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僕の周りには変わり種が多い

作者:黒昼白夜
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九校戦編
  第15話 破壊と交代と下準備

モノリス・コードの2回戦。市街地フィールドでの開始直後に森崎たちが映っている画像で、落下物が大量に現れて、画像が消えてしまった。何かが森崎たちへ落下したというのはわかったが、その後のアナウンスでは、『しばらくお待ちください』とだけしか流れないのを見る。同じ列で観ていた深雪や雫と一緒に一高の天幕へ向かった。

一高の天幕ではっきりしたのは、『破城槌』の魔法が使用されたこと。そして、七草生徒会長たちが森崎たちの元へ、向かっていることだ。

詳細がわかるにつれて、雫の不機嫌そうな感じがつもっていくのを感じる。それがピークへと達したときに、達也がきた。深雪と一緒に雫が行った先では、「故意の過剰攻撃」と聞こえてきたのと、七草生徒会長もそちらへ向かっていった時に、そういえば雫は、九校戦か一高が、狙われている可能性について、知らなかったんだっけと思いだした。

ただし、このモノリス・コードに、バトル・ボードの渡辺風紀委員長と、バスに対する大型車が事故にみせかけてつっこまれてきたのを考え合わせると、狙われているのは一高という可能性が非常に高そうだ。

狙われる可能性というと、春のブランシュとかか。十師族なら、三高に一条家のプリンスがいるから、そっちも巻き込むほうが自然だろう。

あとはわからないというのが正直なところだ。

達也が七草生徒会長に連行されていったので、ここにいても仕方がない。とりあえずはモノリス・コードの観戦席にいるレオたちのところに行って、小声で「森崎たちは入院するが心配ない」とだけ伝えた。ここで、魔法治療を行なって、入院が3日間に全治2週間なんていうと、魔法治療のことを知っているだろう多くの魔法師にとって、とんでもない重症、あるいは重体ということを知らせることになる。そうすると、どんなことになることやら。

森崎たちが出られないということで、三高を中心にモノリス・コードを見ていくことにした。僕は気が進まないとはいっても、とりあえずは、まわりに気がつかせないということで、そのまま一緒についていった。

三高の試合を2試合みたが、プリンスは左腕にはめた汎用型CADで防御魔法を発動しっぱなしで、自陣からでて止まった。移動系魔法による風槌や、収束系魔法・偏倚解放『へんいかいほう』で爆風を起こして、相手を攻撃している。どちらにしろ、距離は約500mか。他の2人は動きすらしない。一方的な、砲撃魔法だなとしかいいようがない。多分、モノリス・コードは三高の1位だろう。そう思っていました。



ミラージ・バットで、ほのかと里美の、1位、2位で、1年生女子がお祭り騒ぎをしている最中に、ホテルのミーティング・ルームに呼び出された。七草生徒会長からの呼び出しだから、いかないわけにもいかないだろうと、ミーティング・ルームに向かったら、エリカ、レオ、そして美月までもがミーティング・ルームの前にいた。

「なんで、ここにいるんだ?」

「ミキが、呼ばれたから」

きわめて簡潔だが、それだけでこの3人が興味津々で、幹比古についてきたのだろうと、予想はできる。こっちも単純に呼び出されただけなので、理由は聞いていないということで、ミーティング・ルームに入ったら、そこからモノリス・コード出場の説得が始まった。幹比古に対するものを、説得と言えるのだったらだが。

僕のほうは、技術スタッフの達也が出場するのに、出場種目で1種目しかでていない競技選手として残っている中で、実技の成績がトップと言われてしまったら、断われる理由などない。っていうか、先に達也が出場することが決まっているのだから、この人選には達也が絡んでいるのは間違いなさそうだ。

モノリス・コードに出場することが決まったら、今後の段取りを説明するという名目で、達也の部屋に行くと、外でまっていたレオ達がついてくるのも、もはや必然といえよう。

「ミッキー、チョッとは落ち着いたら」

「僕の名前は幹比古だ」

ミッキーは初めて聞く愛称だが、これで落ち着いたのか、そわそわとして立っていた幹比古がベッドに座った。僕からは、

「なあ、達也。今日のミラージ・バットの結果で、新人戦総合3位は決定しているはずだが、七草生徒会長たちは、これを勝てと言ってるのか?」

「勝って優勝」

「はい? 優勝ってことは……まともにやったら、三高には勝てないぞ」

「あくまで希望で、三高には負けてもしかたが無いとのことだ」

「とは言っても負けてもいいつもりで出るのなら、他の試合でもゆるむ可能性があるぞ」

「だから、これから三高にも勝てる作戦をたてるのに、少し質問がしたい」

そこから、達也から各自への質問だ。僕にはどこまで術をだせるのかということで、師匠に電話をしたが出ないので、メールをした。その間に幹比古の

「吉田家の術式には無駄が多くて、そのせいで僕は魔法が思うように使えないって」

「ああ」

エリカは吉田家と近いだけあって驚きもひとしおだが、レオや美月も驚いている。円明流合気術の場合は、古式魔法にも合理性を求めていったから、術式を単純化していって、隠密性に関しては、マルチタスクで隠密させる魔法を行なうだけだから、マルチキャストを使えることが、古式魔法をCADで使う上には必須という風になっている。普通の古式魔法師との違いが、表れているところなんだろう。

他にも話はあったが、師匠からはその間にメールの返信があって、十師族の一条が相手なら、全部だして勝てって、本当に合気術の師匠なのかと思う返答があった。そこから、作戦を聞いていたレオは、達也のことを

「立派な『悪知恵』だな」

同感で、

「魔法師に巧妙な起動式を提供するエンジニアは詐欺師だと思うが、作戦内容も詐欺師ばりだな」

それを聞いていた達也は、苦笑していた。

達也にCADを1時間で仕上げるとは言われた時には、

「プシオン誘導型サイオン起動理論による起動式だぞ?」

「誘導式をはずせばいいだろう?」

「そうだが、時間がないからプシオンフィードバック機能は全てカットしてほしい」

「っということは、まさか系統外・精神干渉の魔法師か?」

「いや、プシオンの付属量が、常人よりかなり多いだけだよ」

これだけの会話で、納得してくれるのは助かる。CADを普通に使うと、フィードバック用のプシオン迂回路がつまるってことを、知っているんだろうな。低速化するのは仕方が無いとして、一時的な故障状態をさけるには、これしかない。

CADの調整には中条先輩が、達也のアシストに立候補したが、僕もあきれるほどの速さで行う調整は、中条先輩もみているしかなかった。次は幹比古のCADの調整だから、その間は邪魔にならないよう外に出ていた。



大会8日目で、新人戦最終日。
モノリス・コードで八高と対戦するために、森林ステージへと続く一高側のフィールドに出ていったら、スピード・シューティング決勝戦の時よりも観客が多い上に、異様な雰囲気を感じる。生死とは別な感覚だが、冷静さを保つために深呼吸をしたあとに

「やっぱり、注目を集めているのは、この剣……『小通連』なんだろうな」



昨日は、最初に達也に調整してもらい、その最中に操作マニュアルを仮想型端末で体感をして、試すのにはエリカのつてで軍の施設に行った。対戦相手として藁人形もあるが、合気術を使用しての剣の使い方としては、ちょっと違うので、森の中での立ち木への打ち込みをしてみたら、「なるほどねぇ」との返答がエリカからきた。レオは驚いていたが。



「達也の作戦の目玉のひとつだし、がんばってくれよ」

「操弾射撃大会準優勝の方法を応用するって発想が達也らしいというか……幹比古も競技選手外からの出場なんだから、とまどった視線が集まっているだろう?」

「それを言うなら、裏方にいた謎の天才エンジニア、司波達也ここにあらわるって視線が一番多そうだよ」

「フィールドに立つ選手が注目を集めるのは当たり前だ」

そんなことを話ながら、指定された位置までいくとモノリスが立っていた。



試合開始の合図とともに、達也は相手陣地にダッシュをし、幹比古は歩いていく。そんな中で僕は球状のエリア魔法を張った。

結果からみると幹比古が相手のオフェンスの1人を『木霊迷路』の古式魔法で、方向感覚を狂わせて道惑わして、僕がエリア魔法を半径35mから半径70mへ拡大させたところで、小通連の先端が飛ぶ魔法を使った突きを繰り出すが、ここにもうひとしかけがあって、それは気。小通連の先端に気を集めていたので、オフェンスにぶつかった拍子にその気が『裏気当』の要領でそのまま相手の背面に衝撃を与えた。

昨夜、藁人形だけでなく、立ち木で練習をしたのはこのためだ。気をもっていない藁人形ではわからず、気をもっている立ち木でないと、効果がわからない。
達也は相手ディフェンダーが倒れている間に、モノリスに書かれている512文字のコードを専用端末へ打ち込んで終わった。そういうところだが、他から観るならば、

「今の試合、どう思う?」

「将輝が聞きたいのは試合の総括じゃなくて、『彼』のことだね」

「そうだ。彼が作ったと思われるあの武装一体型CADを使った、もう一人の彼のこともね」

「陸名翔のことも?」

「初日のスピード・シューティングで2位になった時には、あんなに悔しがっていたじゃないか。観ていなかったとは言わさないぞ」

「陸名翔の方は、あの剣が操弾射撃のように先端だけ飛ばさせて、相手にぶつけるというのなら、あの形状である必要はないよ。もっと違う使い方ができるのは明白だ。そして、あの飛ばしたあとに戻す魔法に何かあるから、サイオン検知を防ぐ魔法エリアを作ったんだ。表面だけを見て、彼のできる魔法を下手にしぼりこまない方が良いと思う」

「ジョージは、術式解散『グラム・ディスパージョン』のことを悔しがっていたからな」

「あれは競技の性質上、特化型CADだから使える魔法を限定させて、初めてできることなんだ。そうは言っても、限定した状況を作られるからには、それの対抗手段は、九校戦の後にするとして、操弾射撃大会の時にやはりエリア魔法というには小規模なんだけど、操弾射撃用CADのレールの先端から、収束系魔法で的と触れた瞬間をフィードバックさせる方法をとっていたらしい」

「ほー、そういうことは、エリア魔法が彼の本質だと思っているのかい?」

「いや、魔法を絞り込むのは、彼に関しては危険だと思う。今のところは、もう少し情報を集めたい」

「そうか。ところで司波達也は?」

戦闘技術の警戒で、術式解体『グラム・デモリッション』に驚いたが、魔法の威力そのものは高くない。

どちらにしろ、もう少し戦い方をみて、各ステージ毎の戦術をねるべきかもしれないというところで落ち着いた。

そういう見方をしている対戦相手チームもあるということだった。
 
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