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勉強は駄目でも

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第二章

「全く」
「だって本当に嫌いだから」
「嫌いなものは巨人だけで充分よ」
 浜野一家は全員阪神ファンである、このことは姉妹も同じだ。
「折角二人共何でも食べるしね」
「私は勉強をなの」
「そう、頑張ったら?」
「だからどうしてもね」
「勉強は苦手っていうのね」
「上に超がつく位にね」
 大どころではなかった。
「嫌いよ」
「全く、それで将来どうするのよ」
「学校の勉強が必要ないお仕事とか?」
「そういう世界に行くっていうのね」
「駄目かな、それじゃあ」
「全く、本当に勉強したくないのね」
「うん」
 天真爛漫までにだ、勝恵は母にはっきりと答えた。
「ノート開くのだけは無理だから」
「全く、勝恵はそっちは全然駄目なのね」
 千代子もだ、そんな妹に呆れて言うのだった。
「そりゃ私も運動全然駄目だから人のこと言えないけれどね」
「お姉ちゃん勉強出来るからね」
「目指せお医者さんよ」
 将来はこの仕事を目指しているのだ、千代子は実際に。
「そして阪神の人達をケアしてあげるのよ」
「じゃあ私阪神のエースになるわね」
 実に明るく言う勝恵だった。
「藤川さん真っ青の剛速球で勝ちまくるから」
「藤川さんはストッパーでしょ」
 またやれやれといった顔で言う昌代だった。
「だから勉強もちょっとはしなさい」
「阪神に入るのに?」
「女の子でも入られる様になったけれどね」
 このことは三人共知っている、野球狂の詩の時代ではもうないのだ。
「けれど、本当に勉強嫌いなのね」
「何度も言うけれど」
「全く、勝恵ちゃんが将来どうなるのか」
 昌代は次娘については不安を感じて仕方なく言うのだった。
「心配だわ」
「だから阪神のエースになるから」
 勝恵だけはこう言う、そしてだった。
 勝恵はとにかく勉強をしなかった、成績はクラスどころか学年でもダントツだった、勿論逆の意味で。しかしだった。
 運動は正しい意味でダントツだった、それこを何をしてもだ。
 最高の成績だった、とにかく身体能力はズバ抜けていて。
 身体も頑丈だ、怪我も病気もせずだ。
 学校は皆勤賞だ、そして性格はというと。
 天真爛漫で底抜けに明る、千代子も暗い性格ではないが。
 それでもだ、家の自分達の部屋でだ、勝恵にこう言うのだった。
「あんたの明るさはね」
「どうだっていうの?」
「本当に底抜けね」
 そこまで明るいというのだ、机に座って教科書ではなく漫画を開いている彼女に。
「とことん明るいわね」
「暗くなるのなんて性に合わないしね」
「そうよね、そのせいでね」
「そのせいで?」
「あんた私達の学年でも評判よ」
 五年生の間でもというのだ。
「明るくて楽しい娘ってね」
「人気あるのね、私」
「いい評判よ」
 評判は評判でもこちらだというのだ。
「いい感じよ」
「そう、嬉しいわね」
「少なくともあんた嫌われてないでしょ」
「ううん、喧嘩はよくするけれどね」
「けれど弱いものいじめはしないし」
 こうしたことは絶対にしない、このことは千代子もだ。
「引きずらないでしょ、しつこく」
「執念深いの大嫌いよ」
「だからね」
「私嫌われてないの」
「無闇な位なまでに明るいから」
 こうも表現した千代子だった。 
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