて問うた。
「どうだったかしら」
「茶道のこととですね」
「お茶の味もね」
「はい、茶道は何か」
「何か?」
「不思議ですね」 
 寿子は感じたものをそのまま述べた。
「はじめてですけれど心が研ぎ澄まされる感じがして」
「いいのね」
「そしてお茶を頂くと」
 それもというのだ。
「研ぎ澄まされながらも心が落ち着いて」
「いいものでしょ」
「はい、そして部長さんが淹れてくれたお茶は」
 それはというと。
「美味しかったです」
「有り難う、そう言ってくれるのね」
「飲んだ後ですっきりとします」
「ただ苦いだけじゃないでしょ」
「お口の中が奇麗になった感じがします」
「それが茶道のお抹茶なのよ」
「私は元々お茶が好きですけれど」
 それでもだというのだった。 
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