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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)

作者:azuraiiru
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第一話 動乱の始まり

~ベルセルク:北欧神話・伝承に登場する異能の戦士達。軍神オーディンの祝福を受けた戦士達。戦いに際しては鬼神の如く戦うが、戦いが終わると暫くの間茫然自失となる。ベルセルク達は自身の中に熊や狼の様な野獣が乗り移ったと考え、その状態で戦っている時には敵味方の区別さえも付かなくなった。英語では“Berserk”だけで「怒り狂う」と言う意味の動詞扱いにもなり、日本語ではしばしば“狂戦士”と訳される。~



帝国暦 487年 10月 20日  オーディン  ブラウンシュバイク公爵邸  アントン・フェルナー



ブラウンシュバイク公爵邸の廊下を居間を目指して急いだ。とんでもない事が起きた。全く先が見えなくなった、これからどうなるのか、話し合わなければならない。居間には捜していた男達が居た。
「如何した、フェルナー」
ブラウンシュバイク公が上機嫌に俺に声をかけてきた。皆でお茶の時間を楽しんでいたらしい。

「ブラウンシュバイク公、陛下が、フリードリヒ四世陛下がお亡くなりになられました」
“なんだと”、“馬鹿な”、“本当か”等の言葉を発しながら男達が立ち上がった。ブラウンシュバイク公、クレメンツ中将、ファーレンハイト中将、リューネブルク中将、アンスバッハ少将、シュトライト少将の六人。そして一人だけ椅子に座ってカップを口に運んでいる男が居た。エーリッヒ・ヴァレンシュタイン大将、多分飲んでいるのはココアの筈だ。

エーリッヒに近付いた。
「卿は驚いていないんだな」
「いや驚いているよ。先手を打たれたようだ」
「先手?」
どういう事だ? 皆の顔を見た、皆も訝しげな表情をしている。そんな俺達を見てエーリッヒが低い笑い声を上げた。

「グリューネワルト伯爵夫人だ、彼女が陛下を手にかけた」
「!」
皆が息を呑んだ。僅かに間をおいてからファーレンハイト中将が“馬鹿な”と吐いた。エーリッヒがまた笑い声を上げた。
「他には考えられません。タイミングが良すぎます。これでリヒテンラーデ侯は掌を返しますよ、ローエングラム伯は排除出来ない」

皆がエーリッヒに視線を向けた。見下ろされる形になったがエーリッヒは気にする事も無くココアを飲んでいる。表情は嫌になるほど冷静だ。
「どういう事だ?」
ブラウンシュバイク公が低い声で問い掛けるとエーリッヒはチラッと公を見た。そしてカップをテーブルに置いた。

「反乱軍は大敗北を喫した。その軍事的脅威は当分考えなくて良い。もうローエングラム伯の軍才は帝国には必要ない、むしろこれ以上彼に力を与えるのは危険だ、だから今回の戦いで飢餓地獄に落とされた辺境星域住民の不満を利用してローエングラム伯を排除する。それが政府、貴族の考えでした」
「読まれたというのか?」
クレメンツ中将の問い掛けにエーリッヒが頷いた。

「ローエングラム伯か、或いは参謀長のオーベルシュタイン大佐か。最初から陛下を殺害するつもりだったかもしれませんね。ローエングラム伯は十分に力を付けた。……陛下が亡くなられた以上次の皇帝を決めなければなりません。ブラウンシュバイク公爵家とリッテンハイム侯爵家は競合する立場になる、協力は出来ない」
「……」

「そしてリヒテンラーデ侯、彼は外戚に権力を渡す事を恐れている。危険だと考えているし自らの保身も有る。彼は間違いなくローエングラム伯と組んで我々を抑えエルヴィン・ヨーゼフ殿下を皇帝にしようとする。或いはローエングラム伯がそういうふうに誘導する……」
呻き声が起きた。

「陛下の御遺体を改めよう。自然死でないと分かれば……」
「グリューネワルト伯爵夫人に疑いが向く、伯爵夫人が犯人と分かればローエングラム伯もその地位には居られない」
アンスバッハ、シュトライト少将が提案した。皆が頷く中、エーリッヒが“無駄ですよ”と言った。

「私が言ったのは推測でしかありません。証拠が有れば良いですが無ければブラウンシュバイク公爵家が窮地に陥ります。それに……」
「それに?」
俺が問い掛けるとエーリッヒは微かに笑みを浮かべた、冷たい笑みだ、冷笑だろう。

「真相など暴いてもリヒテンラーデ侯にとっては何の意味も無い。私がリヒテンラーデ侯なら調べた上で何もなかったと発表する。そしていずれローエングラム伯を排除する時に使う。それはブラウンシュバイク、リッテンハイム両家をローエングラム伯を使って潰した後だ」
呻き声が起き“何という事だ”とブラウンシュバイク公が呟いた。

「さてと、忙しくなるな、準備をしないと」
エーリッヒが立ち上がった。何処か楽しげだ、浮き浮きとしている。
「何がだ? 何が忙しくなるのだ? 準備とは?」
「戦争ですよ、公。貴族連合軍対政府軍、我々は反乱軍となってローエングラム伯率いる宇宙艦隊と戦うのです。銀河最強の軍隊と戦う、なかなか楽しい未来だ」
皆が黙り込んだ。

「避ける方法は?」
ブラウンシュバイク公が低い声で尋ねた。
「有りません。たとえ公が避けようとしても周囲がそれを許さない。貴族達は皆、エルヴィン・ヨーゼフ殿下が皇位に就くのを認められない、殿下をリヒテンラーデ侯とローエングラム伯が支えるのが認められない。必ずブラウンシュバイク、リッテンハイム両家を担いで政府を倒そうとします。彼らを説得出来ますか?」
「……難しいな」
ブラウンシュバイク公が溜息を吐いた。

「そしてリヒテンラーデ侯とローエングラム伯はそういう貴族達が目障りなのです。たとえ公が説得に成功しても必ず挑発して叩き潰しにかかります。堪え性に無い貴族達には耐えるのは難しいでしょうね。結局は暴発してブラウンシュバイク公爵家は捲き込まれる事になります」
またブラウンシュバイク公が溜息を吐いた。

「勝てるのか、ローエングラム伯に。卿は伯を高く評価していたが」
「百の内九十九パーセント負けます」
同感だ、負けるだろう。貴族連合など当てにならない事はクロプシュトック侯の討伐で分かっている。あれは烏合の衆でしかない。他の人間もそれは分かっている。皆、顔色が良くない。

沈痛な表情で沈黙するブラウンシュバイク公にエーリッヒが笑いながら話しかけた。
「そんな顔はなさらないでください。たとえ一パーセントでもローエングラム伯相手に勝ち目が有るというのは大したものですよ。自慢して良いと思います」
それで励ましたつもりか? 全く……。溜息が出そうだ。

「それより他の方々に共に戦ってくれるかどうか確認した方が良いでしょう」
エーリッヒがクレメンツ、ファーレンハイト両中将、アンスバッハ、シュトライト両少将に視線を送った。そして俺にも。ブラウンシュバイク公も皆を見た。
「味方すれば反乱軍となる、そして敗者になる。これまでの名誉など欠片も無くなるでしょう。抜け出しても誰も軽蔑はしません、少なくとも私は軽蔑しない。ここでブラウンシュバイク公に味方するなど愚の骨頂だ」
「エーリッヒ」
何かを言おうとしたがエーリッヒが手を上げて止めた。

「それに戦っている時に裏切られるよりはずっと良い。ローエングラム伯もそういう人間は嫌悪します。抜けるなら今です」
重苦しい沈黙が落ちた。ブラウンシュバイク公も何も言わない、いや言えないのだろう。エーリッヒの言葉には一グラムの偽りも無かった。

「卿は如何するのだ?」
クレメンツ中将がエーリッヒに問うと“私ですか”と言ってブラウンシュバイク公を見た。
「ブラウンシュバイク公には命を助けて貰いました。私は未だその借りを返していないのですよ。困った事に私の予想とは違って意外にブラウンシュバイク公は良い方だった。このまま抜けては一生後悔するでしょう、借りを返す機会を与えてくれた事を感謝しますよ、公」
笑みを浮かべている。胸を衝かれた、四年前俺のしたことは正しかったのだろうか……。

「ならば小官も御一緒しますよ、ヴァレンシュタイン提督。小官の命を救ってくれたのは貴方ですからな。小官も未だその借りを返していません。ここを抜けては返しそびれてしまう」
リューネブルク中将が不敵な笑みを浮かべて答えた。死ぬ気だな、そう思った。リューネブルク中将はエーリッヒが死ぬと言っている。そしてエーリッヒもそれを否定しない。二人とも死ぬ気だ。クレメンツ、ファーレンハイト両中将が自分達も共に戦うと言った。二人もエーリッヒには常々借りが有ると言っている。どれ、俺も宣言するか。

「俺も卿と共に戦うぞ、ここに卿を引き摺り込んだのは俺だからな。卿を見捨てては行けん」
「諸悪の根源だな、アントン・フェルナー少将。だがついに積年の悪行の報いが来たか」
エーリッヒがおどけるとようやく部屋に笑いが起きた。そしてアンスバッハ、シュトライト両少将も公と共に戦うと言った。

「おめでとうございます、ブラウンシュバイク公。世の中思ったよりも馬鹿が多い。或いは公の人徳かな。勝算は二パーセントに跳ね上がりました。倍ですよ」
エーリッヒの言葉に皆が笑い出した。ブラウンシュバイク公もだ。
「酷い奴だ、もう少し勝率を上げてくれても良いだろう、せめて五パーセント程度にはしてもらいたいものだ。そうではないか?」
クレメンツ中将の言葉に皆が口々に同意した。和やかな空気が部屋に流れた。

ブラウンシュバイク公が突然頭を下げた。
「済まぬな、皆。オットー・フォン・ブラウンシュバイク、心から卿らに感謝する。この通りだ」
声が湿っている。耐え切れなくなったのだろう、嗚咽が漏れた。頭を下げたのは涙を隠す為かもしれない。少しの間、部屋を沈黙が支配した。どういうわけか、切ない程優しい気持ちになっていた。



帝国暦 488年  2月 10日  オーディン  ゼーアドラー(海鷲)  ナイトハルト・ミュラー



ゼーアドラー(海鷲)は何処か浮ついていた。誰もが内乱が近いと分かっているからだろう。そして内乱はかつてない規模のものになる筈だ。
「負けられんな、今度の内乱は」
ケンプ提督の言葉に皆が頷いた。確かに負けられない、この戦いが帝国の未来を決めるだろう。そして俺は一個艦隊の司令官として初めて戦場に出る、緊張と不安を感じている。

「負ける事は無いだろう、貴族連合など烏合の衆だ。クロプシュトック侯の一件がそれを証明している」
ビッテンフェルト提督が気負う事なく言った。
「確かに貴族連合は烏合の衆だ。だがな、ブラウンシュバイク公爵家は厄介だぞ」
「クレメンツ、ファーレンハイト、そしてヴァレンシュタイン……」
ロイエンタール、ミッターマイヤー提督の言葉にテーブルが静まり返った。

ロイエンタール、ミッターマイヤー、メックリンガー、ケンプ、ビッテンフェルト、ルッツ、ワーレン、ケスラー提督。ローエングラム元帥府の指揮官達、おそらくは帝国の精華といって良い男達だ。その男達が沈黙している。俺の不安の理由の一つがそれだった。ブラウンシュバイク公爵家にはアントンとエーリッヒが居る。そしてクレメンツ中将とファーレンハイト中将。どちらも有能な指揮官だ。これまでの実績がそれを証明している。

「ミュラー提督はヴァレンシュタイン提督とは士官学校で同期だったと聞いたが?」
「ええ、そうです。……親友でした、今でもです」
俺がケスラー提督の問いに答えると皆がちょっと困ったような表情をした。親友という言葉に引っかかったのだろう。だが取り消す気は無い、本当の事だ。

「少し聞いても良いかな」
遠慮がちな声が聞こえた。
「構いませんよ、ワーレン提督」
「平民の彼がブラウンシュバイク公爵家に仕えたのはちょっと不思議な気がするんだが何か伝手でも有ったのかな」
何人かが頷いた。そうだな、普通は貴族の所有地の出身か、それでなければ何らかの伝手が無ければ貴族に仕える事は無い。

「我々共通の親友であるアントン・フェルナー少将がブラウンシュバイク公爵家に仕えていました。彼の親戚が公爵家と関わりが有ったのです。そして或る事情からエーリッヒはブラウンシュバイク公爵家に仕える事になった……」
「或る事情?」
皆が不思議そうな表情をした。

「ええ、詳しくは言えませんが軍上層部に睨まれて命が危険になったからです。私がそれをアントンに話してアントンがブラウンシュバイク公に相談した。そして公がエーリッヒを庇護したのですよ。エーリッヒは貴族が嫌いでしたから不本意だったでしょうが生きるためには已むを得なかった……」
皆が考え込んでいる。おそらくはエーリッヒの両親が貴族に殺された事を思っているのだろう。そしてそれにも拘らずブラウンシュバイク公爵家に仕えるエーリッヒの心情を。誰かのグラスがカランと音を立てた。

「ブラウンシュバイク公は儲けたな」
ロイエンタール提督がポツリと言うとテーブルに苦笑が溢れた。
「そうだな、あそこは領内の統治も極めて開明的で領民達のブラウンシュバイク公に対する信望も厚いと聞いている。他の貴族領とはえらい違いだ。あれはヴァレンシュタインがやった事だろう?」

「ああ、武勲を一つ上げて昇進する度に改革案を提示したと聞いている。ブラウンシュバイク公はそれを受け入れた」
ケンプ提督の問いにケスラー提督が答えた。その通りだ。本当は後方での勤務を望んでいたがそのためにエーリッヒは前線に出続けた。そしてどの戦場でも抜群の功を挙げた。だからブラウンシュバイク公もエーリッヒを信頼し改革案を受け入れた。そして改革が進めば進む程公のエーリッヒに対する信頼は厚くなっていった。

「軍備も相当なものだ。艦隊戦力は毎年増強して六万隻を超える。かなり厳しい訓練を積んでいる」
「クロプシュトック侯の事件の時には出なかったのか?」
「出なかった。一説には貴族達の実力を知る良い機会だと敢えて出さなかったと言われている。貴族連合軍の余りの惨状に当てにならんとブラウンシュバイク公は呆れたらしい」

メックリンガー提督とルッツ提督の会話に皆が失笑した。が俺は笑う事は出来ない、鎮圧軍を出すなとブラウンシュバイク公に進言したのはエーリッヒだ。士官学校時代は気付かなかったがかなり強かな計算をするようになった。その当てにならない連中と共に戦う。勝算の無い戦いをしない筈なのに一体何を考えているのか……。

ざわめきが起きた。出入り口の方だ。視線を向けると懐かしい顔が有った。エーリッヒ、アントン、クレメンツ中将、そしてファーレンハイト中将。珍しい事だ、彼らが此処に来るなど。そう思っているとこちらに近付いてきた。そうか、会いに来たのか、律儀な奴だ。

テーブルの前に来た。幾分空気が重くなった。皆が居心地の悪さを感じた時エーリッヒがクスッと笑った。相変わらず悪戯好きで子供っぽいところは少しも変わらない。卿は帝国軍大将だぞ。
「御迷惑でなければ同席させて頂けませんか?」
穏やかな声だった。空気が軽くなったような気がした。

皆が顔を見合わせたがロイエンタール提督が“どうぞ”と言った。皆が少しずつ席を詰めてエーリッヒ達が席に座った。
「あの折は御配慮、有難うございました。おかげで助かりました」
ミッターマイヤー提督が姿勢を正して謝意を述べるとエーリッヒがひらひらと掌を動かした。

「気になさらないでください。元々弁護士志望でしたのでね、困っている人を見ると無性に助けたくなる性分なのです。御蔭で今はブラウンシュバイク公を助けようとしています。一種の病気だな」
エーリッヒの言葉に元帥府の皆は困ったような表情をした。何と応対していいか分からなかったのだろう。クレメンツ中将達はおかしそうな顔をしている。

「出来る事なら戦場で出会ったら手加減して頂けると嬉しいですね。まあ無理なお願いだという事は分かっています。ですが心の片隅にでも覚えて頂ければ幸いです」
「……はあ」
「……冗談ですよ、ミッターマイヤー提督。場を解そうとしたんですが……」
エーリッヒが困った様に、心配そうに言うとクレメンツ中将達がこらえきれないといった様に笑い出した。

「ああ、失礼。大将閣下はこの通り冗談の下手な方でね。我々は慣れているから笑えるんだが卿らは良く知らないからな、ちょっと笑うのは難しいかもしれない。まあ悪気は無いんだ、悪くとらないでくれ」
エーリッヒは困ったような顔をしている。それを見て彼方此方から苦笑が起きた。ミッターマイヤー提督も苦笑している。

エーリッヒ達が飲み物を頼んだ。エーリッヒはカルーア・ミルク、カルーアは少なめにと頼んだ。他の三人は水割りだ。エーリッヒは飲めない酒をいつの間にか飲むようになっていた。アントンも最初は止めたらしいが今では量を過ごさなければ止めることは無い。少しずつだが何かが変わったと思う。

「しかし珍しいですな、ここにいらっしゃるとは。何か特別な用でも?」
ケスラー提督が問い掛けるとエーリッヒが僅かに首を傾げた。
「用など有りません。ただこうして話がしたかった。一緒に酒を飲みたかった。それだけです。明日にはブラウンシュバイクに戻りますので今日しか機会は無いのですよ」
ブラウンシュバイクに戻る、その言葉に元帥府の人間が顔を見合わせた。皆の表情が幾分硬い。しかしエーリッヒは気付かないように言葉を続けた。

「次に会えるのは何時になるか、或いはヴァルハラでという事も有るでしょう。私とアントンは生きているうちにナイトハルトに会いたかった。クレメンツ提督はメックリンガー提督と、ファーレンハイト提督はルッツ提督と。しかし個別に会えば要らぬ疑いを持たれますからね。こういう形で会う機会を作るしかなかったのです」
シンとした。もう直ぐエーリッヒ、アントンと戦う事になる、嫌でもその事が頭に入って来た。

「良く来たな、クレメンツ」
「ああ、卿と飲みたくてな、メックリンガー」
メックリンガー提督が声をかけるとクレメンツ提督が答えた。ファーレンハイト提督とルッツ提督が頷き合っている。そしてエーリッヒとアントンが俺に笑いかけてきた。困った奴だ。
「もう会えないかと思っていたぞ」
エーリッヒとアントンが顔を見合わせた。そしてこちらを見て“寂しかったか?”、“間に合って良かった”と言った。気が付けば笑っていた、しょうがない奴らだ。

飲み物が運ばれてきた。エーリッヒ達がグラスを取った。
「乾杯しましょうか?」
「良いですな、しかし何に乾杯します」
「そうですね、……我々皆の武運長久を祈って。如何です?」
エーリッヒとケスラー提督の遣り取りに皆が頷いた。今夜は楽しく時間を過ごせそうだ。




 
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