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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第13話:偶には休暇も必要だ

(グランバニア城・国王執務室)
ウルフSIDE

闘技大会で使用するスタジアムの建設も始まり、俺の忙しさも軌道に乗ってきた。
慣れたのか、はたまた俺が天才過ぎるのか、余裕が出てきて充実してる。
でも、彼女サービスをそろそろしないと、鬱憤が溜まってきてる美女二人だろう。

そんな状態を知ってか知らぬか、リュカさんが俺を応接室に呼びつける。
わざわざ応接室ということは、お客さんが来てるのだろう。
仕事を押し付けるだけなら、俺の執務室へ押しかけるはずだからね。

(コンコン)「失礼します」
誰が居るのか判らないから、礼節だけは遵守してノックとことわりを入れて入室。
「いきなり呼び出して済まんな」
長ソファーが2列配置され、向かって右奥にはリュカさんが足を組んで座っており、対面する側には2人の中年男性が大人しく座っている。

身形は貴族や金持ち風の男達で、リュカさんを前に脅えてる素振りはない。
大抵の貴族はリュカさんに呼び出されると脅えて縮こまってるのだが、この二人は落ち着いた雰囲気を醸し出しながら、入ってきた俺に視線を向けお辞儀する。

「紹介するね。コイツが僕の秘書官、ウルフだ。ウルフ、コイツ等は“ウォンダー・トラベル社”の社長ライゼと副社長のヴァンデルングだ。どっちが社長で、どっちが副社長か忘れたけど」
忘れるなよ……重要だぞ、それ。

俺が呆れてリュカさんを見てると、奥に座ってた紳士が立ち上がり、「私が社長のヴァンデルングです」と自己紹介。
そしてもう一人も同じように、「私は副社長のライゼです」と続いた。

逆じゃん!
社長さんと副社長さんの名前が、逆だったじゃん!
きっとワザとなんだろうけど、本当に失礼な男だよね。

因みに『ウォンダー・トラベル社』は、今造ってるスタジアム建設のスポンサーで、多額の建設費を提供してくれた企業だ。
しかも世界中に広告を出してくれる予定で、自社も闘技大会見学ツアーを催すつもりらしい。

ルドマンさんとの繋がりも深く、同社の所有する客船は全て、グランバニアで発明された蒸気機関を使用している。
その為、ライバル社より圧倒的に差を付け、業界ナンバー1を維持している企業だ。
リュカさんに頭は上がらないが、良い関係を築いてる企業である。

「まぁ座れよウルフ」
そう言うと自分の隣を指し打ち合わせが出来る状態を作ろうとするリュカさん……
面倒事が待ってそうで嫌なんですけどぉ~……

とは言え、上司で師匠で義父(予定)の言葉に逆らう訳にもいかず、お客にお辞儀をしながら着席する。
既に目の前のテーブルには俺の分のコーヒーがあり、俺の参加が決定していたことを物語る。
仕事の所為で俺は遅れてきたので、コーヒーが半分冷めてるから嫌になる。

「それで陛下……私にご用件とは、一体なんでしょうか?」
努めて冷静に、そして客人の前なので礼儀正しく尋ねる。
主君と家臣が“なぁなぁ”な関係だと思われては支障があるのだ。

「うん。おい……アレは持ってきたんだろうな?」
俺の問いかけに笑顔で頷き、客人に視線を向けて何かを出させるリュカさん。
一体何が飛び出てくることやら……

「これを……」
ライゼ副社長が懐から白い封筒を1通取り出し俺に差し出してきた。
何の事だか解らないがリュカさんに視線を向けて問いかける。

「受け取って中を見てみろ」
しかしリュカさんは説明をすることなく、何時もの爽やかな笑顔のまま得体の知れない封筒を受け取る様に指示をする。

どうしよう……
封筒の中には“お前ウォンダー・トラベル社の社員を兼業しろ。そして同社を発展させろ”とか書いた辞令が入ってたら!
やっと今手掛けてる仕事が波に乗ってきたのに、これ以上仕事を増やされても地獄なんですけど!

俺は恐る恐る封筒を開け中に入ってる紙を取り出し目を通す。
そして俺の目に入ってきた文字は……
『豪華客船ルクスリエース・バンデ号乗船券』と『アイリング海クルーズツアー』と書かれたチケットが3枚ずつ入っていた。

「……何これ?」
全然意味が解らん。
ルクスリエース・バンデ号とは、ウォンダー・トラベル社が世界に誇る最新式豪華客船で、アイリング海とは、新国家アリアハンを中心とする海域のことを示唆する。

旅行好きが見たら唸り声を上げそうなチケットが3組……
俺に渡してどうしろと言うのだろうか?
何かの調査か? それとも嫌がらせか? 忙しい俺にバカンスのチケットを見せて『僕、その旅行に行ってくるから、後のことはよろしく~』とか言うつもりなのか!?

「そのチケット高いんだよ。結構僕バイト頑張ったんだから」
日雇い労働者プーサンが新たに建設を始めたスタジアム工事の請負会社の人員募集に、夜勤労働者として参加してるのは知ってたが、これを買う為にだったのか? 俺に見せびらかす為にだったのか!?

「あの……説明をお願いしたいのですが!」
一応説明は聞こう……
でも、ふざけたことをぬかしやがったら殴る。客人の前だろうが、俺の実力じゃ当たらなかろうが殴る!

「うん。ウルフは何時も頑張ってるから、パパからのプレゼントだよ。彼女等を連れて楽しんできなさい。丁度来月のチケットだから、仕事を一段落させて休暇を取りなさい」
……え、プレゼント? え、休暇!?

俺はリュカさんの言葉を聞き、用意してた拳から力が抜けた。
そして慌ててもう一度チケットに視線を落とす。
3枚ずつ……つまり3人分。俺とマリーとリューノ……丁度3人だ!

「あ……ありがとうございますリュカさん!!」
顔を上げリュカさんに慌ててお礼を言う。
「お前、今僕の事を殴ろうとしてたろ」
バレバレの俺の行動を笑いながら指摘するリュカさんは最高に格好いい!

現金な奴だと言われても構わない。
娘には色々プレゼントするリュカさんが、息子に……しかも義理の息子に、こんな高価なプレゼントをするなんて予想外だったのだ!

「流石、陛下がお側に置く人材ですな……彼女が2人も居られるとは(笑)」
俺が嬉しくてチケットを凝視してると、社長さんが笑いながらからかってきた。
王族でもない者が二股なんて問題なのだろう……やっぱり。

「本当だよね。彼女が2人も居るなんて背徳の極みだよね(笑)」
「お前が言うな! 俺はたった2人じゃねーか! お前は何人居るんだよ!?」
嬉しさからなのか、リュカさんの突飛なボケからなのか、思わず何時もの口調でツッコんでしまった。

「僕は妻が1人だけですよぉ!」
「いけしゃあしゃあと……愛人が世界中に居るだろが! 異世界にも過去にまでも居るだろが!」
俺のツッコミを受け、目の前のスケコマシは「イェ~イ」と両手でサムズアップシ戯けてみせる。

それを見た客人2人は大笑い。
どうやら話の分かる方々の様だ。
まぁ、そうでないとリュカさんと交渉は出来ないだろうからね。

「まぁいいや。そんな事より、僕からの用事は以上だからチケットの事を彼女等に報告してこいよ。お前以外には言ってないから、聞いたら2人とも喜ぶぞ」
言われて我に返り、また嬉しさが溢れ出す!

即座に立ち上がり出て行こうとしたが、慌てて振り返り「あ、失礼します!」とお客に頭を下げて節度を守る。手遅れっぽいけど……
お二人は「構いませんよ」と優しく仰ってくれた。商売人だけど、リュカさんが優しく接してる理由が解るよ。

その日の仕事はあったのだが、すっかり忘れてマリーとリューノに報告しちゃいました。
そしてそのままベッドイン♥
久しぶりに(すげ)ーハッスルして、翌朝出仕……

溜まりまくった仕事を前に、吐き気を催してきた俺。
ユニさんからは“仕事サボって女と乱交してたのかキサマは!?”ってオーラが出まくってました。
“お前の敬愛するリュカさんも、同じ事をやってんだよ!”って言いたかったけど、仕事が忙しすぎて言う暇がありませんでした。

バカンスまであと1ヶ月……
絶対に仕事を片付けてやる!

ウルフSIDE END



 
 

 
後書き
リュカさん流「アメとムチ」
これでウルフは限界を超えて仕事を頑張る。
そしてリュカさんは、その分楽をする。 
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