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『自分:第1章』

作者:零那
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『送り狼』

オーナーが送ってくれるって言ったけど、本音は、翔平に迎えに来て欲しい。

メールが何通も入ってる...
『大丈夫?終わったら迎えに行くけん連絡して...』


ママと最初に話した時、0時迄って話だったから。
大体いつも迎えに来てくれてた。
翔平の家族は、0時なら皆、基本的にまだ起きてる時間帯だった。

翔平が来るとき、寝てる娘は、お母さんが気に止めてくれてた。


でも
『彼氏は居ない』
それが暗黙のルール。
教えられた。


オーナーはタクシー乗る訳じゃないらしい。
ウチは、歩いて送るには遠い。
しかも反対方向に歩き出した。
どうするべき?

そっか!
アフターとかゆうやつか!
どっか店行く気なんかな?
どこ入るんやろ?
黙ってついて行く...
でも、通りから外れた。

その時、零那は、また悲劇が起きることを察知した。
体が動かん。
立ち止まった。
言葉は出てこん。

オーナーの手にチカラが入る。
走ることは不可能。
喉が萎縮して声も出ん。
逆らうチカラさえ無い。
従う他無い。


カンカンカン...
そんな音のする古い鉄板の階段。
扉が開いた先には布団が敷かれてあった。
そこへ放り投げられた。

コトが始まる。
酔ってるせいか、頭重い。

天井はぐるぐる廻ってる。
オーナーのヤッてるコトの感覚が全然無かった。
上で、間抜けな顔して腰を振ってる姿は見える。

でも、正直、挿入されてるかどうかの感覚が無かった。
それでも、喪失感だけは妙に在った。

終わったらしく、風呂に入ったっぽいからそのまま走って帰った。
外が明るい。

一体どれだけ弄ばれたん...


翔平に合わす顔が無い。
とは言え、帰らな娘が登園できん。
メールも着信履歴も凄い数...
誤魔化す事は出来ん。
店にも『話が違う』と文句を言いに行ってる可能性が高い。
ママに迷惑かけるのは嫌や。


廻らん思考回路で辿り着いた答え。

それは『酔っぱらって、海行って、気持ち良くて、そのまま寝てしまった』って、なんとも言い難い答え...


何かあると、零那はスグ海に行く。
だから違和感は無いだろう。
普段行く海は何カ所か在る。

でも、1ヶ所だけ、其処は絶対に誰にも言わんかった。
施設出て自立して、初めての仲間が出来て、思い出がいっぱいいっぱい詰まった、生涯大事な場所やから...


翔平は、この日、会社を休んだ。
すっごい心配したって泣かれた。
寝れんかったから仕事にならんって...
こぉゆうの、デリの時から結構ある。

 
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