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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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芸術を持っている者


学問と芸術を持っている者は、同時に宗教を持っている。学問と芸術を持たない者は、宗教を持て!
—ゲーテ—

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芸術を持っている者

 





◇◆◇トビ◇◆◇





解毒薬を使ったからと言って、すぐさま動けるようにはならない

不貞腐れたデイダラは寝るとだけ言って瞼を閉じた

もしものためにと、前の記憶から用意しておいた蜂毒用の解毒薬

前の世界のままならば、とっくの昔に解毒は終わっているはずだった


・・・どうやら修行の成果が出たらしい


全く、想定外の成長を見せたものだ

どうせ成長するならば、弱いオツムを鍛えれば良かったのにな

暗部だというのに、真っ向から勝負を仕掛ける癖は無くなっていないらしい


「・・・アニナル、か・・・」


あの方が語った、油女シュロの居た世界

もっともアニナルに近い世界、暗部シュロの死後、筋書き通りに進んだ世界

———あぁ、そういえばあのソラという少年も油女シュロと同じ世界か

九尾のチャクラを培養した物を投与された少年

そういうやり方もあったかと聞かされた時は感心したものだ


(守護忍十二士カズマの息子ソラ、か・・・
 ”こちら”ではフリドと名乗れず、そのまま死んでいった男の息子
 果たしてソラは、何処まで記憶を持っているのやら)


あの方の気まぐれで、各々所持している記憶は皆バラバラだ

サソリは穢土転生された記憶まで持つと言うし、鬼鮫は暁加入直後までしか記憶を持たないという

そういえばデイダラは記憶を一切持っていないな

何だったか、以前飛段が尋ねていたのだが

確か・・・



———芸術を持っている者は、同時に宗教を持っている———

———だから彼に邪神は必要ないんだよ———



なら、サソリはどうなのかと思ったが、あの方にとってサソリのアレは芸術ではないようだ

押し殺してきた感情の塊なのだそうだ

それにサソリ自身が神という存在を欲してしまった

邪神を求めてしまった、だから、記憶を持った

そう語る声が、まるで自嘲しているように聞こえたのは気のせいだっただろうか


まぁいい

今はそれよりもやるべきことを成さねばならない


「・・・楽に散らばった力を集められたら良いのだが・・・」


思わず呟いた声が、酷く薄っぺらく感じて

己がどれほど軽薄な笑みを浮かべているだろうかと、顔に手を当てるものの・・・

仮面に阻まれ、口元が歪んでいるかどうかは分からず仕舞いだった












◇◆◇コン◇◆◇








「ま、暁とジャシン教が繋がっているのは確定として、長であるパルコを調べるか
 
 邪神なんていう曖昧なモンより、尾獣のほうがまだ調べやすいだろう

 二年前、月隠れとこちらで何があったかを調べたいんだが・・・
 
 流石に月隠れの情報はねえなぁ」


天井を仰いで溜息をつくシュロ

そうだな、月隠れの情報はこちらでは無い・・・

オレの月隠れの知識じゃ、神殿内部位しか分からない

正直、内部事情も結構分からない


「・・・無い事も、無いんじゃないか?」


顎に手をあてて、唸っていた先生が口を開いた

何か、良い案でも思い浮かんだのだろうか


「へ?先生、どう言う意味ッすか?」


シュロがキョトンとしている


「いや、イタチがいるじゃないか
 ・・・白の方が手っ取り早いか」

「先生、イタチはともかく白はもう・・・」


シュロがちらっとオレを見る

白の死は・・・まぁ、なんだ、割と落ち込んだけれどそんなに気にしなくても良い


「穢土転生、すればいいんじゃないの?」


「「・・・」」


シュロと向き合ったまま、しばし無言

・・・この人、また原作知識忘れてる・・・?

いや、術の解説を知らないだけか


「あれ、ダメ?」


多分術の下準備が出来ないから、無理かな


「・・・先生、穢土転生の術はですね
 対象の人間が持つ一定量の個人情報物質・・・つまりDNA
 あと、生贄が必要なんですよ」


白の遺骸は火葬してしまったし、生贄をどうやって用意すればいいのか


「再不斬から遺灰の一部貰えばいいんじゃないか?
 生贄だったらほれ、医療部隊に行けば死体とか一杯あるぞ」


い、遺灰ってDNA残ってるの・・・?


「え、先生、それ良いの?」

「新術の研究っていえば貰えるぞ?
 手続きは、イカリに任せれば大丈夫だろう」

「ナンテコッタイ
 ・・・待ったシナイちゃん、オレ達で穢土転生発動出来るだけのチャクラ・・・あるか?」

「あ」


今気づいたというように口を開いた先生

・・・チャクラ、無理だな

六班は穢土転生を発動できるチャクラがない


「正直イカリも先生もチャクラが少ない方
 鶸茶だって殆ど無い
 オレは蟲へチャクラ供給しなけりゃならないから、必要量が足りない
 つーかオレは術式覚えられねェ」

「シュロ・・・」「お前・・・」


思ってたより可哀想な記憶力だったんだな


「やめてよそのアホの子を見る目!!やめてよ!」


少しだけシュロが泣いた

・・・そう言えば、たまに印結ぶ順番間違えたりしてたよな・・・
 

「そうか・・・穢土転生は無理かー・・・良い案だと思ったんだけどな」

「でもイタチに聞き出すってのは良いかもしれませんよ
 割と・・・巫子に友好的なんだろ?なぁ?」

「・・・割と、友好的かな
 あの天然信徒に何故パルコが邪神となったか聞き出す
 先生も当面の目的はこれでいい?」

「私が言いだしたことだ、文句なんてないさ
 ・・・天然信徒?」

「・・・あ、なんかそう言わなきゃならないような気がして・・・」


自分でもどうしてかは分からない


そう、いえば・・・六歳の誕生日のこと、思い出さなきゃな・・・


六歳以前のことは、ちょこちょこ思い出してきている


誕生日が思い出せない


たまに、炎とクナイらしき影が脳裏に浮かぶ


「・・・パルコ」


声に出して、呼んでみる

久しく名前を呼ぶことはなかった

ズキズキと頭痛が襲うけれど、腹部の熱が身を弱らせるけれど

呼べば、何か応えてくれないかと、我ながら都合のいい考えを哂ってしまう


・・・応えて、くれるわけがない


さらに激しく襲う頭痛に耐えきれず、思わず座り込んだ

































「—————————————痛っ」


小さなうめき声を上げ、座り込んだ少年僧に駆け寄る若い忍


「どうしたのソラ君、また頭痛?」


水を持ってこようかと、声をかける忍の手を振り払い、少年僧はただ頭を抱える


「うぅ・・・何か、頭と腹がいてぇ・・・熱い・・・」
 

困ったなぁと呟く忍

医務室にでも運ぼうと少年僧の体に触れた瞬間———



殺意を感じて振り返ってみれば、そこには




「———ここで共鳴とは・・・

 巫子もこの寺にいるんだな」




橙の渦巻いた仮面をつけた男が一人、月夜を背に見下ろしていた







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穢土転生って便利だよね!使えれば
 
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