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明日の日記

作者:PC眼鏡
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プロローグ (視点シフト)
  とりあえず 2-(後)

 
前書き

今回は事後の話になります 

 

雲ひとつ無い満天の星空の下、タクシーの後部座席にたたずむ女性がひとり

「 あぁ、言ってしまいました・・・ 」

さっきまで自分の所有するコマの部屋にいたこの女性は、そのときの自分の行動を思い出してはため息をつき、そして思い返したように元気になったりを繰り返している

「 時間が無かったとはいえ、あんな説明で理解してもらえたでしょうか・・・
  そもそもこっちの事情を話してしまってよかったんでしょうか・・・
  いやしかし、一つくらいはこっちの事が分かってるコマが居た方が計画も立てやすいですし 」

ひとりで何やらブツブツと呟いている。かなり不気味である
そんな乗客との密室空間に運転手は耐えられなくなりつつあった

「 でもまぁいいですよね? 死んでも変えはいくらでもいますから・・・
  レアを失うのは心が痛みますが、なんとかなるでしょう 」

後部座席から聞こえる物騒な言葉に、運転手は目的地を変更した
実は今乗っているこの乗客、車に乗るときに目的地はどこか?と聞いた際に
『 神界までお願いします 』
・・・とのことだったので、今はとりあえず車を走らせながら目的地を模索しているところである。

停まって考えればいいじゃないかと思われるが、今月は実績が悪く売り上げが前年の7割にも届かないことが予想されていたのでメーターを少しでも回すための苦渋の選択なのだ。こんなことをすれば客からクレームを滝のように浴びせられる羽目になるのが一般的だが、今回の乗客は優しそうだし目的地が理解できないこともあって罪悪感を感じながらも同じ道をループしていた。

・・・しかし、先ほど聞こえてきた言葉はクレームを通り越して命の危険を感じさせるものだった。謝れば済まされる問題ではない、これはヤバイやつだ。そう思ったタクシー運転手はループから抜け出して新しく決めた目的地へと急ぐ

「 さっきよりスピードが出てるみたいですが、大丈夫ですよ?
  私、急いでませんから 」

と、ありがたいお言葉を頂戴する
わかりました。と、返事はしてみたものの内心穏やかではない

神界とかなんとかいう場所へ到着する目安の時間が分からない以上、もしも
『 いつまでかかるんですか? 使えない運転手ですね・・・ 』
とか言い始めて、後ろからサクッとやられるという可能性が頭をよぎる
まだ死にたくない・・・

そんな極限の緊張感の中、20分ほど2人っきりのドライブは続き、タクシー運転手が目指していた目的地にようやくたどり着くころにはハンドルが汗でべたべたしているほどであった

「 つ、つきましたよ。 降りてください 」
「 ? はい、どうも 」

そう言って女性は不審に思いながらもタクシーを降りる。本来ならば車から降りる前に運賃の精算をするはずなのにこの運転手は車から降りるように促したからだ。そもそもここは神界ではない

「 ・・・あの、ここどこですか? 」
「 し、神界にはあの車で行けますから! 」

そう言ってタクシーは走り去って行った。

「 まだお代を払ってませんのに・・・ 」

女性は申し訳なさそうに呟く。そして周囲を見る
そこには特殊な車両が多く停めてあり、たしかにこれなら神界へも行けそうな気がする。なんか天井についてるし、色も奇抜である

女性がタクシー運転手の行動に対していろいろと思案していると、不意に声をかけられた

「 君、私たちに何か用かい? 」

話しかけてきたのは、青いシャツの上から黒いベストを着ている体格のいい男性。なにやら装飾がついた帽子をしっかりとかぶり、ズボンは深い紺色のものを履き、腰には棒のようなものを携えている。私たち(・・・)ということは他にも何人かいるのだろう。ここのタクシー会社の人だろうか

「 はい、神界までお願いしたいのですが 」
「 あ~、新開(しんかい)ね。たしかにここからじゃあ遠いなぁ 迷子になっちゃったのかな? 送ってあげるからその車で待っててね 」
「 ありがとうございます 」

新開市は現在地から車で2時間程の所にある地区であり、女性一人を歩いて帰らせるには遠すぎる。しかも今は深夜である。

同僚に事情を説明し、了解をもらった男はすぐさま女性の元へ引き返す。しかし男が車に戻ってきたときには、女性は後部座席でやすらかに寝息を立てて眠っていた。疲れているであろう彼女を起こさないように男はゆっくりと車を発進させるのだった












・・・







・・・自分が乗った車が、下が黒で上が白の二色で塗られており、屋根には真っ赤な警告灯がついていた事に彼女は気づいていない

その数分後、女性が走行中のパトカーの後部座席から忽然と姿を消し、『 お代 』と書かれた封筒を運転していた警官が見つけることになるが、それはまた別の話である・・・・




 
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