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チップは恋

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第二章


第二章

「俺としては今のところこれといって賭けるものもないしな」
「それじゃあこれで決まりね。じゃあ」
「ああ、やるか」
 こうして賭けがはじまった。二人は席に着いて居合わせたクラスメイトからそれぞれ五枚のカードを受け取った。まずは廉の番であった。
「何枚かしら」
「二枚だ」
 彼は麻里に答えた。
「それじゃあな」
「ええ、どうぞ」
 こうしてカードの交換になる。廉はその言葉通り二枚のカードを交換した。今度は麻里の番で彼女は一枚であった。交換したカードを受け取っても表情は変えない。
 そのまま暫くカードを交換し合った。三回程であった。その最後の交換が終わったところで麻里が言ってきた。
「ストップ」
「これでいいのか」
「ええ。これでね」
「わかった。俺もそれでいい」
 廉も頷いた。これで決まりだった。
 二人はそれぞれカードを出す。麻里はフォーカード、廉はフルハウスだった。廉の勝ちだった。
「俺の勝ちだな」
「そうね」
 麻里はにこやかに廉の言葉に頷くのだった。賭けをしているのにどういうわけか負けても平気な顔だ。しかも彼女は負けず嫌いだというのに。これが廉には引っ掛かった。
「じゃあいいな」
 話を賭けに移してきた。
「それで。御前は何を考えているんだ?」
「それを知りたいのね」
「ああ。そもそも」
 彼は言う。腕も足を組んで麻里を見据えながら。
「どうして急にポーカーをしようなんて言うんだ」
「それはね。言いたいことがあるからよ」
「言いたいこと?」
「最初は私が勝ってから言うつもりだったんだけれどね」
 こう廉に述べる。
「けれど勝っても負けてもになったから別によかったわ」
「よかった」
 廉はそれを聞いてもやはり今一つわからなかった。
「何なんだよ、そもそも御前」
「言うわ」
 麻里はまた廉に言ってきた。
「私はね。あんたに言いたいことがあるのよ」
「俺にか。何なんだ?」
「付き合ってもらえるかしら」
 こう言うのだった。
「私とね。いいかしら」
「!?それって」
 廉は話を聞いて怪訝な顔になった。どうも話が掴めない。
「あれか!?つまり」
「そうよ、あれよ」
 麻里の顔が少し赤くなった。それまでのポーカーフェイスのままだが顔の色だけが少しだけ変わったのだった。そこに表情が見えた。
「告白なのよ。わかるわね」
「御前、そうだったのか」
 廉の目が動いた。しばたかせている。
「俺に告白する為にこうして」
「そうだったのよ。わかったわよね」
「ああ」
 彼女の言葉に頷く。
「そういうことだったのか。それでここに」
「返事はどうなの?」
 麻里は単刀直入に問うてきた。
「それを聞きたいのだけれど」
「俺も今はフリーだけれどな」
 相手がいないのだ。それは正直に言う。
「じゃあいいわね」
「断ることは許さないだろ」
「今周り見ればわかるわ」
 クラスのど真ん中だ。当然ながらクラスメイトも大勢いる。これで断るというのもそうそうできはしない。つまりこれも麻里の計算だったのだ。
 
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