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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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運命は我らを幸福にも不幸にもしない

運命は我らを幸福にも不幸にもしない。
ただその種子を我らに提供するだけである。
——モンテーニュ——

 


ここは湯隠れの里

観光地として有名な湯治施設を多く保有する、忍びの隠れ里とは思えない平和な里だ

月隠れからこちらへ逃れて4ヶ月

地元住民と交流を持つに至ったこの俺だが、残念な子と評されている

それはなぜか


「おいこらエロジジィ!
 テメェ俺を囮にして逃げるんじゃねーぞ!」


三日と開けずに騒動を起こす人物の連れだからだ

俺は簀巻きにされ、エロジジイこと自来也に覗き場へ引きずられている

取材と称して覗きを行うジジイの悪癖に付き合わされるたびに、これも修行と言われて俺が囮にされるのだ

覗きがバレて女性客に追われることもある、俺が施設の人に怒られることもある

理不尽だ


「この自来也さまに向かってエロジジイとは何事か!
 そんなんだからお前は大きくなれんのだ」


呆れたように溜息をつかれる
こっちのほうが呆れているというのに、このジジイ反省の色もない


「関係ねーだろが!・・・げほっ
 あ、あのねーちゃん良い尻」


覗き場に到着すると、微かに見える女体を観察する

胸も良いものだが、尻も良いよね


「何!?」


途端目を輝かせ鼻息荒く覗き始める

本当に何故こんな男が伝説とまで呼ばれるのだろうか

立派に育った弟子、四代目火影に申し訳なく思わないのか

あと弥彦と長門と小南に謝れ

三代目火影は割とエロかったのできっと同類なんだろう、多分

メモをとりながらヒートアップしていく自来也を尻目に、深く溜息をついて・・・咳きこんだ

良かった吐血しなかった














場所を移して人里近い野原に向かい合う俺たち


「よしよし、本日の取材はこれまで!
 それでは修行の時間といくかの」


にんまりと笑われたのがムカついて脛を蹴ろうとするが、案の定軽く避けられた


「そんな見え見えの蹴りじゃあたらんぞ?」


頭に手をのせられる

18歳だと知っているのにこの行動、おちょくっている、こいつはおちょくってやがる



「・・・さっさと修行つけろよ」



手を払いのけてやる

そうするとカッカッと笑って座りこまれた


「うむ、それではいつも通り瞑想からだ、座れ」


以前チャクラコントロールの才がないと言われていたが、自来也の修行を受け始めてから少し変化が見られるようになった

そもそも、チャクラとは肉体エネルギーと精神エネルギーを練り上げたものだと言われている

人間に生まれつき備わっている力がコントロール出来ないわけがない、そう自来也は断言した


神殿時代、教科書見せられて後は放置という状況に問題があるのだとも言った


チャクラはあるのだからどう練り上げるのか、どう扱うのかを教えなければ使えるわけがない

慰められるかのように語られた



・・・確かにそうだよな、いきなり教科書見せて試合やれとか言われたことないわ



ぶっつけ本番にもほどがある



「コン、集中が乱れとるぞ?」



自来也に指摘されて思考の渦から引き戻される

再び瞑想に集中する

俺の腹部に熱が籠もる、自来也が唸った




また失敗か、溜息をついて立ちあがり、目をあけると炎に包まれていた




「うーむ、やはりパルコのチャクラしか引き出せんか」




首をかしげて悩まれる

・・・自来也に修行をつけてもらって早三ヶ月、未だに俺自身のチャクラを練り上げたことがない

瞑想すると必ず九尾の、パルコのチャクラの残照たる狐火が俺を覆うのだ

俺自身のチャクラは練れないが、この狐火を扱うことは可能になった

覆わせることしか、出来ない防御用だけどな

これはきっと我愛羅の砂と同じなんだろうか


「とりあえず狐火纏ったままリハビリ運動せい」


不燃布で作られたクッションを手渡され、関節運動を始める

切り傷とか爆破痕は治ってるんだが、サソリに飲まされた毒の影響が残っていて体が動かしづらい

寝ころんで関節を曲げたり伸ばしたりしていると、そそくさと木桶と水差し、タオルに着替えまで用意される















ふっ過保護師匠め、慣れてきたリハビリ運動で吐血なんぞ、もうしない!
















せっせと用意された看護用品を横目に勝ち誇った笑みを浮かべた















その15分後、血塗れになった上着を洗う姿が住民に目撃された































湯隠れの里内部、決して未成年は入り込めない風俗店が立ち並ぶ裏路地

2人の男が居た

「・・・なー角都よォ」

1人は鎌を持った黒い外套の男

連れであるもう1人の覆面をつけた、同じく黒い外套を身に付けた男、角都に話しかける

「・・・黙って歩け」

「俺ら、尾獣狩りしてんだよなァ?」

立ち止まる角都、訝しげに連れを見る

「どうした?とうとう頭がイカれたか?」

冗談抜きの低い声、医者によるか?と声をかけた




「・・・なんか癪に障るけどよォ、今は良いや
 俺ら、九尾の人柱力って、捕まえた・・・よな?」





「・・・飛段、お前死に過ぎて頭が・・・」

冷や汗をかいて飛段を哀れむ

それに激怒するはずの飛段から何の反応も返ってこないことがまた不審がらせる

「いや、捕まえたって・・・あれ?でもまだ尾獣狩りの説明されただけ?
 まだ人柱力の居場所探しの途中で・・・あれ?」

頭を抱え始めた飛段

自分でも何が何だかわからないと騒ぐ

「あーッわかんねぇ!!
 そうだトビに聞きゃいいかってトビって誰だ?
 ・・・うーん・・・鬼鮫あたりならわかんだろ、な、角都ゥ!」


納得したらしく、立ち止まったままの角都を置いて足早に歩き出す



「・・・・・・・・・」



溜息をついて仕方なく歩きだす角都

騒がしい相方に疲れが出てきたようだ



「・・・結局何だったんだ・・・」



聊か肩を落とし年相応の哀愁を漂わせる

寂しげに風が外套を揺らした


 
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