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黄龍の転生者と四神の乙女達

作者:龍牙
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魔法先生ネギま 編
  一話

四季side

「四季」

「大丈夫だから、安心して……詩乃」

 次元航行艦の一室、オレの部屋で震えているのは、我が恋人にしてパートナー、故郷と言えるあの世界で青龍の《宿星》を持つ少女『朝田詩乃』。
 二度目の前世では出会えなかった彼女との出会いは中学一年の頃に誘拐されそうになった彼女を助けた事に始まる。少なくとも裕福な家庭では無いことから金銭目当ての犯行では無いことは明らかで有り、その当初は理由が分からなかった。だが、それを切っ掛けにオレと詩乃は友人関係になり、学校は違うが良く会うようになった。

 彼女を誘拐しようとした犯人達のことを調べている内に世界各国で起こっている《特殊能力者狩り》の事に辿り着いた。
 特殊な能力や才能を持っていると目された者達や潜在的な才能を持っているらしい子供達の誘拐事件。詩乃もまたオレと同じ青龍の宿星によって与えられた力の為に狙われたらしい。
 彼女の力は気弾と風の力。気を銃弾として撃ち出すことの出来る能力のサポートとして風を使っている青龍のスナイパーだが、気の扱いに熟れてからは風や気弾を使わずに視力を強化する事で命中精度を高めた弓術を使っている。

 まあ、彼女の弓も某骨董品店で手に入れた品なので品質も折り紙付きだ。

 あの後も何度か詩乃は能力者狩りに狙われ、その都度近くに居るオレが助けていた。だが、常に近くに居られる訳も無く、助けることには成功したが能力者狩りに誘拐されてしまった。

 相手のアジトが国内に有った事から数日で調べることは出来たが、その感にどんな風に彼女が扱われたかは、彼女以外知る者は既に亡い為に惨状から推測するしか無い。

 何故一度も使ったことの無い力の事を知っていたかは謎だが、無理矢理力を使わされた事だけは確かだ。その過程で何が有ったかは想像できないが、その過程で彼女は己の力に恐怖するようになり、《青龍》の宿星が与えてくれた力を使うことが出来なくなった訳だ。
 彼女を戦わせると言うのは心苦しいが、自衛の為に新しい戦い方を会得する必要性が出てくる。その為に選んだ武器が弓で、新たな戦闘スタイルは弓術……魔人と呼ばれた少年少女達の世界に於ける《桜井小蒔》と言う少女のバトルスタイルだ。



 SIDE OUT



「落ち着いた?」

「うん」

 震えていた彼女を落ち着くまで抱きしめていると、落ち着いたのか何時もの雰囲気を取り戻した彼女から離れる。思い浮かべるのは四季と詩乃の二人がこうして次元航行艦を使っての旅に出た理由となった事件。

(誘拐事件、能力者……いや、正しくは《魔人候補》の確保か)

 敢えて《力》を持った者達、持つだけの資質を持つ者達を原点と言える世界の彼らに敬意を払って『魔人』と呼び、力に覚醒していないものの資質を持った者達の事を『魔人候補』と呼んでいる。

 魔人の持つ龍脈によって与えられた力は非常に強力なものとなる。夢の中の世界で命を奪う事で死に至らせる暗殺者に、烏を自由に操り兵士と出来る力、比較的初期に倒された者達でさえ危険極まりない。
 ……まあ、彼らがRPGなどで言う所の戦士では無く魔法使いタイプ、後衛向けの能力と言う点も大きいだろう。両者とも能力としては敵と対峙したらアウト、そう言って良いだろう。

 さて、一度此処で彼らが使っている次元航行艦と言う代物について簡単に説明しておこう。便宜上四季はそれを事を『次元航行艦』と呼んでいるが、四季と彼の許可を得た者達しか使えない複数の平行世界間に有る一種のステーションに近いだろう。
 空中から確認する術がない為に全貌は確認できていないが、修行場である旧校舎の付属した学校型の建物(真神学園)、同様に旧校舎よりもレベルの高い修行場が有る小規模な神社型の建物(龍泉寺)の二箇所が併設している。
 有る程度機械化されているが、龍泉寺の存在以外は魔人伝奇の舞台の町並みを有る程度再現されている小規模な街と言って良いだろう。
 なお、何故か有名な妖刀や賞味期限が不明な食品にナース服まで販売している骨董品店は存在して居ないが、携帯アプリ『KISARAGI』から注文するとその日の内に、十分以内に武器だろうが食料品だろうが届けてくれる。

 そして、“ラーメン屋”も有る。……自販機感覚で出来たてのラーメンが買える為に味気ないが、ラーメンも売っている。

 なお、詩乃の……正しくは能力者の誘拐事件の影響本来の世界に戻れない四季と詩乃はこのステーションの龍泉寺を自宅として使っている。はっきり言って、家族仲の悪い四季としてはどうでも良いが、詩乃の場合は家族にも危険が及ぶ可能性もある。
 このステーションが空間だけでなく、時間軸にも影響しているお蔭でこのステーションにいる限り歳はとらず、有る程度ならば未来の時間軸にも旅立った時間にも戻れるのだから便利なものである。

 青龍、白虎、玄武、朱雀の四神の宿星を持つ者達と出会い仲間になる事、四季が本来の力を発揮する為の欠片(ピース)では有るが、詩乃と言う少女は四季にとってそんな物ではない。
 二度目の人生では家族にさえ裏切られた為に何処か三度目の人生では家族から距離を置いていた為、家族仲はお世辞にも良いと言える物ではなかった。学校のクラスメイト達も同様だ。
 『どうせ結局は裏切る相手』、そう考えて完全に斬り捨てていた。旅の一度目の人生での姓を名乗るのにも、家族間の溝ゆえだ。
 そんな中で出会ったのが詩乃だ。仲間も家族にさえも裏切られる未来を知っているが故に孤立していた時に、自分と同じ人を超えた魔人というべき力を持つ仲間として、救ってくれた相手。心から幸言う事が出来る、好きだと。

 彼女自身に意図は無いだろうが、何時からか彼女……朝田詩乃と言う少女は四季にとってかけがえの無い存在になって行った。

 だからこそ、彼女が此処まで心に傷を負う原因となった連中の事は許せなかった。自分ひとりならば、ステーションに引き篭もるなり、他の平行世界に逃げるなりすれば良い。寧ろ元の世界での高校進学にでも合わせて平行世界に逃げればよかった。詩乃がいなかったら間然に世界毎斬り捨てていたかもしれない。

「大丈夫、オレが守るからさ」

 詩乃と言う少女とともに生きて行くこと、それは黄龍の器としての宿星を得た四季の誓いだった。



 
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