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『自分:第1章』

作者:零那
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『水商売』

仕事探してるってのを友達も知ってて、紹介してくれるって言うから話を聞いた。
スナックだった。

零那の中で『スナック』という職業は天才がするものだと思ってた。
勝手なイメージ。
毎日ニュース観て、新聞読んで、お客さんの名前や顔は勿論、様々なことをすべて把握してる。
更に頭が賢くて上品な女性しか出来んもんやと思ってた。


死ぬ気になったら出来るかも知れん。
今迄発揮せんかったチカラが自分の中にあるかも知れん。
そう、無理矢理思い込んで、ぶち当たってみるしかない...


面接の日取りを決めて貰った。
店をオープンして日が浅いし、女の子欲しいから早い方が良いって。
女の子...か...
やっぱ女性らしく在るべきやな...
スナックの面接って何着て行ったら良いか解らんから、友達に聞いて貰った。
普段着で良いらしい。
尚更考える。
普段着の服装で試されてたりする?
でも、零那の服装、どれもこれも似たようなもんばっか。

とりあえず、今迄のどこの面接より凄く緊張した。
喋れんとか、そんな失態晒すことにならん為に、聞いとくべき事、最低限出来なあかん事、色々とメモしてから行った。


いざ飲み屋街。
何回も通ったことある道。
でも決して入る機会は無かったビル。

なんか世界が違う。
高松のセクキャバ行ってた時とも違う。
田舎やから、あんな煌びやかな雰囲気とか無いけど、逆に路地裏とか危険地帯や危険な店も無い感じ。


ビルの名所と店名を書いたメモを見ながら探す。
お店に入る。
話をする。
凄くサバサバした感じの人。
友達のお母さんの友達らしい。
プロやから、零那の緊張とか解って、ほぐしてくれる為に世間話をしてくれた。
零那が書いてきたメモを見て笑われた。
気楽に考えてって。
常識の礼儀と言葉遣いが出来れば後は少しずつ覚えてくれたら良いって。
不安だったけど、この人なら大丈夫な気がするって思った。


即日、体験入店的な感じで働いてみる?って言われて、こんなにアッサリ?って思ったけど、頑張ってみることにした。

服とか準備するものとか...考えてたら、そのままで良いよって。
私服はキャミにミニスカ、キャミワンピばっかりって答えたら、ドレスとかじゃなくて私服で良いって。
露出してるしそんな感じならOKって。


『いらっしゃいませ』からの流れ。
だいたい最初はセクキャバの時と似てた。
ただ、違うのはトーク勝負。
話題の引き出しがない零那にトークは正直難関だった...
緊張してまともに喋れず終わった。



お金を貰うだけの価値があるトークってどんなの!!?


お客さんを前にしたらパニックなって喋れん。
下手な職務質問みたいになったりして最悪。
当たり前やけど風俗のノリじゃ無いから言葉が出てこん。

こんなんじゃあかん。
あかんあかん。
考えてるだけじゃあかん。
無駄金遣わすだけで終わってしまう。

やっぱ向いてない。
人と関わり合う職業は無理なんや。
しかもスナックとかプロしか居らん別世界なんか...自分みたいなんが来るとこじゃ無かった。

辞めてしまおう。
置いて貰うのは気が引ける。
給料貰うだけの仕事が出来ると思えん。

自分には『女』の体を利用した仕事しか出来ん、単なる馬鹿女なんやなって思い知った。


深夜0時『帰って良いよ、どう?出来そう?』
難しくて自分に出来る気がせんことを伝えた。
『そんな構えんでも、そのうち慣れるけん』
笑い飛ばされた。
このママは、たぶん器量がでかい。
相当。

迷惑かけるのは目に見えてる。
暫く沈黙してしまった。

ママが言う。
『そうそう、お金が必要なんよね?掛け持ちする?うちより時給出せれる所。』

翌日、そっちの店に行った。
そこはフィリピンのママだった。
最初の出勤はママの所。
後に、途中からフィリピンママの店に行く。
そう決まった。
フィリピンママの店は、オーナーが居る雇われママって感じだった。
オーナーは、どっかの会社の社長らしい。


普段のお客さんはポツポツと1人2人...
週末に団体が来る感じだった。

 
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