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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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StrikerS編
  84話:出張任務の裏側

 
前書き
 
 皆さん、明けましておめでとうございます。
 年明け前に上げようと思ってたんですが、ちょっと時間がかかってしまいました。申し訳ないです。
  

 
 





 母から娘へのお願い



「―――お母さん、それ本当なの?」
『そうなの。そっちに行ってからずっと帰ってきてないのよ~』


 今は六課が設立して少しした頃。なのはは久々に桃子へ連絡を繋いで、近況報告をし合っていた。
 そこで今度一年間フェイトやはやて達、それに士とも同じ職場で過ごすと伝えると、桃子はそれならとあることを伝えた。

 そう、『士が高町家へ帰ってきてない』という事を。


「前にもその話は聞いたけど、まだ帰ってなかったの?」
『そうなのよ。何度かこっちから連絡取ったこともあるんだけど、その度に善処します、善処しますって返されて、結局帰ってこなくって……』


 う~ん、と少し悩むような唸り声を上げるなのは。とはいえなのはもここ最近の士の事を、間接的に聞くことがあった。

 『特別対策部隊』―――長いので省略すると『特策隊』の噂は至る所に溢れている事が多い。
 金色の大剣を振るう豪傑、逆巻く炎と轟く雷(いかずち)を操る青年と、その青年と背中を合わせる冷静沈着な。そんな男共を後ろで支える後衛(バックス)、その他にも他の部隊でも活躍できるような前衛陣などなど……。色々な話が持ち上がってくる。

 その中でもやはり、ディケイドについての噂は絶えない。本当に魔導士なのか、彼の正体は一体誰なのか。彼に直接会ったことのない人々は、根も葉もない噂をすることもある。

 とは言っても、なのは自身や身内、知り合いは勿論、『特策隊』と共同で任務を行ったことのある人達はディケイドの正体を知っている訳で、そう言った人達は絶え間なく出てくる噂については、嘘だったり間違っていたりがわかる。


 しかし、なのはの耳に入ってきたのは、それだけじゃない。どうにもその『特策隊』、通常の部隊よりもはるかに忙しいらしい。
 怪人達の起こす事件の処理が部隊としての役目だ。しかしそれはミッドだけに限った話ではない。色んな世界で起こるそれらを、士達が対処しているのだ。それこそどこぞのサラリーマンよりも、はるかに移動回数は多い。

 そうなると当然疲労は溜まる。そしてこの部隊は、今の六課と同じように少数精鋭の部隊だ。一人一人が受け持つ負担はそれなりに多い。しかもそれだけじゃなく、士は前衛部隊の訓練にも担っている。一度に何人もの人達を同時に相手どったり、マジになってやることもある。そうなれば自ずと時間はかかってしまい、実家に帰る暇もなくなってしまう。


 それを知っているなのはは、それ故にこれまで士に対して強く言う事はなかった。士自身が、一度担われた仕事は全うしようと努力する正確であることは、なのはも知っている事だ。

 しかし、それも『これまでは』の話だ。
 流石のなのはでも、四年近くも帰らないことに関して何も思わない訳がない。なのはだって年末年始は必ず帰るように心掛けているのだから、一度ぐらいは帰って欲しいと思っている。


「じゃあ今度休みとかできたら、縛ってでも連れていくね」
『流石にそこまではしなくてもいいけど、連れて来てくれると嬉しいかな』
「わかった。士君にもそう伝えておくよ」


 そう思うからこそ、なのはは桃子にそう返して、通信を切った。
 勿論この時は、この約束が意外と早い段階で果たせるとは思ってはいなかった。
























 上司と部下



「ば、バカ狸ってなんや! 小娘扱いはされても狸なんて言われたことないで!」
「はははっ、それは悪かったな。そんじゃ俺は先に行くぜ~」


 そう言って肩にタオルを引っかけ、手を振って去っていく士。その背中に怒りの感情を込めた目線を突き刺すはやて。
 その背中が見えなくなると、はやては溜息をついて視線を受付の人に向けた。

 ふと気づくと、顔を向けた先にいる受付の人が、何やらニヤニヤした顔をしていた。


「な、なんですか?」
「あ、いえ。ごめんなさい」


 受付の女性はそう言って顔を背けるが、やはり笑みは消えていなかった。
 怪訝そうに見つめるはやて。対してそれに気づいた女性は、「ちょっと聞きたいんですが…」と口を開いた。


「もしかして、彼氏さんですか?」
「ひぇ!?」

 ボンッと効果音が聞こえそうな程急激に顔を赤くしてしまうはやて。その様子を見た女性は、口元に手を当ててフフフと笑った。


「い、いや、違いますよ!? あれはその…私の部下でして…」
「あら、そうなんですか? そんなにお若いのに、もう部下を持てるんですか?」
「え? あ、いや…」
「それなら、いい部下をお持ちですね」
「あ、ありがとうございます…」


 女性の言葉に何故か冷や汗の止まらないはやてと、それを見てニヤニヤの止めない女性。なんか変な構図だ。


「と、取りあえずお金を…」
「あ、そうですね。それじゃあ大人15人と子供4人ですね―――」
























 お風呂で隠し事はなしで



「―――って事があったんよ」
「へ~、そうなんだ~」


 湯気が立ち込める中、腕を組みながらそう言うはやて。その周りには小学校時代からの幼馴染四人が、のんびりとした様子で湯に浸かっていた。


「でもよかったじゃない、そう見られたんだから」
「う~ん…そう言われると悪い気はないけど……」


 すずかにそう言われ、頭を掻きながら照れるはやて。それを見たなのはとフェイトは、あまりいい顔とは言えない表情をしていた。
 それに気づいたアリサは、急にはやての首に腕を回した。


「何よ二人共、そんな顔しちゃって。はやてに妬いてるの?」
「え!? あ、いや…」
「そんなことは……。そ、そう言うアリサはどうなの?」


 妬いたのか、なんて質問をされ流石に慌てる二人。そんな中反撃とばかりに、フェイトはそう言い返す。


「私? そりゃあ勿論羨ましいとは思うわよ?」
「え…?」


 しかしアリサはあっさりとした感じでそれを認め、フェイトは驚く。横で聞いていたなのはもフェイトと同じように驚き、近くにいるすずかに視線を移す。
 なのはと目が合ったすずかは、いつも以上に柔らかい表情ではにかんだ。


「アリサちゃん、なんかあっさりし過ぎやないか?」
「そうかしら? だったら、あの事があったからかな?」


 あの事? と疑問符を頭の上に浮かべる三人。隣にいるすずかだけは「あ~」と、納得した様子で頷いていた。


「アリサちゃん、『あの事』って?」
「ん~? 教えな~い」
「アリサちゃ~ん? ここはお風呂なんやで? 隠し事は―――なしや~!」
「ひゃぁぁぁ!? ちょ、はやて! 急に胸揉まないでよ!」


 いいではないか、いいではないか~。と目を星のように輝かせて、アリサの背後からその豊かな胸を揉み下し始めた。流石おっぱい魔人、その動きは『エースオブエース』と言われるなのはや、『金色の閃光』と呼ばれるフェイトでさえ見えなかった。


「はやてちゃんは相変わらずだね」
「す、すずか? アリサの言う『あの事』って、知ってる?」
「うん、知ってるよ」


 そう返事を返したすずかに、なのはとフェイトが「私、気になりますっ」って顔を向けた。
 すずかはその表情に物怖じしてしまい、取りあえず二人を手で制するような仕草をした。


「じ、実はね―――私とアリサちゃん、士君に告白したんだ」
「「「はぁっ!?」」」


 告白、という言葉に驚き、三人は声を上げる。アリサの胸を揉んでいたはやても、思わず手を止めてアリサを見た。
 息を上げているアリサは、はやてと目が合うと少し目線を逸らして口を尖らせた。


「あんた達三人が仕事で学校にいない間にね。三人には悪いとは思ったけど…」


 唖然としたまま動かない三人。アリサは口を尖らせたまま、すずかは少し困った様子で口を閉じてしまった。


「え~っと……それで、士君はなんて…?」
「三人を出し抜いた結果、私もすずかもフラれちゃったわ」
「そ、そうなんだ…」


 アリサに軽く説明されても、三人は上手く頭が回らなかった。それは少し長い間、湯に浸かっていたからだろうか。


「ま、フラれたとはいえ、あいつがしょうもないぐらい好きなのは変わんなかったわ」
「うん、それは私も同じかな。なんか四年経って士君、一段とカッコよくなってるし」


 そっちの方の話はどうなの? なんてすずかが三人に聞くが、頭が上手く回らない三人では即座に答える事は出来なかった。

 そもそも、管理局内での士の噂は絶えないが、そう言った感じの噂はかなり少なかった。
 仮面をつけた正体不明の男。噂上はそうなっているからか、ディケイドに対する色恋沙汰は浮かび上がることがなかった。まぁ正体不明な人間と恋人になろうとする物好きな人は誰もいないという事だ。


「って事は、彼女いないんだ~…」
「「「えっ…」」」


 とそう言って、挑戦的な目線を三人に向けるアリサ。それを聞いた三人は顔を真っ赤に染めて、急にアタフタし始めた。


「い、いや…でも…!」
「でもじゃないでしょ? 別に誰かとも付き合ってないのは事実なんだから」
「えぇっと…!」
「フフフ…」
「すずかも笑ってないで何か言ってよ…!」

「なになに? 何の話してるの?」
「何やら盛り上がってるけど?」
「皆顔真っ赤だよ~?」


 すると五人の騒ぎを聞きつけたのか、エイミィと美由希、それにアルフもやってきた。
 その所為か、三人はさらに顔を真っ赤にした。色々弁明の言葉を並べるが、それすらも弄りの対象となってしまい、さらに三人は焦りの泥沼に飲み込まれていく。


(―――これもうダメだ、何とかして抜け出さなきゃ…)


 そう察したフェイトは、この集団の隙を見て離脱を実行した。顔の火照りを考え、露天風呂の方へと向かった。
 しかしその考えの所為で、士と鉢合わせしてしまうなんて、この時のフェイトには知る由もなかった。





  
 

 
後書き
 
 取りあえず、こんな感じになりました。
 きっかけは前話を書いている途中、はやてとの受付のシーンで考えましたね。どうでしたか? よければ感想もらえると嬉しいです。

 マッハも本編に登場してきました。すんごい派手な変身で結構面白かったです。
 次回はSrikerSの本編で、ホテルアグスタの場面になります。多分時間がかかってしまうので、また首を長くして待っていてください。

 では今年で三年目となりますが、今年もよろしくお願いします。
 
  
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