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蜻蛉が鷹に

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第二章


第二章

 仲間達にだ。こう問うのだった。
「貴様等はどうするんだ?」
「生き残ればか」
「その時はか」
「どうするかだな」
「ああ、その時はどうするんだ」
 あらためてだ。彼等に問うた。
「戦うか?どうするんだ?」
「そうだな。何かの形でな」
「そうする」
「それじゃあな」
 こう話してだった。そのうえでだった。
 彼等は敗れようとしているその時を過ごした。そして。
 日本はだ。遂に敗れてしまったのだった。八月十五日を迎えた。
 そうしてだ。海軍も陸軍もだった。解体されることになった。
 彼等は全員生き残った。しかしだった。
 空虚なものになった飛行場だった。敗戦と解体の決定によってだ。彼等の心自体が空虚なものになっていた。その中でのことだった。
「もうな。軍隊は必要ないらしいな」
「海軍も陸軍もな」
「当然航空機もな」
「いらないそうだ」
 彼等は自分達の隊舎の中で話すのだった。粗末なベッドだけがある木造のその建物の中でだ。
「もうな」
「じゃあどうする?」
「俺達はな」
「一体どうするんだ?」
「それで」
「もうどうしようもないだろ」
 一人が言った。
「こうなったらな」
「軍隊がなくなるんだからな」
「じゃあ俺達は戦えないか」
「二度とな」
「いや」
 しかしだった。これまで黙っていた浜尾がだ。こう言うのだった。
「俺はまだ」
「諦めないのか?」
「戦うのか?」
「軍は解体されるのに」
「それでもか」
「若し機会があれば」
 どうかというのだった。
「俺はやっぱりな」
「戦うのか?」
「やっぱり」
「ああ、それも空で戦う」
 これが彼の考えだった。自分のベッドに座ってだ。そのうえで話すのだった。
「奴等の空でな」
「その空でか」
「戦うんだな」
「ああ、戦う」
 これが彼の言葉だった。
「何があってもな」
「そうするか」
「絶対になんだな」
「これからどうなるかわからない」
 やはり彼も軍の解体に動揺していた。そしてだった。
 それでもだった。彼は言うのだった。
「けれどそれでもな」
「戦う機会があればか」
「絶対にだな」
「なあ、俺達はな」
 ここでだ。彼はこう話すのだった。
「最初は蜻蛉だったな」
「蜻蛉か」
「ああ、そうだな」
「そういえばな」
 仲間達もだ。蜻蛉という言葉に応えた。日本軍の練習機は赤く塗装されていたのでそれでだ。赤蜻蛉と言われていたのである。
 
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