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切り札は隠す

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第四章

「合コンの時にね」
「まあその時にね」
「見せてもらうわね、その切り札」
「何なのか訳がわからないけれど」
「それでもね」
 友人達はこう彼女に応えた、そしてだった。
 時が進み合コンの日となった、その日の夕刻の商店街前にだ。
 女の子達がそれぞれこれはというお洒落をしてだった、そこに集まると。最後に梨亜杏が来た。その彼女を見てだった。
 女の子達はびっくりしてだ、その彼女に言った。
「ちょっと、それ何よ」
「まさかそう来たの?」
「いや、これはね」
「意外よ」
「そうでしょ」
 ドヤ顔での笑みでだ、当の梨亜杏は応えた。見れば今の彼女の服はだ。
 上は普通のお洒落だった、黄色のブラウスに肩にかけてある薄いレモン色のセーター。そしてその下は。
 青の半ズボンだった、しかもその半ズボンは。
 足の付け根までしかないかなり短いものだ、脚は素足で靴以外は何もない。白く綺麗なすらりとした脚を見てだ。
 女の子達は目を瞠ってだ、こう梨亜杏に言った。
「あんたの切り札って」
「まさかと思うけれど」
「脚?」
「それだったの」
「そうなの、実はね」
 自分から言うことだった。
「私昔からよく脚のこと言われてたのよ」
「脚が綺麗って」
「そう言われてたのね」
「そうだったの、高校時代いつも言われて少し嫌だったから」
 だからだったというのだ。
「大学に入ってからはね」
「そのズボンでなのね」
「隠してたのね」
「そうだったのね」
「そう、けれどね」
 しかし、と言うのだった。
「今日は違うから」
「勝負どころだからっていうのね」
「彼氏ゲットする為の」
「だからこそあえて」
「脚を出していくのね」
「真剣勝負よ」
 彼氏を手に入れるそれだというのだ。
「本気だから」
「ううん、じゃあね」
「今から合コンに行ってね」
「それからね」
「彼氏ゲットね」
「お酒も飲むけれど虎にはならないから」
 そこも気をつけるというのだ。
「元も子もないからね」
「そうそう、幾ら美味しくてもね」
 それでもだった、このことは。
「酔って馬鹿やったらね」
「駄目だからね」
「そうよ、だから」
「気合入れて行くわよ」
「わかってるわ、わかってるからこそね」
 それ故にとだ、笑顔で言う梨亜杏だった。そうして。
 全員でそのバーに行き合コンをはじめた、そして梨亜杏は。
 自慢の、切り札のその脚を男連中に見せる。そうして話をするのだった。
 そしてだ、そのうちの一人とだった。
 梨亜杏は仲良くなった、そうして。
 メールも交換してだ、合コンの後で女の子達に笑顔でこう話せた。
「やったわ」
「あっ、一人ゲットしたのね」
「それが出来たのね」
「ええ、メール交換してね」
 そして、というのだ。
「また会うことになったわ」
「やったじゃない」
「合コンの目的果たせたじゃない」
「どうなるかって思ったけれど」
「そこまで行き着けたのね」
「出来たわ」
 こう笑顔で友人達に言うのだった、そして。 
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