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新説シンデレラ 

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第五章

「ドリゼラは婿を取ってアナスタシアも嫁いだ」
「残るはですね」
「そう、シンデレラだけれど」
「あの娘にはとびきりの相手を考えています」
「とびきり?」
「はい、選帝候でもあられる山の国の王ですが」
「あの国の?」
 男爵は夫人の今の言葉を思わず声を乱してしまった、そのうえで言うのだった。
「帝国内でもかなりの力を持つ」
「あの国の末王子ですがまだ婚約もされておらず」
「そうだったんだ」
「この度舞踏会を開きそこで」
「婚約者を選ぶんだね」
「そうなっています」
 夫に対して確かな顔で話す。
「ですからその舞踏会にです」
「シンデレラを出して」
「はい、王子を射止めてもらいます」
「また大きく出たね」
 夫は驚きを隠せないまま妻にこうも言った。
「あの国の王子なんて」
「そうですね、男爵という家柄を考えますと」
「それに当家は古いだけだよ」
 力もないというのだ。
「びそれで選帝候の王子なんて」
「しかし末王子ですので」
「男爵家でもだね」
「はい、大丈夫です」
「だといいけれどね」
「しかもこの王子様は若いながら中々のお方で」
「聡明なんだね」
「はい」70
 夫人はこのことも調べていた、そのうえで夫に話すのだった。
「おそらく王国の宰相か大臣にです」
「将来はなれる」
「ですから」
「シンデレラはだね」
「あの娘の美貌と気品なら」
 間違いなく、というのだ。
「王子のお心を手に入れられます」
「その為にずっと教育していたんだね」
「他の娘達もですが」
「シンデレラはだね」
「こうした良縁を探していました」
 これまでずっとだ、夫人はそうしていたのだ。全ては男爵家の為に。
「そしてこのお話です」
「まさにその時だね」
「ドレスはあります」
 舞踏会で着るそれもだ、用意しているのだ。
「普段は質素な身なりをさせていますが」
「貴方も含めてね」
「しかしいざという時の為にです」
「用意していてよかったね」
「ドレスは着飾るだけのものではないのです」
「こうした時になんだ」
「はい、着るものです」
 そうしてというのだ。
「殿方を射止める為のものでもあるのです」
「そういうことなんだね」
「ではそのドレスを着て」
 用意していた見事なそれをだ。
「シンデレラには舞踏会に出てもらいます、そしてあの娘の気品と内面も見れば」
「教養もあるしね」
「はい、あの娘は内面も美しいです」
 このことも娘達全員であるがそれを磨く為にも厳しく教育していたのだ。使用人達と同じ仕事や質素な生活をさせて只の貴族の娘にはさせなかったのだ。
「聡明な殿下ならです」
「必ず気付いてくれるね」
「貴族は内面も貴族でなければなりませんが」
「そのことも家の為なんだ」
「その通りです」
 やはりこう言うのだった。 
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