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女王への捧げもの

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第四章

「私に薪を献上しろと」
「はい、この寒さならと思いまして」
「そうなのですか、そなたは賢いですね」
 微笑んで言う女王だった。
「非常に」
「有り難うございます」
「これだけ聡明な娘は大事にしなければなりません」
 シギュンを見つつの言葉だ。
「そなた、何が欲しいですか」
「褒美を頂けるのですか」
「何でも好きなものを。私としてはそなたを侍女にしたい位です」
「有り難きお言葉、ですが」 
 シギュンは女王に微笑んで返した。
「私は一介の木樵の娘、それ以外の者ではありませんので」
「だからですか」
「私なぞにはあまりにも僭越なお言葉です」
 だからだというのだ。
「お言葉だけ受け取らせて頂きます」
「そなたの両親と共にいるのですね」
「そうさせて頂けるでしょうか」
「そなた程の者を傍に置けぬことは残念ですが」
 女王はシギュンの言葉を受けて微笑んで返した。
「しかしそなたにその気がないのなら」
「はい」
「仕方がありません、ではこれからも村で幸せに暮らすのです」
「ではその様に」
「そしてその智恵を村の為、両親の為に使い」
 そのうえで、というのだ。
「やがて夫となる者の為に使うのです」
「ではその様に」
「そなたの夫なる者は幸せですね」
 シギュンの顔を見つつて、女王はこうも言った。
「そこまで聡明な者を妻に出来るのですから」
「いや、このことは本当に」
「そうね」
 ホズとエリンもだ、女王と娘の話まで聞いて言うのだった。
「いい勉強になったな」
「思わぬことだったけれど」
「それでもな」
「いいことを学べたわ」
「そなた達もまた幸いです」
 女王は二人にも微笑んで言うのだった。
「これ程聡明な娘がいるのですから」
「そのことに気付きました」
「今ようやく」
「気付けばそれでいいのです」
 充分だというのだ、それだけで。
「では貴方達はこれから」
「はい、娘達と共に」
「その智恵を借りて生きていきます」
「そしてやがては」
「娘に婿を取らせますので」
「そうして幸せに暮らすのです」
 女王は二人にも微笑みながら言った、そして薪を見ても言うのだった。
「この薪で暖まらせて頂きます」
「是非そうされて下さい」
 シギュンもまた微笑み女王に言葉を返した、冬の寒い中で暖かさを与えてくれる薪を見つつ。


女王への捧げもの   完


                          2014・9・21 
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