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うたた寝

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第二章


第二章

「どうしようかな、それで」
「それでって?」
「これからだけれど」
 これからのことを話すのである。それをである。
「どうしようかな」
「帰る?」
 そうしようかと提案するのだった。彼女に対して。
「もうね。帰ろうか」
「そうね」
 女も微笑んで男に言葉を返した。
「それじゃあお家に帰って」
「そうしよう。それでね」
「晩御飯を食べてね」
「ええ、そうしましょう」
 こう話をしてであった。席を立った。もう辺りは少し寒くなってきていた。その寒さについても男の方から静かに言ってきたのであった。
「少し寒くなってきたしね」
「そうね。じゃあ後は」
「家で何か食べて温まろう」
 彼の提案であった。
「それでいいよね」
「何がいいかしら」
 話は夕食に移っていた。その温まる為のものにである。
「それで」
「そうだね。春だけれどね」
 男は少しだけ考えてから。彼女のその問いに答えた。それは。
「すき焼きとかどうかな」
「すき焼き?」
「そう、すき焼き」
 それを提案したのである。
「牛肉は少し高いかな」
「輸入肉なら安いわよ」
「そう。だったらそれを買ってね」
「お葱にお豆腐に麩に糸こんにゃくも」
 男は笑いながら材料を話していく。
「あとはお醤油とお砂糖は」
「そっちはもう家にあるから」
「じゃあ材料だけでいいね」
「他にもよ」
 女はまだあると言ってきた。
「あるわよ」
「他にもって?」
「卵よ。それ忘れたら駄目じゃない」
 笑いながら卵も出すのだった。すき焼きには欠かせないものである。
「それもね」
「そうだね。じゃあ今日は」
「ええ、スーパーに寄ってからね」
「すき焼きにしよう」
「そうしましょう」
 笑顔で話をしてそのうえで公園を後にする二人だった。のどかで落ち着いた幸せの中でのやり取りだった。赤い世界が二人を照らしていた。


うたた寝   完


                 2010・1・18
 
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