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新説シンデレラ 

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第二章

「貴女にも嫁いでもらいます」
「私もですか」
「貴女は娘達の中で最も器量がいいです」
 率直にだ、夫人はシンデレラに言った。
「その貴女ならよい嫁ぎ先が見付かるでしょう」
「と、いいますと」
「貴女の嫁ぎ先はまだ決まっていませんが」
 それでもというのだ。
「私は必ず貴女に相応しい嫁ぎ先、しかも」
「しかも?」
「この家を栄えさせるそれを見付けましょう」
「トレメイン家をですか」
「この家は確かに古いです」
 帝国が出来た頃からある家だ、確かに家柄は古い。
 だが、だった。夫人はあえてこのことも言うのだった。
「しかし古いだけで権勢はなく領地も狭く」
「力はないよ」
 その通りだとだ、男爵も苦笑いで言った。
「残念だけれどね」
「そうですね」
「私も宮廷には出入りしたこともあったけれど」
「大臣にも将軍になったこともなく」
「うん、権勢はないよ」
 それがトレメイン男爵家だというのだ、男爵は自ら言った。80
「何もね」
「そうですね、ですから」
 夫人は言うのだった。
「このままではいけません」
「当家は衰えるだけだね」
「そうです、それをどうにかするには」
 夫人は話を続けていくのだった。
「婚姻です」
「つまり有力者に娘達を嫁がせるんだ」
「そうすべきです」
 夫人は夫達に強い声で言った。
「是非共」
「そうだね、しかし」
「よくないと仰るのですか」
「そこまでする必要があるのかな」
「あります」
 夫人は夫にはっきりと答えた。
「そうしなければ我が家は衰えるばかりなので」
「娘達に嫁いでもらうんだね」
「アナスタシアはメラニー子爵家に嫁いでもらいますが」
「メラニー子爵というと」
「はい、代々軍人として武勲を挙げていますね」
「あっ、では私は軍人の妻ですね」
 そのアナスタシアがにこりと笑って応えた。
「そうなるのですね」
「貴女のその明るさと朗らかさはいいものです」
 それ故にというのだ。
「そして子爵家の奥様は私の旧友ですが非常に心根のよき方」
「私が家に入ってもですね」
「悪くはされません」
 そのことも見てだ、夫人は言うのだった。
「ですから貴女はです」
「軍人の妻となる為に」
「教育を受けるのです」
 こう次娘に言うのだった。
「そしてドリゼラも」
 長娘にも言う。
「この家を継ぎさらに発展させる為に」
「教育をですね」
「受けてもらいます、勿論です」
 最後はシンデレラ、彼女だった。
「貴女もです」
「あの、私は」
「まさか私と血がつながっていないというのですか?」
「それは」
「貴女も私もこの家の者です」
 即ちトレメイン男爵家の人間だというのだ。
「それなら同じです」
「そうですか」
「そして男爵家の娘として」
「私もですか」
「然るべき教育を受け」
 そして、というのだ。 
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