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地連のおじさん

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第二章


第二章

「私達を呼んだらしいですね」
「幹部が俺達をか」
「何でなんでしょうかね」
 三曹にもわからない話で首を傾げさせていた。
「これって」
「俺に言われてもわかる筈ないだろ」 
 実際にどう考えてもわからないので困っている二曹だった。
「そんなことは」
「やっぱりそうですか」
「しかし幹部か」
 それでもこのことについて考えるのだった。
「俺ここ数年ずっと教育隊にいたからな。幹部の人の知り合いも限られてるんだけれどな」
「誰ですかね、本当に」
「やっぱりわからないな。まあとにかくだ」
「ええ」
「その幹部が誰かだよな」
 それでわかるというのだ。そうして実際にその幹部がやって来るのを待った。暫くしてスーツを着たやけに背の高い男が来た。それは。
「あれっ、御前もか!?」
「愛敬じゃないか」
 二曹と三曹が彼を見て同時に驚きの声をあげた。何とやって来たのは二曹が教育隊で教えた隊員の一人であり三曹の同期であった愛敬高志だったのである。
「御前も地連に来ていたのか」
「今はじめて聞いたぞ・・・・・・ってまさか」
「ああ、そのまさかだよ」
 愛敬の方から笑顔で三曹に言ってきた。
「俺幹部候補生の試験に受かってな。それで三尉になったんだよ」
「そういえば御前大学出てたよな」
「それで久留米で一年走り回ってきたんだよ」
 陸上自衛隊幹部候補生学校は久留米にある。チェッカーズの出身地でもある。
「で、こっちに配属されたんだけれどな」
「それで俺を呼んだのか」
 これでようやく納得した二曹であった。しかしまだいぶかしむ顔で述べるのであった。
「しかし。俺が地連か」
「土井さんなら是非って思うんですけれど」
「俺は教育隊の方がよかったんだけれどな」
「そう言わないで。是非にですから」
 しかし三尉の言葉も真剣であった。
「そう思って二人をですね」
「スカウトしたのか」
「そうなんですよ」
 にこにことして真相を話すのだった。
「実は」
「それで俺はここになったのか」
 二曹は真相がわかってはじめて頷いた。
「何かなあ」
「私もですか」
「知り合いがいるとやり易いじゃないですか」
「それがスカウトの理由?」
「いえ、勿論それだけじゃないですよ」
 流石にそこまではいかないというのだ。
「ただですね」
「ただ?」
「やっぱり何かあるんですか」
「期待してますよ」
 こう言うだけだった。
「そういうことで」
「それで納得できると思っていたら凄いと思わないか?」
 相手が三尉でもまだ教育隊の記憶が残っているのでこう返した。
「いや、仕事だしやらせてもらうけれど」
「頑張って下さい」
「わかったよ。とにかく俺をスカウトしたのは」
「ですから知り合いがいてくれるのと」
 結局それが最大の理由だった。しかもそれを隠そうとさえしない。
「向いていると思いますから」
「そうかな。俺に人材の募集とかできるのかな」
 地連が具体的に何をするかというと隊員の募集と確保である。自衛隊はアメリカ軍の様に正義を信じるなら入れ、と言って人が集まったりはしない。自衛隊が最も頭を悩ませる問題は隊員の確保なのである。
 
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