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ソードアート・オンライン-ゲーム嫌いの少女冒険譚-

作者:蓮木
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アインクラッド編
  観戦そして対決



あの後、キリトやアスナたちと分かれてゼノと共に過ごした。話した内容はと言えば、それは大したこともないようなものばかりで。でも、そのようなことを話せるような相手も環境もなかなか作れなかったからありがたい時間で貴重であったのは間違いない。近くの酒場で乾杯しつつ、何気ない話で盛り上がった。




「ふーん……〈神聖剣〉ヒースクリフと〈二刀流〉キリトの決闘(デュエル)ねぇ…」


キリトが〈二刀流〉と呼ばれるスキルを持っているとSAO全世界?に広まったこの情報は、SAO中での話題となった。最強とも名高いヒースクリフとの決闘とは、私も見てみたいものだ。

「ほんでこの戦いなんやけどな。どうにもあのヒースクリフはんから観戦のお誘いが来とるんや。何でかは知らんけど。」


そして、この話題を提供してきたのはゼノ。たまたまKoB本拠地のある方へ用事があったから知れたとのことらしい。この勝負を観戦しに来る人が多いが、何故かヒースクリフが直々に私を指名したらしい。まぁ、ゼノやヒースクリフからの話がなくても、私のメッセージ欄には、キリトやアスナから連絡が来ていた。『ヒースクリフとデュエルをすることになった』と。キリトもアスナもいるみたいだし、一応は顔を出す方が良いだろう。ヒースクリフからこんなのが来るとは、思ってはいなかったがある程度予想はついている。

「まぁ……十中八九私にKoBに入れと言いたいんだろうね。多分お誘い程度で済むのだろうけど。」


以前からもKoBへの誘いのようなギルドからの誘いは相次いでいた。まぁ、集団で集まった方が効率も良いし、何よりも連帯感と安心感がある。その所は、私たちソロプレイヤーとは全然違う。その点で集まる人も多く、同じ目標を掲げるからか、やはり競い合い高めるのは成長の糧になるのだろう。私は、そこまで〈ギルド〉と呼ばれる団体自体に執着心がないから、入っても入らなくても良いぐらいの感覚に近い。そして、現状ソロプレイで支障が出るかと言えばそうとは思えないため、入ってないというだけなのだが。

「で、どうするん? 何か向こうの方で席を取ってるみたいやし。近くで見られるのは絶好のチャンスなんやないか?」


「それもそうね、目の前で珍しいものが見られるのだから。私も見てみたいし。」


「ほな、そしたら行こか。どうやら特等席らしいし、はよう行かないと他の客で中々席に入れないかも知れへんからな。」


こうして私とゼノは〈神聖剣〉vs〈二刀流〉の決闘を見に行くため、75層〈コリニア〉にあるコロシアムへと向かった。


「やっぱり……ユニークスキル同士のデュエルだからか人が仰山おるなぁ。」


「そりゃあそうでしょ。そのプレイヤーにしかないスキルが目の前で見られるなんて、物珍しいもの。」


恐らくKoBがこの試合を取り仕切っているのだろう。いくつかの場所ではチケット販売が行われている。私たちは入り口付近にいるKoB団員に話をつけると、事前に用意されていたのであろう席へと案内された。開始まではまだ余裕がある。このまま席で待っていようかと思ったが、「少々お待ちください。」との係員の指示があると、このデュエルの対戦者であるヒースクリフが私たちの元にやってきた。

「君が来てくれて歓迎するよ、レイミー君。君なら、この戦いを間近で見たいと思っていただろうからね。」


このように会話を切り出してくるヒースクリフ。彼と話をするのは悪くないが、どうにも何か別のことを裏で策謀しているような感じで気味が悪い。

「それで……どうなの? 彼に勝つ自信の程は。」


「勿論簡単に負けるつもりは全くない。だけどもキリト君はとても強いからね。無論、こちらも初めから手加減なしに全力で行かせて貰うだけさ。この決闘(デュエル)がどうなるのかは、今の私には言えないのだけれどね。」


私はヒースクリフの自信の方を聞いてみた。それを聞いて、ヒースクリフは負けないようにはするとのこと。しかし、対戦相手であるキリトの実力も十二分に理解しながらも戦うとのこと。そして、彼の強さに敬意を払い、自らの持てる全ての技術で応じるまでだと。理想的な回答だ。私も〈神聖剣ヒースクリフ〉の実力は知っている。SAO世界最強を決めるのであれば必ず入るに違いない。

「それと君にはやはり血盟騎士団に入って貰いたいが……そうか、もう時間か。ならこの話は後で聞かせてもらおうかな。」

そうして、ヒースクリフがようやく本題を切り出していこうかと思っていたら間もなく時間だから準備と移動してくださいとのこと。こちらも、その手の話題を続けなくて良かったとひと段落している。

「さて……〈神聖剣〉vs〈二刀流〉だがこの勝負どう予想する?」


「少なくとも、ヒースクリフの防御を崩せないとキリト君の勝利はない。かと言って我武者羅にやれば良いかと言われたらそうでもないからね。案外、一瞬の出来事で終わるんじゃないかな。」

こうして、私の勝手な勝負予想をしつつ〈神聖剣〉ヒースクリフvs〈二刀流〉キリトのデュエルが始まった。




「そう言えばゼノ、前にプレイヤーのステータス振りには幾つか特徴があるとか言っていたよね?」


「ステータスの配分パターンのことか? まぁ、確かにそれにはパターンは幾つかあるな。それが、どないしたんや?」


デュエルが始まってから、私はゼノに質問をぶつけていた。ステータスにはパターンがあると前に聞いていた。だが、私はそこまで気にしたことがなかった。ある程度はゼノが講義してくれたから分かってはいるが、ゲームの根底的要素についてはあまり語らなかった。ヒースクリフとキリト、お互いのプレイヤーが対照的だったからかゼノが解説を始めた。

「そうやなぁ……丁度いい比較対象がいるから説明しやすいな。パラメーターによって、出来ていくことが変化するのは分かるよな?」


「ええ、それが武器を持つときにも影響されるのは分かるわ。筋力値の違いで持てる武器とかも色々変わるんだよね?」


キリトの二刀流の剣技、ヒースクリフの盾が受け、返しの剣で攻撃を加えようとするとキリトの剣がそれを捌く。この芸術のような、やり取りに、魅了されて盛り上がる人たちは多い。

「まぁ、そうやな。持ちたい武器によって必要な筋力値はさまざまやけど、基本的には、片手持ちより両手持ち、短剣よりもメイスなんかの方が要求筋力値は高いと言えるやろうな。」


「それでや、あの二人のパラメーター振りは恐らく対になる構成やろうな。ヒースクリフは盾の使用を前提としたディフェンシブな構成。対する、キリトは防御を度外視したアタッカー構成。ちなみにレミーみたいなのは『極振り』っちゅうな。」


ゼノがパラメーター構成に対しての解説を加えつつ、私たちは観戦する。だが、ここで不可解なことが起こった。キリトによるヒースクリフへの最後の一撃が決まる直前、まるでこの世界を『どこか別の場所から動かしているかのように』決まると思われていた一撃を防御し、
ソードスキルの硬直で動けないキリトに攻撃が決まった。それが、このデュエルの勝敗を決め、正に私の勝手に予想していたあっけない感じで終わるということが、起こった。


「なんかあれにはカラクリがありそうやなぁ……」


こんな呟きがゼノから漏れていた。デュエルが終わった後、何やらヒースクリフが此方側に向かって何か話すようだ。


「――君たちが、私たちのデュエルを見に来てくれて光栄に思う。」


湧き上がる歓声。

「この度のデュエルはこれで終了だが、私個人としては彼の戦いをもう少し見てもらいたいと思う。」


それを聞いて更に盛り上がる観衆。

「その人物は、今あの席に座っている。」


そうしてヒースクリフは……こちらを指差した。ああ、こういうことか。ただで終わるとは思ってなかったがまさかこういうことになるとは思ってもいなかった。何となく、ゼノが誘ってきたあたりで何か裏はあるとは思っていたがそれがやっと分かった。だが、これは私にとっても丁度良い条件だ。私のやりたかった〈二刀流〉を間近で見ることが出来る。ここは、向こうの話に乗るとすることにした。

「さて、こんな感じになってしまったけど。君は問題ないかい? キリト君。」


「そんなに、見せたいって物でもないけれど……俺はあいつ、レミーとは一度デュエルしてみたかったからな。それに、こんなに盛り上がっていてそうやすやすと引き下がるわけにもいかないしな。」

それにキリトも応じる様子。私は、ゼノを置いてコロシアムの中央に降り立つと、デュエルを申請。それを了承したキリト。刻一刻と迫ってくる時間に何の武器で戦うかを悩んでいる。前の時と同じように、カタナで戦ってもいいが、手数が出し辛く戦いにくい予感がしてきた。私は今持っている武器、カタナをストレージに戻すと、二つの短剣――いや、小太刀を二本取り出した。丁寧に鞘から取り出し、私はこういった。

「〈二刀流〉には『二刀流』で。さてキリト、貴方の剣技(わざ)を見せてもらいましょうか!」


その時、会場は驚きとどよめきに包まれた。間もなく、戦いが始まる。 
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