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遊戯王デュエルモンスターズ ~風神竜の輝き~

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第2章 風神竜と謎の男
  第7話 フレスヴェルク・ドラゴンの謎

遊雅が翔竜高校に入学してから、1週間が過ぎた。
学校生活にも慣れ始め、初日の秋弥とのデュエルで出来た友人たちとも徐々に友好を深めている最中だ。
デュエル部の方も日夜デュエル三昧で、楠田や上級生2人の指導の元、主にプレイングについてを教え込まれている。
そのお陰で、遊雅はようやくリバースカードへの警戒心と言う物を身につけ始めた。
そんな、遊雅にとって実に有意義な日々が、少しずつ動き出そうとしていた。

「よう、南雲、神原」
「おう、おはよう」
「うん、おはよう」

いつも通りに遊雅と亜璃沙が一緒に登校すると、同じクラスの男子生徒が後ろから声をかけて来る。
2人もそれに返事をして、3人で教室へ向かう。

「そう言えばよ、夏のHDC、お前ら出んのか?」

HDCとは、ハイスクールズ・デュエル・クラシックの略称。
日本全国の高等学校デュエル部の精鋭達が一堂に集い、雌雄を決する大舞台だ。
無論それは、多くの中高生デュエリスト達の憧れのステージでもある。

「ああ、出場するはずだぜ。出場人数は5人だから、ウチの部はギリギリ出れるしな」
「へぇ、まじか。神原も出んのか?」
「まぁ、私も勘定に入れないと出場できないから。本当はそんなにデュエルには自信ないんだけど」
「よく言うぜ。入部試験で楠田先生にオーバーキルかましてたくせに」
「あ、あれは、ああしないと攻撃を防がれてたから……!」
「ふーん、なるほどな。ところでよ、南雲」

突如、男子生徒は不穏な事を言い始める。

「お前の持ってる《フレスヴェルク・ドラゴン》だけどさ、あれ、大会で使っても大丈夫なのか?」
「えっ?どう言う意味だよ?」
「いやな、俺、あんなカード見た事ないからさ、色んなカードカタログ読み漁ったんだがよ、どこにもあのカード載ってなかったんだよ」
「お前が見落としたか、単に載ってないカタログばっか読んでたんじゃないのか?」
「うーん、そうかな。けど、色んなメーカーの奴読んだんだぜ?それ全部に載ってないとは思えないんだよなぁ……」
「気になるわね……放課後、楠田先生にでも聞いてみる?」
「そうだな……そうするか」

口では肯定した物の、遊雅としてはそんな事は信じられなかった。
仮に《フレスヴェルク・ドラゴン》が正規のカードじゃないとしたら、デュエル・ディスクにセットした時点でエラーが出るはずだ。
遊雅はそのように考えていた。
当然遊雅は、その日1日授業に集中する事は出来なかった。

◇◆◇◆◇◆◇

放課後、遊雅と亜璃沙、そして秋弥は、部活の為にデュエル部の部室へ向かった。
グラウンドの隅に設けられた1区画だけのデュエルスペース。その脇に申し訳程度に建てられているプレハブが、デュエル部の部室だ。
準備運動を開始している運動部の様子を尻目に、3人は部室へ辿り着く。
部室では、既に楠田が待っていた。

「やぁ、3人とも揃っているな」
「楠田先生、今日は早いですね」
「ああ。仕事がいつもより早く終わってな。先に来て準備をしておこうと思ったんだ」
「そうなんですか。ありがとうございます」
「それで、先生。実は俺、先生にちょっと聞きたい事があるんです」
「ん?何だ、改まって」

遊雅は、朝、クラスメートから聞いた話を、楠田にそのまま話して聞かせた。

「……なるほど。確かにそれは少し不安だな」
「はい。大会に出れないかもってのもそうですし、何より、フレスヴェルクと一緒に戦えないと思うと、ちょっと……」
「ふむ……分かった。俺の方でも、何とか調べておこう。知り合いにカードに詳しい奴がいるんだ。そいつに見せてみるから、《フレスヴェルク・ドラゴン》を預かってもいいかな?」
「分かりました。ただ、今日の部活の間は使いたいんで、後ででもいいですか?」
「分かった。そう言う事なら、今日の部活が終わった後で預かっておこう」
「はい、お願いします」

丁度、竜兵と海堂が部室を訪れた為、そこでひとまずこの話は終了する事となった。
そして、部活が開始する。

「今日の活動内容だが、シンクロ召喚を組み込んだ模擬デュエルをやってみようと思う」

楠田の宣言に、一同はそれぞれに声を漏らした。

「シンクロ召喚か……」
「俺らはまだやった事ないッスよね、先輩」
「ああ、だが、幸いにも天藤がシンクロ召喚を得意としている。教えてもらう事も可能だろう」
「ええっ!?僕がですか!?」
「一気に昇進したな、秋弥」
「頑張って、秋弥。私たちにもちゃんと教えてね」

遊雅と亜璃沙の反応を見て、四面楚歌と判断した秋弥は、大人しくシンクロ召喚の講師を買って出る決意をした。
そして早速、秋弥によるシンクロ召喚の解説が始まる。

「えーっと……シンクロ召喚をする為にはまず、召喚したいシンクロモンスターのレベルと、要求されている素材を確認する必要があります」

そこまで説明してから、秋弥は自分のデッキから《ジュラック・ヴェルヒプト》を取り出した。

「例えば、僕の《ジュラック・ヴェルヒプト》のレベルは5。そして、要求されている素材はチューナーモンスターと、チューナー以外の恐竜族モンスターが1体以上です」

ここまでの説明に、講義を受けている4人全員が理解を示す。
それを確認してから、秋弥は新たに2枚のカードを取り出して講義を再開した。

「この場合、レベルの合計が5になるように、素材として要求されているモンスター達を、フィールド上から墓地に送る事で、《ジュラック・ヴェルヒプト》をシンクロ召喚できます。こんな風に」

秋弥が取り出した2枚のカードは、遊雅とのデュエルでも《ジュラック・ヴェルヒプト》のシンクロ素材となった《俊足(しゅんそく)のギラザウルス》と《ジュラック・ガリム》だった。

「この2枚のカードのレベルの合計は5です。そして、《ジュラック・ガリム》はチューナー、《俊足(しゅんそく)のギラザウルス》は、チューナーではない恐竜族のモンスターです。この2体がフィールド上に揃った時に2体を墓地に送る事で、《ジュラック・ヴェルヒプト》をシンクロ召喚できます」
「シンクロ素材は、何もその2体に限った話ではないんだよな?」

竜兵が秋弥に質問をする。
それに対して秋弥は、新たに2枚のカードを取り出して応答した。

「はい。レベル5にさえなればいいので、こう言う組み合わせでも大丈夫です」

秋弥が取り出したのは、《ジュラック・アウロ》と《ジュラック・グアイバ》だ。

《ジュラック・アウロ》
☆ 炎属性
ATK/200 DEF/200
【恐竜族・チューナー】
このカードをリリースして発動できる。
自分の墓地から《ジュラック・アウロ》以外のレベル4以下の『ジュラック』と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。

「《ジュラック・アウロ》はレベル1のチューナー、《ジュラック・グアイバ》はレベル4の、チューナーじゃない恐竜族モンスターです。この2体を墓地に送る事でも、ヴェルヒプトのシンクロ召喚はできます」
「よし、ここで俺から問題だ。このカードをシンクロ召喚するためのシンクロ素材を、君達のデッキから出してみてくれ」

楠田が4人に見せたのは《氷結界(ひょうけっかい)(りゅう) グングニール》だった。

氷結界(ひょうけっかい)(りゅう) グングニール》
☆☆☆☆☆☆☆ 水属性
ATK/2500 DEF/1700
【ドラゴン族・シンクロ/効果】
チューナー+チューナー以外の水属性モンスター1体以上
1ターンに1度、手札を2枚まで墓地へ捨て、捨てた数だけ相手フィールド上のカードを選択して発動できる。
選択したカードを破壊する。

「レベル7で……チューナーと水属性か」
「先輩はチューナー持ってないッスよね?お前ら、チューナー持ってるか?水属性は俺が提供するが」
「あっ、私が」

海堂の問い掛けにすぐに反応したのは亜璃沙だった。
すぐに亜璃沙がデッキから取り出したのは、《(いの)りのエルフ》。
レベル3のチューナーモンスターだ。

「3か。なら、俺はこいつを出すぜ」

海堂が取り出したのは《深海王(しんかいおう)デビルシャーク》。レベル4だ。

「監督、この2体でOKですよね?」
「ああ、その通りだ。それと1つだけ注意しておくが、チューナー以外のモンスターは何も1体じゃないといけないというわけではない。この場合なら、レベル3のチューナーと、レベル2の水属性を2体でもシンクロ召喚が可能だ」
「なるほど……大体わかりました」
「よし、それじゃあ俺から、君達のデッキに合ってると思われるシンクロモンスターとチューナーをプレゼントだ!」
「本当ッスか!?いやぁ、入部試験の時といい、監督太っ腹ッスね!」
「ああ、懐が寒いよ」

今にも泣き出しそうな顔で、楠田が4人にシンクロモンスターとチューナーモンスターを配って行く。
遊雅が受け取ったのは、《旋風(せんぷう)のボルテクス》と《こけコッコ》だった。

旋風(せんぷう)のボルテクス》
☆☆☆☆☆ 風属性
ATK/2100 DEF/700
【鳥獣族・シンクロ/効果】
チューナー+チューナー以外の鳥獣族モンスター1体以上
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキからレベル4以下の鳥獣族モンスター1体を特殊召喚する事ができる。

《こけコッコ》
☆☆☆☆☆ 風属性
ATK/1600 DEF/2000
【鳥獣族・チューナー】
お互いのフィールドにモンスターが存在しない場合、このカードはレベル3モンスターとして手札から特殊召喚できる。
相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにカードが存在しない場合、このカードはレベル4モンスターとして手札から特殊召喚できる。
表側表示のこのカードはフィールドから離れた場合に除外される。

「あれ、先生、俺もうチューナー持ってますけど」
「おぉ、そうだったか。まぁ、せっかく調達したのにもったいないだろう。受け取っておけ」
「ありがとうございます!」

確かに、効果をよく読んでみるとフィールド上に出しやすそうなモンスターだった。
遊雅が持つ唯一のチューナーモンスター《霞の谷(ミスト・バレー)戦士(せんし)》は、このカードと違って特殊召喚効果を有していないので、こちらの方がシンクロ素材にはしやすいだろう。

「よし、それでは今配ったカードをデッキに入れて、模擬戦を開始するぞ!」

シンクロ召喚の基礎を学んだ4人のデュエリスト達は、その腕を磨くために模擬戦に精を出し始めた。

◇◆◇◆◇◆◇

「それじゃあ、お願いします」
「ああ、任せておけ。それじゃあな」
「はい、さようなら」

楠田に《フレスヴェルク・ドラゴン》を預けた遊雅は、亜璃沙と秋弥と共に学校を後にした。

「遊雅、よかったの?《フレスヴェルク・ドラゴン》は遊雅の相棒なんでしょ?」
「本音言うときついよ。俺のデッキの主力モンスターだからな。だからさ、ちょっと今からカードショップに行って、シンクロモンスター買って来ようと思うんだ」
「えぇっ、今から?」
「ああ。母さんにはもう連絡してある。亜璃沙は帰ってもいいぞ。あんまり夜遅くまで付き合わせるわけには行かないからな」
「もう……秋弥1人じゃ心配だし、私も着いて行くわよ。遊雅は何しでかすか分からないから」
「何だよ、もうガキじゃねーんだから、そんな面倒なんか起こさないっての」
「まぁまぁ、喧嘩しないで。ほら、行くなら早く済ませちゃおう!」
「そうだな。よし、行こうぜ!」
「あっ、ちょ、ちょっと待って!」

その後、亜璃沙が両親に連絡を入れるのを待ってから、3人は街へ繰り出した。
時刻は20時。街にはまだ、遊雅達と同年代と見える人影が多く見られた。
何しろ、遊雅達同様、制服姿で街を歩いているのだから、すぐに分かってしまう。

「なぁ秋弥、どっかオススメのカードショップってないか?」
「あるよ。たくさんカードが置いてあって、僕もいっつもお世話になってるんだ。今から案内するよ」
「よかったわね、遊雅」

2人は秋弥の案内に従って、とある1軒のカードショップを訪れた。
雑居ビルの2階、フロアを全て占領して構えられた店内には、カードが飾られたショーウィンドウが所狭しと並べられていた。

「うぉー、すっげぇ!」
「すごーい……これ全部、デュエル・モンスターズなの……?」
「うん!ここならほぼ、見つからないカードはないよ!」

秋弥が豪語するだけあり、店内には多くの人が集まっていた。
遊雅と亜璃沙もショーウィンドウの中を覗いてみる。多くのカードが、カテゴリ毎に分けられてショーウィンドウに飾られていた。

「エルフのカードはどこにあるかな……」
「エルフなら、確か向こうの方にあったよ!あっ、あと遊雅は、シンクロモンスターだったよね?それなら、向こうのショーウィンドウだよ!」
「おう、ありがとよ、秋弥」

秋弥は一時、亜璃沙をエルフのショーウィンドウに案内する為、遊雅と離れた。
遊雅は1人でシンクロモンスターのショーウィンドウの元へ赴き、物色を開始した。

「へぇ~、効果を持っていないシンクロモンスターもいるんだな……おっ、こいつ、俺のデッキで使えそうかも」

遊雅が見つけたのは《風纏(かぜまと)騎士(きし) デルフォイア》だった。

風纏(かぜまと)騎士(きし) デルフォイア》
☆☆☆☆☆☆☆ 風属性
ATK/2600 DEF/2000
【戦士族・シンクロ/効果】
風属性チューナー+チューナー以外の風属性モンスター1体以上
このカードが表側表示で存在する限り、相手は自分フィールド上に存在する他の風属性モンスターを攻撃対象、またはカードの効果の対象に選択できない。
このカードが相手モンスターを戦闘によって破壊し墓地に送った場合、そのモンスターのレベル以下のレベルを持つ風属性モンスター1体を手札か墓地から特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚されたモンスターは、このターン攻撃宣言できない。

「こいつはいいな。風属性主体の俺のデッキにもマッチしてるし、レベル7だから出しやすそうだ」
「やっ、遊雅。いいモンスターは見つかった?」

丁度、何枚かのカードを手に持った亜璃沙と共に、秋弥が遊雅の元へやって来た。

「ああ。いいカードを見つけたぜ。こいつがいれば、フレスヴェルクがいなくてもある程度戦えそうだ」
「よかったわね、私の方もいいカードが何枚か見つかったわ」
「亜璃沙もシンクロモンスター買ってみたらどうだ?」
「私はいいわ。楠田先生から頂いたモンスターが十分強そうだったし」
「そっか。秋弥は?」
「あー、実を言うとね、ジュラックのシンクロモンスターって3体しかいないんだけど、僕はもう3体とも持ってるんだよね」
「へー、そうなのか。残りの2体も見てみたいな」
「明日あたり、またデュエルする?見せてあげるよ!」

その後、近くを通りかかった店員に頼んでショーウィンドウを開け、目的のカードを取り出してもらった。
デュエル談義に華を咲かせながら、3人は店員に連れられ、会計を済ませるべくレジへ向かう。
風纏(かぜまと)騎士(きし) デルフォイア》は強力なカード故、中々に値が張ったが、カードの為に貯金を欠かさなかった遊雅にとっては、さして苦にならない出費であった。
亜璃沙も5枚のエルフのカードを購入し、楠田からもらったカードも含めて、2人のデッキは十分に強化されたと言えるだろう。

「いやー、いい買い物したな。これで《フレスヴェルク・ドラゴン》が戻って来れば、向かう所敵なしだぜ!」
「あんまり調子に乗ってると、足元すくわれるわよ?」
「へいへい。わかりましたよっと」

3人が店を出ようとした時、後ろから、誰かに声をかけられた。

「やぁ、天藤君」
「あっ、店長さん。どうも!」
「うん、いつもありがとう。お友達かい?」
「はい!高校で初めて出来た友達なんです!」
「おぉ、そうか。天藤君はいつもウチの店を贔屓にしてくれてね。よかったら、君達も是非、ウチのお得意さんになってくれないかな?お安くしとくよ」
「はい!ここ、すげぇ色んなカード置いてあって気に入りました!」
「私も、是非今後はここを利用させてもらいたいと思います!」
「そうかそうか、ありがたい。今後もよろしく頼むよ。あぁ、それと天藤君。近い内に恐竜族のサポートカードが新たに入荷する予定だから、よかったら見に来るといい」
「本当ですか!?わかりました!ありがとうございます!」
「それじゃあ、失礼します」
「ああ、またおいでね」

気のいい店長に見送られて、3人は店を出た。
時刻はそろそろ21時を迎えようとしている。街を歩く人々も住宅街の方へ流れ始めていた。
3人もその流れに乗って、それぞれの家の方へ向かって歩く。

「それじゃ、また明日ね!」
「おう、また明日な!」
「じゃあね、秋弥!」

秋弥と別れた遊雅と亜璃沙は、2人で帰路に着く。

「問題ないといいわね。《フレスヴェルク・ドラゴン》」
「ああ、今はそう祈る事しかできないけど、信じてるぜ、俺は」
「そうね。小さい頃から一緒だったもんね、あのカードとは」
「そう言う事だ」

それから暫く歩いて、亜璃沙の家に到着する。
別れの挨拶を交わしてから、遊雅は再び自宅への道のりの消化を開始した。
そこで――

「ようやく見つけたぞ」

――背後から、そのように声をかけられた。
慌てて遊雅は後ろを振り返る。
そこに立っていたのは、黒いローブを纏ったいかにも怪しい人物だった。
顔はフードで隠れていて見えない。

「……誰だよ」
「ふん、やはり記憶はないか。ならば好都合だ。大人しく風神竜のカードをこちらに渡せ」
「何だと……?」

声にも、背格好にも、全く覚えがなかった。
そんな自分と無関係のように思える人物が、《フレスヴェルク・ドラゴン》の事を知っている。
遊雅は、この人物があのカードについての鍵を握っていると推測した。

「お前……《フレスヴェルク・ドラゴン》の事を何か知っているのか?」
「貴様が知る必要はない。さぁ、こちらによこせ」
「そいつは無理な相談だ。あのカードは今、俺の手元にはないからな」
「ふん、(たわ)けが。ならば力尽くだ」

男は、左手でローブを翻した。
そして遊雅は、露わになった男の左腕を見て、困惑する。
男が左腕に装着していたのは、デュエル・ディスク。いや、その様な形をしている岩盤だった。
しかし、刻まれている紋様に一瞬光が走ると同時に、それは機械で操作しているかのように勝手に動き出し、あっという間に遊雅のデュエル・ディスクのように、カードをセット出来る形態に変形してしまったのだ。

「……デュエルしろってのか」
「デュエル、か。ああ、そうだ。受けてもらうぞ」
「ちっ……やるしかねーか……!」

遊雅も左腕を構え、デュエル・ディスクにデッキをセットする。
変形が終了し、ライフカウンターに4000と表示された所で――

「「デュエル!!」」

――遊雅とローブの男は、戦いの火蓋を切った。 
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