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ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~

作者:村雲恭夜
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アリシゼーション編
  ビギニング:銃と拳と翡翠の剣

「ああ……もうこんな時期か……」
リンドウの創った翡翠の剣<ジェイド・ウインド>を道場に立て掛けながら、俺はカレンダーを見て言う。
西暦二〇二六年某日。
ダークが居なくなってから実に三、四ヶ月が経過しようとしていた所だった。
「ライトー、休憩しなよ♪」
と、扉を開けて入ってきたのは、ダークが消えた事に実体化したロード/白井竜太とゲン/横村拳だった。
「ロード、珍しいな。此方に来るなんて」
「いや、ほら……最近、ライトが元気無さそうだったからさ。これ、持ってきたんだ」
出したのは、お茶と、俺の好きなかんぴょう巻き。お茶とかんぴょう巻きってどんなだよ。
「まぁ、有り難く受け取るけどさ、その……身体は平気か?」
俺は受け取りながら二人に聞く。
「まだ、安定してるとは言いがたいよ。ゲンはともかくとしても、僕は随分とライトの身体で行動してたからね」
時々消えかけるよ、とロードは言う。
「別に不便とかそう言うのは洩らさないよ。身体があるって事はライトに迷惑掛からないって事だし」
「んなことねぇって。最近は楽しいなって思えてきてるんだから。もう少し位は……俺の中に居てくれよ」
「ライト……全く」
すると、ロードが俺に触れ、その瞬間、俺の中に入った。
『あー、やっぱりこの方が落ち着くー♪』
「ロード、あまり迷惑を掛けるな……それと、ライト。詩乃殿からメールが届いていたぞ」
ゲンが俺のスマホを差し出すと、俺はそれを受け取り、メールを開いた。

































久々の雷狼号で向かった先はダイシーカフェ。ここで、シノンと待ち合わせていた。
「よーっす」
がららん、とドアを開けると、キリト、アスナ、ミヤビにシノンと、まさにキリトがハーレム状態だった。
「……」
「待て待て待て!!」
キリトがすぐに退却して行く俺の服を引っ張った。
「偶然だ、来人さんがどう思ってるか知らないけど偶然だ!!」
「へー、ほー、ふーん」
俺はカウンターに行くと、エギルに言う。
「ジンジャー、無ければブラック」
「その二択か」
エギルはそう言うも、ジンジャーを出してくる。
「んで?わざわざお呼び立てされた訳だけれど?」
「ええ、あなた、アスナ達と一緒にBoB見てたわよね?」
「まぁな……、その後、ユウキが煩くて教官役をやらされたよ……で?」
「サトライザー……あいつ、二回目なのよ、優勝するの」
「ああ、確か一回目のBoBにも出てたって話だったな」
ダークの事を思いながら言う。
「ベテランプレイヤーのパターンとか、セオリーとか、それに当てはまらない<無理・無茶・無謀>な奴って言ったら、翔夜さん以外にミヤビとキリトと来人さんしか居ないから、こうしてお呼び立てしたって訳」
「なーる程な。どうよ、ロード」
『僕的に賛成だよ!』
ロードが言う。まぁ、銃撃と格闘戦に関しては、この世界に置いてかなりの腕前と言っても過言ではない。元々の身体である俺の肉体と、ロードの技術。そもそも手がつけられない。
「アッサリね……コンバートの方は?」
「ALOで使ってるアバターは新規のケットシーだよ。コンバートした方がSAOクリア時の方。別に問題はねぇぜ?」
途端、がららん、と扉が開いた。
「うわぁ!本当にあったよ!ゲンさん、ありがとう!」
うっ、その陽気な声は……。
俺は後ろを見ると、ゲンとユウキが居た。
「おい、拳!!何でユウキと一緒に居るんだ!!」
「いや、ご飯を食べにいきたいとユウキが誘ったんだ。まさかここにつくとは……」
はぁ……と俺は溜め息をつくと、ロードが。
『わーい!一杯だー!!』
「……呑気で良いな、お前」



















暫くBoBの事を聞いてから、キリトの話を聞き、それから全員がお開きとなった。
「あー、美味しかった!!」
「ユウキ、お前は食い過ぎ」
俺はユウキと拳と共に帰路へ歩いていた。そもそも、コイツらは電車だ。
「ほら、駅に着いたぞ。寄り道すんなよ!!」
「解ってるよ!!」
ユウキは拳の手を引いて、駅に走って行った。
俺はそれを見届けると、雷狼号を自動走行に切り替えて、歩いて帰ることにした。
『いやぁ……本当に興味深い話だったね!って……来人?』
「キリトに情報が漏れていた……?いや、多少は計算の内だとは菊岡も言っていたが……」
『ライト?』
俺はロードの声でハッとした。
「え、何だ?」
『興味深い話だったねって言ったの、キリトの話!!』
「あ、ああ……そうだったな」
ロードの返答に答え、俺は暫く無言で傘を指して、雨の中を歩いていた。
『ねぇ、来人。学校を辞めたらどうするの?』
突然、ロードから意外な質問が来た。
「アメリカ……かなぁ。サンタクララの大学が研究してる、<ブレイン・インプラント・チップ>が次世代のフルダイブ技術の正常進化形だと思う。次いでにそこの教授として呼ばれてるからな。見てみてぇんだ……次の世界の始まりを」
『そっか……ミーちゃんには?』
「言ってないよ。まだ、あいつには。あいつには進むべき道が在るだろうし、巻き込む訳には行かねぇ」
『そんな!!……多分だけど、来人。言わないと絶対後悔するよ!!』
「どうしてだ?」
『上手く言えないけど……こう……兎に角言わないと駄目だよ!!ミーちゃんだって解ってくれるよ!!』
「……そういうお前だからこそ、人格としての俺が出来たんだな」
『……へ?』
「何でもねぇよ。帰るぞ」
俺は走って行こうとすると、男が現れた。
「すいません、駅は何処でしょうか?」
若い男は言うが、その瞬間、後ろに跳躍した。殺気が、あった。
「誰だ」
「……ちっ、やっぱり無理か」
バサッ、とコートを剥ぎ、俺に言う。
「久しぶり、かぁ?」
「お前は……っ!」
俺の前に現れたのは、かつてダークと共に牢獄送りにしたプレイヤー、<デス>……碕夜恐史郎(さきやきょうしろう)だった。
「へっへ、テメェに牢獄送りにされた恨み……今日こそ晴らせて貰うぜぇ!!」
咄嗟に背にある剣を掴もうとし……無いことに気が付く。
「ばぁあああああか!!剣なんてあるわきゃねぇだろぉおおおおがぁああああっ!!」
水鉄砲らしき物を持ち、俺に接近してくる。
「まずっ……!」
咄嗟に下がろうとするも、雨で滑り、下がれなかった。
「しぃいいいいねぇええええええええっ!!」
『ライトォオオオオオオオオ!!』
碕夜とロードの声が重なり、
プシュッ。
俺の肩に注射器が打たれ、中にある液体が流れ込まれた。
「ひゃっははははははぁ!?」
『貴様ぁああああああっ!!』
ロードが未だ動ける右腕を動かし、一発ノックアウトさせた。
途端、身体は地面に倒れる。
「サクシ……ニル……コリン……か……へっ、ざまぁ……ねぇ……」
『ライト!!ライト!!』
ロードが言うのを最後に、視界に黒い翼が見えて、意識を無くした。 
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