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ひとかけらのエメラルド

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第三章

「御免、ちょっとね」
「ちょっと?」
「そう、ちょっとね」
 どうかとだ、私に携帯の向こうから言ってきた。
「今お店でね」
「宝石買ってるのかしら」
「ちょっと手間取ってね」
「それでなの」
「あと少しでお店出られるから」
「だからなのね」
「もう少しだけ待っててくれるかな」
 私に申し訳なさそうに言ってきた。
「そうしてくれるかな」
「わかったわ。じゃあね」
「本当にすぐに行くから」
「待ってるわね」
「うん、絶対に帰らないでね」
「それはしないわよ」
 私は声だけでなく顔も微笑まさせて彼に言った。顔は彼には見えないとわかっていてもついついそうした。
「だから安心してね」
「うん、じゃあすぐにそっちに行くから」
「待っているわ」
 また彼に告げた、そしてだった。
 暫く彼を待っているとだ、十分位してだった。
 彼が慌てている感じで前から駆けてきた、そして私のところに来て肩で息をしながら申し訳なさそうに言ってきた。
「いや、待たせて御免ね」
「いいわ、それは」
「いいんだ」
「だってそんなに待っていないし」
 それにだった。
「連絡もくれたから」
「だからなんだ」
「何も言わなくて遅れたのなら別だけれど」
 若しくは嘘を吐いたのなら。私も怒っていた。
「それでもね」
「連絡したから、それで」
「そうよ。気にしないで」
「悪いね、本当に」
「だから悪くないわ。けれどね」
「けれど?」
「何処に行ってたの?」
 私は彼に遅れた理由を尋ねた。
「手間取っている感じだったけれど」
「うん、先月言ってたよね」
 ようやく肩での息を収めてきてだ、私に笑顔で言ってきた。 
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