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101番目の哿物語

作者:コバトン
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第十話。因果と縁

 
前書き
今年も残り僅か……来年もよろしくお願いします! 

 
しばらく首を傾げていた一之江だが、流石にヒステリアモードの事は解らないみたいで「後ほど無理矢理でも口を割らせて聞き出すとして」と前置きしてから発言した。

「ではそろそろ学校に向かいましょうか」

「今から行くのか?」

「ええ。サボタージュしてもよいのですが『魔女』の情報を得るいい機会ですので遅れてでも行った方がいいかなと思いまして」

「今から行ったら目立たないか?」

「目立ちますね」

「だろう?
だから今日はもう帰ろうぜ」

「まあ、貴方はいつからそんな不良少年みたいになったんですか。不審者として通報しますよ」

「誰が不審者だ!」

「昨夜、私に抱きついた変態はどなたでしたっけ?」

「……昨日は本当悪かった」

ヒステリアモード時にやらかした行為を容赦なく抉ってくる辺り、本当一之江はドSだな。

「そろそろ夜霞に入りますのでこっから先はロア関連の話題は極力避けてください。
『魔女』に色々知られると厄介ですので」

一之江の言葉通り、俺と一之江を乗せた車は先ほど通った『境川』の橋を渡って『夜霞』市内に入った。

「そう言えば貴方はクラスメイトや仁藤キリカから『モンジ』と呼ばれてますが何か由来とかあるのですか?」

大通りを車が走る中、突然、一之江がそんな質問をしてきた。

「あるちゃあるが……大した由来じゃないぞ?」

「後学の為にも知りたいですね、是非」

話すまで逃がさねえぞ!
と言う感じのニュアンスで言ってきたので仕方なく話す事にした。

「本当、大した事じゃないんだが……一文字をカタカナにしてみろ」

「イチモンジ……ああ、成る程。
安直ですね」

駅名を偽名に使ってるお前が言うな、と思ったが口には出さないでおく。

「成る程……なら私もモンジと呼ばせていただきますね。
よろしくお願いします。モンジ」

「普通に名前で呼べよ!」

「嫌ですよ。
モンジはモンジで十分です。
いい響きじゃないですか。電子レンジみたいで手早く簡単に調理できそうで」

「殺る気か⁉︎」

手早く簡単に調理できるとか、一之江が言うと冗談に聞こえねえ。

「ええ。殺られたくなったらいつでも電話をかけてあげますから是非出て振り向いてくださいね」

「誰がするか⁉︎」

そんなやり取りをしていると車は夜坂を上って『夜坂学園』の校門前に着いた。
車の中で座っていた俺だが流石に疲れたので一之江よりも先に降りた。
一之江が車から降りようとした時に______それは起きた。
新緑の季節とあって、暖かい日差しが照らす中、突如強風が吹き上げた。座席から降りた一之江の制服のスカートがめくれ、たまたま一之江より先に降りていた俺はそのスカートの中をバッチリ覗いてしまうといったハプニングが起きた。

______ドクドクドク。
全身の血流の流れが加速し、また(・・)俺はなってしまった。
あのモード。ヒステリアモードに。

「顔に似合わず、大胆な下着を身につけているんだね。
一之江の好みはもっと清楚な白色だと思っていたけど黒もよく似合っているよ。
やっぱり可愛い子は何を身につけても映えるものだね」

______パチッとウィンクした俺だが、目の前の一之江はプルプルと全身を震わせていた。

「______い______す」

「ん?何だい?」

低い声で呟いた一之江の言葉は聞き取る事が出来なくて思わず聞き返してしまった。

「この、変態男______絶対殺害します!」

この後無茶苦茶……された。(勿論卑猥な事はしてないぜ)







そしてその日の放課後。屋上から降りた俺と一之江は一緒に下校していた。
『一之江と下校』というシチュエーションに緊張してしまう。
一之江は黙っていれば物静かな育ちの良い清楚なお嬢様なので周りを歩く男子生徒からの嫉妬の篭った視線をあちこちから感じる。
出来ることなら今すぐ変わってやりたいくらいだ。
ヒステリア地雷がどこにあるか解らない状況で、美少女との下校というシチュエーションは俺にとって地獄と言っていい時間だ。
一之江は愛想こそ悪いものの面白い奴だけどな。
それでも一緒に下校しているのは『ロア喰い』の調査をする為だ。

「それでは『ロア喰い』探しに早速協力して貰います。Dフォンはありますか?」

制服の胸ポケットとズボンのポケットからDフォンを取り出すと一之江が驚いた声をあげた。

「え、何故二台もあるのですか?」

「解らないな。ヤシロちゃんにこれは俺のDフォンだと言われて渡されたからね」

「……この変態には何かあるんでしょうか?」

「誰が変態だ!」

「まあ、いいでしょう。
で、ですね。Dフォンは『8番目のセカイ』に接続する為の端末です」

「キリカが言ってたな、電話で」

「仁藤キリカがですが……ふむ」

一之江は何やら考え込んでから「やはり利用されていた可能性が高いですね」などと呟いてから語り始めた。

「新しい『ロア』が生まれたり、新しくハーフロアになったりした人がいた場合、『ロアの世界』の案内人、入り口を開く人物として『(やしろ)』が現れる……そういう物語が彼女の『ロア』となっています。故に、ヤシロさんも『ロア』なのですよ」

「『世界』を神様に見立てた、神社みたいな役割を持ってるんだな、あの子は」

「なので、ほとんどのロア、ハーフロア、そしてこの世界に関わる人間がこのDフォンを持っています。Dフォン同士なら通話やメールが無料、というのも特徴です」

「そうなのか、便利そうだな」

それだけ聞けば便利だが……
(都市伝説とメアド交換!
とかできんのかよ。
だから一之江みたいな『電話系』のロアに知られると電話の着信に100件とか履歴が残るというわけだよな。
電話系や情報系のロアに知られると厄介な事になりそうだな)

「時代と共に進化するそうです。昔は出せば必ず飛ぶ矢文、とかだったらしいですよ」

「そんな昔からあんのかよ」

しかし、矢文の時代からあるとか、昔から語られる噂や伝承に纏わる影にはロアがいたって事になるんだよな。
もしかしたらセーラの先祖『ロビン・フットのロア』とかもイギリスにいたりしてな……って流石にそれはないか。

「そろそろ画面にタッチするタイプになってくれませんかね」

「そのうちなるかもな」

時代と共に進化するなら、将来的にはタッチするタイプとかになったりするかもしれないな。もしくは小さいパソコンタイプとか。

「で、このDフォンの機能の一つに、『コードの読み取り』機能があります」

「コード……ああ、捨てられた人形にカメラを向けたら、何かを読み取った時のアレか?」

「え、どこでですか?」

「ヤシロちゃんにDフォン(これ)を渡された時。そこに人形があるから、って」

(あの時、何故だかカメラを人形に向けないといけないっていう気になったんだよな。
場所はちょうど校門のこの辺りだったな)

一之江にその辺りを指示して示す。
一之江は何かを考え込むような顔をして、唇に手を当てていた。

「……どうかしたか?」

「ヤシロさんが誰かにわざわざ干渉して、しかも最初に私に接続させた……?」

そして、俺の顔をマジマジと見上げてきた。見返してやると、一之江がやっぱり凄い美少女だというのがよく解った。
まつ毛は長いし、髪は綺麗だし肌は透き通っているし、頬は柔らかそうだし、鼻は小さいし、唇はピンク色で……って俺の馬鹿!
あまりジロジロと見るな。
ああ、遅かった……。

______ドクドクドクと血流が再び身体の芯に集まっていく。
一之江のあまりの美しさに思わず見惚れてしまった俺の血流は高まり、ヒステリアモードは強化された。

「このムッツリスケベにはやっぱり何かあるのでしょうか」

「ムッツリとは酷いな。君のような可愛い女性を拝みたい、愛でたいと思うのは自然な事だよ?」

「可愛い、とかどの口が言うのですか?」

「事実を言ってるだけだよ」

「なるほど……ムッツリではなくオープンエロリストだったのですね」

「嫌な呼び方だな、それは」

「性に関してフルオープンである。そういう意味です。
すぐに口説ことする貴方にはピッタリな呼び方ですね」

「……ムッツリの方がいいな、うん」

「最初からそう言ってください、全く」

何で俺、ディスられてんだ。
この屈服した気分。一之江はやはり一之江(ドS)だった。

「で、コードについて話しますよ」

「ああ、頼む」

「コードとは、『因果』の事です。因果とは簡単に言うと、出来事と出来事の結びつき、つまり『縁』みたいなものです」

ヤシロちゃんの説明でもあったが縁を繋ぐと言った感じなんだろうか。
聞いてみると______

「『縁』があればそれを『繋ぐ』って意味か?」

「ええ。モンジと因果関係にある『ロア』的な事象。つまり、貴方の百物語の一つかもしれない『縁』を読み取る事で、そのDフォンは貴方とロアを引き寄せます」

ちょっと入り組んだ会話だったので、まだ理解が追いつかないが俺と『縁』がある『ロア』と『百物語』の主人公である『俺』を『繋ぐ』物。
それが渡されたDフォンという事になる、という認識でいいのか?

そんな俺を察したのか、一之江は一瞬考えてから言葉を選んでくれる。

「例えば『棒』と『犬』をコードとして同時に読み取る事が出来るとしたら。貴方の前で犬が歩いて棒に当たるわけです」

つまりその棒と犬が、俺の前で『当たる』。
そういう因果で繋がっていたという意味なのか。

「基本的に『縁』があっても結ばれないのがこの世の常でしょう?Dフォンは、その『縁』をコードを読み取る事で結んでくれるのですよ」

コードを読み取れば俺と関わりのある『ロア』と自動的に結びつけてくれるのだとしたら、かなり楽だな。
多くの物語の主人公が『巻き込まれ型』であるのに対して、コードになる物を探す事で、俺は能動的にその『事件』を引き寄せたり出来ると言う事なんだろう。
俺は『百物語』の主人公のロアだから物語を最低でも『百個』集めないといけないらしいので『巻き込まれ型』だと全部集めるのにえらい時間がかかりすぎるからな。

「しかし、コード探しかあ……」

適当に周囲を見ても、反応するものは特にない。『ロア』的で『俺に因果がある物』でなければならないわけだが、そこら辺にありまくっても困る。
一之江みたいな『殺害系』のロアと因果がありまくるだとしたらそれはそれで対応に困る。

「ゲームみたいにその場所が解る、とかなら楽なんだけどね」

「そこまでシステマチックなゲームになると、簡単過ぎるかもしれませんよ」

「君はゲームはシビアな方が好きなタイプかな」

「無敵コマンドとか大好きです」

「それはシビアじゃないな⁉︎」

「中身のやり取りやストーリーを楽しむタイプなんですよ」

「名作って呼ばれるゲームはその辺りもいいからな」

「それに、ゲームはシビアで大変なのに、無敵で進むあの優越感ったらたまらないじゃないですか。こう、ボスを雑魚のように嬲り殺すみたいな」

「君は本当にドSだね」

「ありがとうございます」

「褒め言葉かな、今の」

「いずれ貴方も好きになりますって。責められるの」

「……君が断言すると本当になりそうで嫌だな」

「ふふふ……」

「うわぁ……」

「ま、ゲームトークはここまでにして、貴方のコードを探してみましょうか」

「俺の手伝いでいいのか?」

「ええ。コード探しに大変向いてる『主人公』ですからね。色々なロアに関わって行くうちに『ロア喰い』とも遭遇するでしょうし」

「確かにね……ちなみに一之江のロアだと、コードってどのくらい見つかるものなんだい?」

俺は『百物語の主人公』だから、残り九十九個と巡り遭う可能性が高いというのは解る。
だけど普通のハーフロアである一之江はどんなもんなんだろうか。

「超毎日街中を調べて、良くて一週間に1個。悪ければずっと見つかりませんね」

「……そんなにレアなのか」

「若者の人形離れが目立ちますからね」

「そんなレアなロアといきなり遭遇しちゃたのか、俺は」

「ええ。運の悪い事に私は女たらしの男と出会ってしまったわけです。
ですから今度からは慎重に襲わないといけませんね。いきなり抱きつかれますし」

「それは誤解だよ、瑞江」

「何が誤解ですか。あと名前で呼びましたね」

「君だから抱きつきたいと思ったんだ。
君を俺の物語にしたいと思ったから抱きついたんだよ」

「……貴方は真性の馬鹿ですね」

そう言って、頬を赤く染めて呟く一之江の姿はとても可愛いかったが、一之江が抱きつき行為(アレ)をとことん根に持った事はよく解った。
しかし、そんなレアなロアの一之江といきなり『縁』を結べたという事を考えると、確かに俺は『特別』なのかもしれないな。
『主人公補正』というのは便利だな。

「さて、与太話はここまでにして貴方と『縁がありそうな』コードを調べるとしましょう。
……夜坂学園に『花子さん』の噂はないですか?」

「『花子さん』?ああ、学校の怪談の?えーと……あったけなあー」

記憶にある『花子さん』の噂について記憶を探ると______あった。

「中学時代はあったよ」

一文字疾風が通っていた中学の部室棟……旧校舎に纏わる噂を思い出した。

「どこですか、その中学は」

「俺の家とこの学校の中間だよ」

「ではそちらに向かいましょう」

俺と一之江は、『花子さん』の噂がある俺の出身中学校に向かって歩き始めた。 
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