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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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―海馬ランドにて―

 
前書き
二年生編へのインターバル回。 

 
 さて、学期間の間にある休みにも家に帰らずにデュエル・アカデミアで暮らしていた俺は、無事に進級試験自体は終わったのだが、実はまだ二年生を名乗れない。

 その理由は単純明解。
まだ一年生が来ていないからにほかなら無い。
まだ長期休みであるのだから、当然と言えば当然なのだが……

 そこで俺が今いるのが、毎年デュエル・アカデミアの新入生候補の実技試験が行われる、海馬ランドだった。
しかし、俺たちのような高等部からの配属組の試験ではなく、万丈目や明日香が受けたであろう、デュエル・アカデミア中等部に入るための実技試験だ。

 ……そういえば聞いたところによると、明日香や万丈目たちの中等部組は、自分たちの同級生がどんなものかと、俺や三沢の実技試験を見物に来ていたらしい。
明日香と一緒に、どんなデュエリストが来るか、興味を持った亮も来ていたようだ。

 そこで、成績トップとして難なく試験を突破した三沢、最弱のテーマデッキたる【機械戦士】を駆り(ちなみに、シンクロモンスターが出た今でも、評価はあまり変わっていない)試験官を倒した俺、遅刻した後クロノス教諭に逆転勝ちした十代が、デュエル・アカデミアで噂になっていたらしいのだが……噂には疎いせいか、イマイチ良く知らなかった。

 ……少し話がズレてしまったが、俺は前回亮がいたらしい立ち見席で、せっかくの休みを享受せず、こんなところにいる同級生・先輩と共に試験を眺めていた。
座り席は、今回のデュエル・アカデミアの百人以上の受験生と先生方が並んでいるため、数少ない見物客の席はなかった。

 まあ、どの道そんな長居をする気は無いから良いのだけれど。
約一名のデュエルを見れば、それで帰るつもりだったのだが……その約一名のデュエルが、実技試験最後のデュエルだとは思ってなかったのだ。

 しかし、フィールドを見ると、二人の人物が立っていた。
どうやら、その俺の訪ね人のデュエルが始まるようだ。

「ではこれより、飛び級用の特別試験を開始する。緊張せず、いつも通りのデュエルをするように」

「はい!」

 飛び級用の特別試験は、通例として最後に回されると後で聞いた。
そして、そもそも、その難易度から、デュエル・アカデミアに飛び級してくる者が数年ぶりらしいということも……頑張れよ、レイ。

「これより特別番号、早乙女レイの実技試験を開始する!」

 先生とレイ、両者のデュエルディスクがセットし終わる。
先生の方は、デュエルコートと呼ばれる、クロノス教諭がつけているようなデュエルディスクで、それをつけているため、充分な実力者であるということが分かる。

『デュエル!』

先生LP4000

レイLP4000

「先攻は、受験者から行う」

「は、はい! ボクのターン、ドロー!」

 若干緊張した面もちで、レイがカードを引く。

「ボクは、《フォトン・サークラー》を守備表示で召喚!」

フォトン・サークラー
ATK1000
DEF1000


 光を放つ魔導師が、守備の態勢をとる。

「更に装備魔法《ミスト・ボディ》を、フォトン・サークラーに装備! カードを一枚伏せ、ターンエンド!」

「私のターン、ドロー!」

 先攻一ターン目、まずは守りを固めるレイに対し、先生はどうするか……?

「カードを三枚伏せ、ターンエンド」

「え? ボ、ボクのターン! ドロー!」

 思ってもみなかった光景だ。
先生は、カードを三枚伏せただけでターンエンドの宣言をした。
手札事故か、それとも……

「来て、私の恋のキューピット! 《恋する乙女》を召喚!」

恋する乙女
ATK400
DEF300

 レイのフェイバリットカードである、恋する乙女の登場に会場は驚きの後に失笑に包まれた。
微妙な戦闘破壊耐性、使いにくいコントロール奪取、低ステータス……明らかに使いにくいことから、やはり弱カードとして扱われているからだ。
去年の自分はこんな感じだったのか……
だが、去年の自分もプレッシャーに負けなかったように、レイも負けじと声を張り上げる。

「恋する乙女の力、見せてあげるんだから! フォトン・サークラーを攻撃表示にしてバトル!」


「やらせん! バトルフェイズに入る前に、リバースカードを二枚オープン! 《アポピスの化神》!」

アポピスの化神×2
ATK1600
DEF1800

 剣と盾を持った人型の蛇……メインフェイズのみにしか現れない、トラップモンスターが現れた。
あの先生のデッキは……なんだ?

「く……攻撃を中止して、ターンエンドだよ!」

「私のターン、ドロー!」

 レイのフィールドのモンスターは、恋する乙女にフォトン・サークラー……二体とも、ステータスは頼りない。

「このままバトルフェイズに入る! アポピスの化神二体で、恋する乙女に攻撃!」

 特別試験を担当するほどの先生が、恋する乙女の効果を覚えていない筈が無い。
乙女カウンターのことより、ダメージを優先したのであろう。

「ボクはリバースカード、オープン! 《ダメージ・ダイエット》! 受けるダメージを、半分にする!」

 レイの発動したカードは攻撃を止めるカードではなく、恋する乙女は、そのまま二体のアポピスの化神に斬りつけられた。

「きゃっ……!」

レイLP4000→2800

 レイと恋する乙女を、ダメージ・ダイエットによる薄いバリアが守り、ダメージを半分にした。
そして、恋する乙女の効果が発動する。

「恋する乙女は表側攻撃表示の時、戦闘では破壊されず、攻撃してきたモンスターに乙女カウンターを乗せるよ!」

 いくらトラップモンスターであろうと、モンスターはモンスター。
アポピスの化神二体に、乙女カウンターがのる。


「……ターンエンドだ」

「ボクのターン、ドロー!」

 依然として、先生のデッキは謎のまま……だが、レイの性格なら、ここは攻めにいくだろう。

「ボクは、フォトン・サークラーに《キューピット・キス》を、恋する乙女には《進化する人類》を装備するよ!」

恋する乙女
ATK400→2400

 恋する乙女には進化するエネルギーが、フォトン・サークラーにはキューピットが持つような弓矢が装備された。
レイのデッキも、俺と似たように装備魔法が多い。

「バトル! フォトン・サークラーで、アポピスの化神に攻撃!」

 光を放つ魔導師が持つ弓矢で攻撃するものの、あっさりと盾で弾かれて剣による反撃を食らう。
だがこれこそが、レイのデッキの初手。

レイLP2800→2500

「くっ……だけど、フォトン・サークラーの効果で戦闘ダメージは半分、装備されてるミスト・ボディで戦闘破壊はされない! そして、同じく装備されてるキューピット・キスの効果を発動! 乙女カウンターがのっているモンスターに戦闘ダメージを受けた場合、そのモンスターのコントロールを得る!」

 レイのテクニカルなデッキが回り始め、もう一度放たれたキューピッドの矢を受けたアポピスの化神のコントロールが、レイのフィールドに移る。
何度見ても、えげつない……

「そして、恋する乙女でアポピスの化神に攻撃! 乙女は、恋することで進化する! 秘めたる想い!」

 進化するエネルギーによって、攻撃力2400となった恋する乙女が、アポピスの化神に向かって体当たりをする。

「リバースカード、オープン! 《宮廷のしきたり》! 私のフィールドにある永続トラップは破壊されない!」

 永続トラップを破壊されないようにするトラップカード、宮廷のしきたり……そうか、トラップモンスターは永続トラップ扱いにもなる……!

「このトラップにより、私のアポピスの化神は戦闘破壊耐性を得る!」

「だけど、戦闘ダメージは受けてもらうよ!」

先生LP4000→3200

「メインフェイズ2にして、魔法カード《マジック・プランター》を発動! アポピスの化神を墓地に送って、二枚ドロー!」

 おそらくは《ディフェンス・メイデン》などの為に入っているのだろう、マジック・プランターで、先生のカードを墓地に送りつつ二枚ドローする。

「カードを一枚伏せ、ターンエンド!」

「私のターン、ドロー!」


 先生のデッキはなんとなくわかって来たものの、まだまだ未確定だ。
どんな手を打ってくるのか……?

「私は《ハリケーン》を発動! フィールドにある魔法・罠カードを全て手札に戻す!」

「チェーンしてトラップ発動! 《進入禁止!No Entry!!》! フィールドのモンスターを、全て守備表示にするよ!」

 竜巻がカードを吹き飛ばす前に、フォトン・サークラーと恋する乙女が守備表示となる。
先生の放ったハリケーンにも疑問が残るが、レイの進入禁止!No Entry!!にもわからない点がある。
これはもはや、デュエルをしている二人にしか分からない駆け引きなのだろう。

「恋する乙女には少し驚かされたが、このカードが来た時点で君の敗北だ! 永続魔法発動、《王家の神殿》!」

 先生の背後に、どこかエジプトを連想させる、黄金の神殿が現れる。

たかが中等部の試験に、なんて永続魔法使いやがるッ……!

「この永続魔法がある限り、私はトラップをセットしたターンに使うことが出来る! 現れろ、二体の《アポピスの化神》よ!」

アポピスの化神×2
ATK1600
DEF1800

 再び現れる蛇人間。
先程、ハリケーンで手札に加えた分に加え、まだ手札に一枚あったらしい。

「更にて永続トラップ《宮廷のしきたり》を発動し、通常魔法《手札抹殺》! 君のデッキのキーである装備魔法を、全て墓地に送ってもらう!」

 ハリケーンはそのためでもあったらしい。
これは俺の予想にすぎないが、先生のデッキは《宮廷のしきたり》とトラップモンスターの性質を利用した、【トラップモンスター】とも呼べば良いのであろうデッキ。
不死のトラップモンスターで攻めたて、劣る速効性は《王家の神殿》でカバーする……こんなデッキ、絶対に今までデュエルした覚えがない。

「バトル! 二体のアポピスの化神で、恋する乙女と、フォトン・サークラーに攻撃!」

 恋する乙女の戦闘破壊耐性は、表側攻撃表示の時のみにしか無く、フォトン・サークラーのミスト・ボディは既に墓地。
レイのフィールドはがら空きとなったが、レイの進入禁止!No Entry!!の発動のおかげで、戦闘ダメージは受けずにすむ。

「ターンエンドだ」

「くう……ボクのターン、ドロー!」

 悪い形勢を前にして、祈るようにカードを引く。

「ボクは《シャインエンジェル》を、守備表示で召喚!」

シャインエンジェル
ATK1400
DEF800

 レイの祈りが通じたのか、リクルーターである天使が現れる。
これなら、まだ耐えられる筈だ。

「カードを二枚伏せて、ターンエンド!」

「私のターン、ドロー!」

 デュエルコートからカードを手札に加え、そのまま発動する。

「セットしてすぐトラップ発動! 《毒蛇の供物》! 爬虫類族であるアポピスの化神をトリガーに、相手のシャインエンジェルと、リバースカードを一枚破壊する!」

 鳥獣族の《ゴットバードアタック》と同じく、手軽に2:2交換が出来るカードだ。
だが、先生のアポピスの化神は、宮廷のしきたりによって不死の能力を得ている……よって、破壊されるのはレイのカードのみだ。

 アポピスの化神により、レイのシャインエンジェルと、伏せてあった《光神化》が破壊される。

「そして、アポピスの化神でダイレクトアタック!」

「リバースカード、オープン! 《リビングデッドの呼び声》! 墓地からシャインエンジェルを特殊召喚!」

シャインエンジェル
ATK1400
DEF800

「そのままバトル! アポピスの化神で、シャインエンジェルに攻撃!」

レイLP2500→2300

 リビングデッドの呼び声で特殊召喚されるも、シャインエンジェルは即座に戦闘破壊される。
だが、シャインエンジェルは戦闘破壊されるのが仕事だ。

「シャインエンジェルが戦闘破壊されたことにより、シャインエンジェルを特殊召喚!」

「リクルーターでつなぐ気か……! アポピスの化神で、二体目のシャインエンジェルに攻撃!」

レイLP2300→2100

「きゃっ! だけど、更にシャインエンジェルを特殊召喚!」

「私はターンエンドだ」

 リビングデッドの呼び声と、シャインエンジェルのおかげで首の皮一枚つながったものの、劣勢には変わりがない。
恋する乙女を出したとしても、パーツは、新たに引き当てない限りは手札抹殺で墓地に行った……

「ボクのターン、ドロー!」

 レイも力強くカードを引くが、気合いで逆転のカードを引けたら苦労はしない。

「ボクはシャインエンジェルを守備表示にして、《コーリング・ノヴァ》を守備表示にしてターンエンド……」

コーリング・ノヴァ
ATK1400
DEF800

 新たに現れたのも、シャインエンジェルと同じくリクルーター。
シャインエンジェルに比べてリクルート出来る対象は少ないが、シャインエンジェルと相互にリクルート出来る。
これだけでも、デッキの圧縮と壁になることが出来る。

「私のターン、ドロー!」

 デュエルコートからカードをドローした先生が、引いたカードを見てニヤリと笑う。

「このカードの前では、リクルーターなど無駄なこととなることを教えてあげよう! アポピスの化神をリリースし、《聖獣セルケト》をアドバンス召喚!」

聖獣セルケト
ATK2500
DEF2000

 王家の神殿を守る天使……天使には見えないが……が現れる。
レベル6でありながら攻撃力は2500、更に破壊したモンスターを除外し、500ポイント攻撃力を上げる極悪モンスター……!

「聖なる神殿の守護神、これが聖獣セルケトだ! 更に、手札から《カース・オブ・スタチュー》を発動して召喚!」

カース・オブ・スタチュー
ATK1800
DEF1000

 新たなトラップモンスター、神殿を守る石像である、カース・オブ・スタチューが動きだす。

「行くぞ、バトルだ! 聖獣セルケトで、コーリング・ノヴァを攻撃!」

 聖獣セルケトがその鋏でコーリング・ノヴァを捕まえ、頭から食い始める。
……正直、見たくないぐらい気持ちが悪い。

聖獣セルケト
ATK2500→3000

「うう……ごめん、コーリング・ノヴァ……」

 守備表示であるため、もちろんレイにダメージは無い。
だが、精神的にダメージは与えていた。
……あの試験官、後でぶん殴ってやろうか……!

「まだまだ! アポピスの化神で、シャインエンジェルを攻撃!」

「シャインエンジェルの効果で、デッキから光属性モンスターを特殊召喚する! ……力を貸して、ボクの新しい仲間! 《スパイク・エッグ》!」

スパイク・エッグ
ATK800
DEF0

 スパイク・エッグ……!?
初めて見るレイのカードと、コーリング・ノヴァかマシュマロンかと思っていたための驚愕で、試験官の先生への恨みを忘れてデュエルに見入る。

 外見はただの卵であり、攻撃力も僅かに800。
どんな効果だ……?

「ぬっ……カース・オブ・スタチューで、スパイク・エッグに攻撃!」

「きゃああっ!」

レイLP2100→1000

 またも予想に反し何も起きず、スパイク・エッグは戦闘破壊され、戦闘破壊された後も何も起きない。

「どうやら、そのスパイク・エッグというモンスターは、ただのこけおどしだったようだな……だが、まだ私のターンは終わっていない!」

 先生もスパイク・エッグのことを知らなかったらしい。
そして、先生の叫びに呼応し、王家の神殿に聖獣セルケトが移動する。

「王家の神殿の効果! このカードと聖獣セルケトをリリースすることで、エクストラデッキからモンスターを一体特殊召喚出来る! 現れろ、《A・O・J ディサイシブ・アームズ》!」

A・O・J ディサイシブ・アームズ
ATK3300
DEF3300

 A・O・J ディサイシブ・アームズ……!
この前のパックで出た、光属性メタとシンクロがメインのシリーズカード《A・O・J》の最強モンスター。
そして、レイのデッキのメインモンスターは光属性……これで次のターン、壁モンスターで耐えきることも難しくなった。

「カードを一枚伏せ、私はターンエンド!」

 先生のフィールドには、大型モンスターであるA・O・J ディサイシブ・アームズに、不死のトラップモンスター、カース・オブ・スタチューにアポピスの化神。
対するレイのフィールドは、何もない。

「先生のエンドフェイズ時、墓地に送られたスパイク・エッグの効果を発動! 破壊されたターンのエンドフェイズ時、デッキから《ミスティック》と名の付くカードを手札に加えるよ!」

 デッキからカードを一枚加えるが、正直、空元気にしか見えないレイを見るのが辛い……
くそ、頑張れよ、レイ……!

「……こんなところで負けちゃいられない……! デュエル・アカデミアに合格して、一秒でも早く遊矢様たちに追いつくんだから! ボクのターン、ドロー!」

 俺に追いつく。
そんなことの為に、レイは必死になって頑張っている。
兄貴分として、先に諦めてどうする……俺。

「来た! あと、言ってなかったや……」

 ドローしたカードを手札に加えて、レイは宣言する。

「楽しんで勝たせてもらうよ! ボクは《ハリケーン》を発動!」

 宮廷のしきたりが関与するのは、あくまで破壊のみ。
手札に戻すハリケーンには無力だ。

「そして、《ミスティック・ベビー・ドラゴン》を召喚!」

ミスティック・ベビー・ドラゴン
ATK1200
DEF800

 またも俺の知らない、メルヘンチックにデフォルメされた小竜が現れる。

「そんな小型モンスターでは、私のA・O・J ディサイシブ・アームズには適わないぞ!」

「恋する乙女に、適わないものなんて無い! 通常魔法《ミスティック・レボリューション》を発動! ミスティック・ベビー・ドラゴンを墓地に送り、来て! 恋する乙女を守る竜! 《ミスティック・ドラゴン》!」

ミスティック・ドラゴン
ATK3600
DEF2000

 ミスティック・ベビー・ドラゴンがリリースされて現れたのは、メルヘンチックなところは変わらないものの、比べると圧倒的に巨大な緑色の竜……攻撃力は、A・O・J ディサイシブ・アームズを超えている!

「ミスティック・ドラゴンで、A・O・J ディサイシブ・アームズに攻撃! ミスティック・ブレス!」

 ミスティック・ドラゴンが放ったブレス攻撃に、巨大な機械が陥落する。

「ぬあっ!」

先生LP3200→2900

「やった! これでボクは、ターンエンド!」

「くっ……私のターン、ドロー!」

 ミスティック・ドラゴンの召喚により、レイが優位にたったものの、まだまだ先生のライフ・手札には余裕がある。

「私は通常魔法《強欲で謙虚な壺》を発動! もちろん手札に加えるのは《王家の神殿》。そして、そのまま発動!」

 先程、聖獣セルケトと共に墓地に送られた黄金の神殿が復活する。
これで、再び先生はトラップカードを手札から使える……!

「私は、先程手札に戻された《強制脱出装置》を発動! ミスティック・ドラゴンを手札に戻す!」

 強制脱出装置!
まずい、ここでミスティック・ドラゴンがいなくなれば、レイのフィールドはがら空きだ。
……が、俺の心配は杞憂に終わった。

 ミスティック・ドラゴンが放ったブレスが、先生の強制脱出装置を無効にしたのだ。

「トラップは、恋する乙女の専売特許! ミスティック・ドラゴンがフィールドにいる時、トラップの発動と効果を無効に出来る!」

「なん、だと……!?」

 相手のトラップを、実質無効にする強力な効果。
そして先生のデッキには、これ以上無いほど刺さるカードだった。

「……ターン、エンドだ……!」

「私のターン、ドロー!」

 もはや先生のフィールドに、レイのミスティック・ドラゴンを止める術はない。

「行っけぇ、ミスティック・ドラゴン! 先生にダイレクトアタック! ミスティック・ブレス!」

「ぐあああっ!」

先生LP2900→0

「やったあああっ!」

 レイの歓声を聞き届け、俺は静かに会場を出て行く。
……実はレイは、俺に飛び級の受験日だということを言っていない。
後で驚かせるつもりだったのであろうが……妹分の行動が読めないようでは、兄貴分失格だ。


 さて、もうすぐ新学期……どんなことが起きるか期待しつつ、俺はデュエル・アカデミアへと帰っていった。 
 

 
後書き
 さて、今回のデュエルは…何だったのでしょう?

 レイのデッキは、原作アニメで一度しか使わなかった、遊戯王の小説ではわりかし珍しい《ミスティック・ドラゴン》を採用させていただきました!
某本気制限のようなデッキにするのは嫌ですし、かといって、恋する乙女でデュエルが出来るほど、自分のデュエルタクティクスは良くありませんし。
効果は、未OCG化wikiに載っていた効果になっています。

光属性・消費カード二枚でデッキから特殊召喚・攻撃力3600・トラップ無効化……強すぎますね、はい。

 そして、先生のデッキ…なんでしょうね、アレは。
リシドのデッキをOCG化した感じでしょうか、強いて言えば。
中等部の特別試験を担当するようなエリート先生が、こんなデッキを使うか? と思いましたが、使ってみたいという誘惑に屈しました。
レイのミスティック・ドラゴンと相性が悪かっただけで、意外と遊矢とは良い勝負が出来そうな気はします。

では、感想・アドバイス待ってます。 
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