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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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StrikerS編
  86話:銃を持つ者の覚悟

 
前書き
 
 わ~い、なんか最近更新が速いぞぉ~。嬉しいな~。

 そんな訳で八十六話、どうぞ~。
  

 
 





「ふっ、はぁあっ!」


 魔力強化をした足で一気に踏み込み、ガジェットを肉薄する。その後すぐに後ろ回し蹴りを別のガジェットに当て、蹴り飛ばす。
 飛んでいったガジェットは他のガジェットを巻き込み爆発。次にライドブッカーをガンモードへ切り替え、ガジェットに標準を合わせる。


〈 Dimension bullet 〉


 ライドブッカーに魔力を供給、すぐに引き金を絞る。放たれた数発の魔力弾はガジェットへと向かうが、ガジェットの数体は易々と躱す。


「ちっ…動き良すぎだろ、アレ」
〈マスターももう少し腕を上げてください。後ろに部下がいるんですから〉
「お前はもう少し俺を労われよ」


 このデバイス、最近言葉が辛辣なんだよな。……出番が少ないからか?


〈マスター、来ますよ〉
「お、おぅ…」


 ちょっと声色が怖かったな、こいつ。もしかして気づいた? こいつ、まさか高町家の読心術を…!?
 ガジェットから放たれる熱光線をバックステップで避け、再び銃口を向ける。


「これならどうだ?」
〈 Dimension spread 〉


 打ち出された魔力弾は、ガジェット群の手前で破裂して数発の魔力弾に変わった。
 元々当たると判断していなかったのか、動かなかったガジェットは分裂した魔力弾に反応できずに魔力弾を食らい、爆発する。


〈お見事〉
「そう言う褒め言葉毎回を言ってほしいな」
〈そんな事言ってないで切り替え早く〉
「酷い……」


 この相棒は、まぁ酷い。ここまで酷いとは。

 さらに放たれる熱光線を避けつつ、背後で戦う四人を見る。
 クロスミラージュと共に魔力弾で対応するティアナ。しかしAMFに防がれてしまい、彼女は苦い顔をした。
 他の三人も奮闘しつつも、有人操作に切り替わった事によるやりずらさがあるようだ。


『士! 聞こえるか!?』
「っ、ヴィータか?」
『こっちは大分減らせられた! シグナムとザフィーラに任せて、私はそっちに向かう!』


 あらら、なんか勝手に通信繋いできて勝手に宣言して勝手に通信切ったな、あいつ。あんなに心配性な奴だったか?

 にしても、どうにも釈然としない。そう思ってならない。
 敵側にはガジェットを転送できる召喚士がいる。なのに召喚は俺達の正面、つまりはホテルの正面にしか転送されない。
 本気で何かが欲しいなら、もっと多方面から攻撃することだってできる筈だ。なのにそれが行われない。

 何かあるのか、それともやはり―――


〈―――マスター!〉
「っ!」


 トリスに叫ばれふと気づくと、周囲を数体のガジェットに囲まれていた。
 何をしてくるかと思い剣を構えると、すぐに違和感に気づいた。

 魔力結合が上手くできないのだ。


(これは、AMFか…!)
〈マスター! 六時の方向から別の攻撃が!〉
「なっ!?」


 トリスの報告に慌てて顔だけ後ろに向けると、別パーツが付けられたⅢ型からミサイルが飛んできそうだった。
 しかも周囲のガジェットも熱光線を発射しようとしている。そりゃマズいだろ!?


「ちぃ、やるしかないか…!」


 そう呟くと、ライドブッカーからカードを取り出し、トリスへと挿入する。


〈 KAMEN RIDE―――〉
























 魔力弾を打っても、AMFで防がれる。しかも普通のガジェットにまた新しいパーツが付いてたり、有人操作に切り替わっていてやり難くてしょうがない。


『防衛ライン、もう少し持ちこたえててね。ヴィータ副隊長が向かってきてくれてるから!』
「っ! 待ってるだけじゃ行き詰まります! ちゃんと全機落とします!」
『ちょ、ティアナ、大丈夫!? 無理しないで!』
「大丈夫です!」


 毎日朝晩、練習してきてんですから!


「エリオ、センターに下がって! 私とスバルのツートップでいく!」
「は、はい…!」
「スバル、クロスシフトA、行くわよ!」
「おう!」


 スバルはティアナの指示を聞くと、ウイングロードを伸ばしガジェットの頭上を通過してガジェットの意識を引く。
 その隙に私はカートリッジを片方のクロスミラージュにつき二発、計四発カートリッジをロードする。


 証明するんだ……
 特別な才能や凄い魔力がなくたって、一流の隊長達の部隊でだって、どんな危険な戦いだって……


「私は…『ランスター』の弾丸は、ちゃんと敵を撃ち抜けるんだって…!」


 そう呟きながらティアナは周囲に魔力弾を作る。ティアナの得意な魔法―――クロスファイアだ。
 スバルがガジェットの攻撃から避けたり防いでたりする間に、ティアナは準備を進める。四発ロードの影響か、腕に痛みを感じる。


『ティアナ、四発ロードなんて無茶だよ! それじゃあティアナもクロスミラージュも…!』
「打てます!」
〈 Yes 〉


 大丈夫…私なら、全部撃ち抜ける!


「クロスファイア―――シューーーット!」


 周囲に作った魔力弾を撃ち出し、スバルに気取られていたガジェットに次々に当てていく。


「あああぁぁぁぁーーー!」


 用意した魔力弾だけじゃなく、さらに引き金を絞って新しい魔力弾を撃ち出す。

 だけど、一発だけ。
 撃ち出した魔力弾の中の一発を、一体のガジェットがギリギリで回避した。


 その魔力弾の向かう先に―――ウイングロードの上を走る、スバルの姿が。


「あっ―――」
「なっ―――」


 気づいた時には、もう遅かった。

 撃ち出した魔力弾が多すぎて、制御が上手くできなくて、今更コースの変更なんてできない。
 スバルも気づくのが遅く、すぐに回避行動に移ることができない。

 これは、もう―――











 ガァァンッ!

「「―――っ!?」」


 当たる、そう思った瞬間にそれは起こった。
 スバルに向かって真っすぐ進んでいた魔力弾の前に、『何か』が遮った。その『何か』と魔力弾が当たって、魔力弾が弾け飛んだ。
 魔力弾を弾いた『何か』は、空中で回転しながら落下し、突き刺さった。

 それはいつかの訓練で見た、士の武器だった。


(それじゃあ、士さんは…!?)


 ティアナはそう思って先程まで士が戦っていた場所へ、視線を向けた。


 そこには複数のガジェットに囲まれた、あの人の姿が。だがそれは生身ではなく、ティアナ達に一度だけ見せた『ディケイド』の姿だった。

 士は目の前のⅠ型ガジェットをその拳で粉砕、さらに後ろから攻撃しようとしていたⅠ型の胴体の末端に回し蹴りを当て、バランスを崩させて攻撃を外させる。
 そこへダンスのように背中を地面に向けた状態で両手を地面について、そこから横向きになったガジェットに踵落としを噛まし粉砕。爆発の勢いを利用して倒立して、そのまま地面に足を付ける。

 その背後にいたⅢ型のミサイルが飛んでくるのを、バック転で避けてさらにⅢ型に近づく。近づく士にⅢ型はアームを伸ばし、士に突き出す。
 それをふり返りながら腕で弾き、Ⅲ型の胴体に手を当て、掌底を放つ。掌底を食らったⅢ型は勢いよく吹き飛んでいき、他のガジェットも巻き込んで爆発した。


「―――……」


「っ……」


 しかしその時の士を―――ディケイドを見たティアナは、一瞬その姿に怖いものを感じた。


「―――士!」
「……ヴィータか…」


 その時丁度戻ってきたヴィータが士に声をかけた。士はその声に静かに返事を返した。
 いつもと違う様子が気になったのか、ヴィータは眉を寄せた。しかしその様子も知ってか知らずか、士はガンモードのライドブッカーを向けガジェットを打ち続けながら、ヴィータのところまで下がった。


「ヴィータ、悪いがここを任せていいか?」
「はぁ? 任せるって、お前はどうすんだよ?」
「…ちょっとした野暮用だ」


 それを聞いたヴィータはさらに眉間のしわを深くし、士の目を―――つまりはディケイドの複眼をじっと見つめた。
 ほんの数秒、お互いの目を合わせる二人。しかしそれも束の間、先にヴィータの方が目を逸らした。


「わかった。任せろ」
「…男らしいな」
「私は女だ」
「はいはい…」


 士はそう言うとヴィータの肩を叩いて、そのまま下がっていった。
 ヴィータはその姿を見届けると、スバルとエリオ、キャロに通信を繋いだ。


「スバル、エリオ、キャロ。すぐにこっちに来い」
『『『は、はい!』』』


 ガジェットが迫る中、ヴィータはティアナ以外のフォワードを集める。移動速度の高いスバルが最初にヴィータの下に辿り着いた。


「スバル」
「は、はい…!」
「正直に言うと、私は今怒ってる。あんな無茶な事して、危うくお前に当たりそうになったんだからな」
「い、いえ! あれはその、作戦なんです!」
「バカ言ってんじゃない、ドアホ! あれが本当に作戦なら、さらに怒ってるとこだ!」


 ヴィータの怒声に驚いたスバルは、「はいぃ!」と声を上げてしまう。
 しかしヴィータはその後「だが…」と続けた。


「今回は士に免じて、私からは説教はなしだ。後からきっちり絞られることだ」
「え!? じゃあ士さんは、もしかして……」
「多分、な…」
























「―――ティアナ」
「っ……!」


 前線をヴィータに任せ後ろへ下がった士は、変身を解いてからティアナの前に立った。
 ティアナは先程のミスショットが効いたのか、地面にへたり込んでいた。


「回りくどいのは嫌いだから、はっきり言うぞ。俺は今怒っている」
「……はい…」
「別にあそこの場面でクロスファイアを使うな、とは言わない。だが自分で制御できない程の魔力弾を作ったのは、いただけないな」


 士はそう言って地面に座るティアナと目線が合うように、片膝をつく。


「わ、私は……私はただ…!」
「俺は他の奴らと比べたら…まぁスバルを除いてだが、ほんの少しだけお前の事を知ってる。お前がそうまでして戦う理由も、強さを求める訳も」


 だがな……


「だからと言って、仲間を撃っていい理由にはならない」
「―――っ!」
「『銃を撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ』…ある人の受け合いだが、心の隅に置いてある言葉の一つだ。お前も銃を扱う者なら、心の隅にでも留めておけ」


 そう言うと、士の腰に付けられたトリスが〈マスター〉と声をかけた。
 士はそれを聞いた途端、チッと舌打ちを打った。


「たく、こんな時に……ティアナ、他にも色々言いたい事があるが、今は時間がない。これだけは言っておくぞ。―――お前のポジション、CG(センターガード)の場所について、もう少し考えてみろ」


 士はそれだけ言った後、ティアナの頭に手をポンッと置いて、ホテルの方に走って行った。


「……私は……私は……!」


 士が去った後、ティアナは地についた手で拳を作り、涙を流した。
























 ホテル・アグスタの地下駐車場。数人の警備員がいる中、その一角で奇妙な音がしていた。
 警備員の一人がその音に気づき、音が聞こえてくる方向へ振り返る。


「誰かいるんですか? ここは危険ですよ」


 警備員はそう言うとライトを向けて、その場所を照らした。
 しかしそこには何故か後ろのドアが開けられたトラックだけがあり、人影はどこにも―――


「だぁらっしゃぁぁいッ!」
「わぁああ!?」


 その時突如人影が大声を上げながら足を突き出した状態で空中を舞った。
 警備員は驚きで声を上げてしまったが、それとは別に重い音が駐車場に響いた。そしてほんの数瞬後、コンクリートの壁に蜘蛛の巣状のくぼみができた。


「あ、あなたは…!?」
「機動六課だ。ちょいと敵が潜入した、他の警備員と一緒に非難してくれ」
「え? あ、はい!」


 士の言葉に警備員は慌てつつも返事を返し、走り去っていった。
 それを見届けた後、士は正面のへこんだコンクリートの壁を見やる。パラパラと破片が落ちる中、ゆっくりと空間が揺らぎ、そこに人間サイズの無骨な格好の『何か』が立っていた。


「よう、カッコいい泥棒さん。そこに抱えてるもん、置いてってくれねぇかな?」
「…………」
「…ちぇ、だんまりかよ。なら仕方ねぇ」


 そう言うと士はベルトのサイドハンドルを引き、バックルを回転させカードを差し込む。


〈 KAMEN RIDE―――〉
「変身」
〈 DECADE 〉


 そしていつも通りサイドハンドルを戻しバックルを元の向きに戻し普通の姿から、ディケイドへと変身する。


「抵抗するなら―――容赦はしないぞ、泥棒さん」
「っ―――」
























「―――っ、ガリュー?」


 ホテル・アグスタから数キロ離れた場所。そこには六課のロングアーチが観測した紫髪の召喚士―――ルーテシア・アルビーノと、その彼女と行動を共にする大柄なフードの男―――ゼスト・グランガイツがいた。
 ルーテシアはスカリエッティの『お願い』で、オークション会場にある密輸品の回収をするために行動した。陽動としてガジェットを使い、隙を見て自らの召喚獣―――ガリューを送り回収する、予定だった。

 しかしガリューを回収に行かせた後、無事取ったと報告があった後すぐに声が聞こえなくなったのだ。


「……どうした、ルーテシア」
「ガリューに何かあったみたい…」


 ルーテシアがそう言うと、少しの間沈黙を続ける。
 だが時間が経つ内にルーテシアの顔色がみるみるうちに変わっていく。


「―――ガリューが、誰かにやられてる」
「何…?」
「『骨董品』を取り返しにきたみたいなんだけど、ガリューが手も足も出ないって…」


 その言葉にゼストも驚きの表情を露わにする。ガリューの実力を知っているからこそ、並の魔導士に押される事などあり得ないと考えていたからだ。


「どうしよう…このままじゃガリューが…!」
「……仕方ない、ガリューを引かせよう」
「でもそれじゃあドクターの『お願い』が…」
「達成が困難になってしまったのだから、仕方なかろう。ガリューを失う訳にもいかないだろう。奴も言えばわかってくれるだろう」
「…わかった」


 ルーテシアはそう呟くと、手に付けているアスクレピオスに一言二言呟いた後、足元に展開していた魔法陣を消した。


「大丈夫だったか?」
「うん。相手も『骨董品』を意識してたみたいで派手な事はしてこなかったみたい、大きな怪我はないって」
「…戦いもそろそろ終わる、お前の探し物に戻るとしよう」


 ゼストの言葉に、ルーテシアは静かに小さく頷いた。それを見たゼストは、彼女を連れホテル・アグスタから離れていった。





  
 

 
後書き
 
 さぁ! 取りあえずセンター入試に向けてしゅっぱ~つ!
  
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