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金婚式

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第三章


第三章

 そしてその金婚式の日だった。二人は自分の屋敷の庭でそのささやかな式をはじめようとした。ローストビーフにケーキ、それにシャンパンを出してだ。祝おうとしていた。
「じゃあ今からね」
「はじめましょう」
 緑の庭は日の光を受けて爽やかに輝いている。花は薔薇が咲き誇りその中でささやかな祝いをはじめようとしていた。しかしそこで、だった。
 二人は庭の中の白い木の席に着いていた。そこで今から祝おうとしていたのである。
「ひいお爺ちゃん、ひいお婆ちゃん」
「いいかな」
「僕達も入れて」
「お祝いに」
 こう言ってだった。彼等はやって来たのであった。
「あれっ、御前達」
「ここに来たの」
「そうだよ。ひいお爺ちゃん達のお祝いにね」
「金婚式にね」
「そうだよ」
 こう話してそれで場に着くのだった。二人の前に。
「金婚式おめでとう」
「それでお祝いに」
「僕達からプレゼントがあるんだ」
「プレゼントって?」
「何なの?」
 二人は曾孫達の言葉にまずは怪訝な顔になった。
「それで一体」
「何が」
「聴いて」
 一番年長のその彼が二人に告げた。
「僕達のプレゼント」
「是非ね」
「その為に用意したんだよ」
「プレゼントを聴いてって」
「何を?」
 二人はそれを聴いてまた怪訝な顔になった。一体何か全くわからないのだった。それでその顔で首を傾げさせながらまた曾孫達に問うた。
「聴くプレゼントって一体」
「何かしら」
「これだよ」
 ここでまた曾孫の一人が言ってきた。
「この曲聴いて」
「二人の為にね」
「どうぞ」
 ここで皆それぞれ楽器を取り出して来た。一番年長の彼が彼等の前に出て指揮棒を出してきた。そうしてそのうえではじめた曲は。
「この曲を」
「私達の為に」
 それは金婚式という曲だった。それを二人に対して奏でたのである。二人はその曲を聴いて。
「どうか、だからか」
「金婚式だから」
「それでなのね」
「うん、そうなんだ」
 演奏はすぐに終わった。曾孫達は二人に顔を向けて答えるのだった。
「二人の為にね」
「練習したんだ」
「練習してか」
「私達の為に」
「だから」
 それでまた話すのだった。
「よかったかな、これで」
「この曲で」
「喜んでくれた?」
「うん」
 最初に応えたのはリチャードだった。
「有り難う」
「有り難うって」
「よかったの」
「ああ、とてもよかった」
 その穏やかな笑顔で曾孫達に答えたのだった。
「とてもな」
「有り難う」
 メアリーもこう言ってきたのだった。
 
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