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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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第八話 フェイトとアリシア

 
前書き
別の題名を書こうとしましたが、思い付かず、同じに書いてしまいました。
はやて「リリカルアドベンチャー、始まるで!!」 

 
はやてという友人を得たフェイトは以前と比べて、余裕が出来たように思える。
今まで余裕が無いように見えた時を思えば、いい傾向である。
現在、大輔とフェイト、アルフ、ブイモンの4人は一カ所に集まっていた。
フェイトの手には土産のケーキがあった。
ブイモンの視線がケーキに向かっていたが、フェイトはその視線をかわす。
フェイト「それじゃあ大輔、ブイモン。準備はいい?」
大輔「いいぜ」
ブイモン[大丈夫だよ]
大輔とブイモンはフェイトの問いに頷いた。
フェイト「分かった。それじゃあ行くよ。」
大輔「頼む」
フェイト「次元転移。次元座標…」
フェイトの足元から魔法陣が現れる。
フェイト「開け、誘いの扉。時の庭園、テスタロッサの主の所へ!!」
大輔達4人はフェイトの母親がいる所に転移された。






























大輔「ここがフェイトの母さんがいる所なのか…」
大輔は辺りを見渡しながら呟いた。
フェイト「ブイモン、大丈夫?」
アルフ「どうしたんだい?」
フェイトとアルフの心配そうな声が聞こえて、後ろを見遣ると、ブイモンが尻餅をついていた。
大輔「どうしたんだよ?」
ブイモン[こ、腰が抜けちゃって…]
大輔の疑問にブイモンが情けない声を出す。
フェイト「どうしよう…」
大輔「仕方ない。フェイト、先に行ってろ。俺も直ぐに行くから」
フェイト「うん。分かった。先に行ってるね」
フェイトとアルフは先に母親の元に向かう。
ブイモン[ごめん大輔]
大輔「いいって」






























そしてしばらくして、ブイモンが動けるようになり、大輔はフェイトとアルフの元に向かおうとするが、肝心の場所を知らないため、ブイモンの鼻に頼ることに。
大輔「本当に此処で合ってるんだろうな?」
ブイモン[うん。俺の鼻に狂いはないよ…ん?]
鼻をひくつかせていたブイモンが眉を寄せる。
大輔「どうした?」
ブイモン[これ…血の臭い…?]
大輔「何?」
大輔がブイモンにもう1度聞こうとした時、扉の前でアルフの姿が見えた。
大輔「アルフ…?」
アルフ「大輔!!」
アルフは大輔の元に慌てて駆け寄る。
大輔「どうした?」
アルフ「お願いだよ!!フェイトを…フェイトを助けて!!」
大輔「っ!?」
大輔は扉の方を見ると、扉の向こうから何かを叩きつける音が聞こえる。
大輔はエクスブイモンの甲冑を身に纏うと、扉を破壊した。
そこにはボロボロになったフェイトが倒れていた。
大輔は直ぐさまフェイトに駆け寄った。
大輔「フェイト、しっかりしろ!フェイト!!」
フェイト「だ…大輔…?」
フェイトは大輔の名前を言うと意識を失った。
大輔「フェイト!!」
?「いきなり入って来るなんて、あなた何者?」
大輔が声に反応して顔を上げると、何処かフェイトに似ている女性が自分達を見下ろしていた。
大輔「…誰だ…?」
?「私の名はプレシア。大魔導師プレシア・テスタロッサよ。」
大輔「テスタロッサ…ということはあんたがフェイトの母親!?」
大輔は信じられないと言うかのように目を見開いた。
プレシア「そうよ。で?あなたは何者なの?」
大輔「俺は大輔。フェイトの仲間だ。どうしてこんなことを…」
プレシア「躾よ。」
大輔「躾だと!?」
ブイモン[ふざけるな!!これのどこが躾なんだ!!]
ブイモンがプレシアを睨み据えながら叫ぶがプレシアは意に介さない。
プレシア「この子はこの大魔導師プレシア・テスタロッサの娘。なのに回収してきたのはたったの6個。この程度の成果しかあげられないことを躾るのは当然よ。」
大輔「…あんた……フェイトが…この子がどんな思いでジュエルシードを集めているのか知らないのか…っ!?」
大輔の手が怒りで震えていた。
プレシア「さあ?そんな物、私の知ったことではないわ」
大輔「てめえ!!」
怒りが頂点に達し、フェイトをアルフとブイモンに預ける。
大輔「アルフ!ブイモン!!フェイトを連れて行け!!ここから離れろ!!」
アルフ「わ、分かったよ…大輔は?」
大輔「俺は…こいつをぶっ潰す!!」
ブイモン[大輔!!遠慮なんか要らないからな!!あんな奴ボコボコにしてしまえ!!]
大輔「言われるまでもねえ!!早く行け!!」
アルフとブイモンはフェイトを連れて、部屋から離れた。
気配が部屋から遠ざかったのを感じて、プレシアを睨み据えた。
大輔「始めようぜ」
大輔が手に蒼雷を纏わせながら言う。
プレシア「電気の魔力変換資質…成る程、少しは楽しめそうだけど…あなたが私を倒す?大魔導師であるこの私を?」
大輔「ああ、そうだ」
プレシア「フン…笑わせるんじゃないわよ!!」
大輔「サンダーボルト!!」
大輔とプレシアの電撃がぶつかり、相殺する。
プレシア「なかなかやるじゃない…」
相殺されたことに驚くが、プレシアは直ぐに冷静さを取り戻し、大輔に電撃を直撃させた。
プレシア「これでどうかしら?」
プレシアが余裕の笑みを浮かべながら言う。
大輔「残念、効かねえんだなこれが」
余裕の笑みを浮かべながら言う大輔にプレシアが驚愕した。
プレシア「ダメージを受けていない…いや、それどころか私の魔法を吸収している!!?」
大輔「この甲冑に電撃は効かねえ。ライトニングブレード!!」
電撃の刃を作り、プレシアに叩き込もうとする。
プレシアは咄嗟に杖で受け止める。
プレシア「っ…あなた、何者なの!?」
大輔「言ったろ?フェイトの仲間だってな!!」
もう片方の手に魔力刃を作り、プレシアに振り下ろすが、プレシアは咄嗟に後退してかわす。
大輔「サンダーボルト!!」
建物に影響が出ないように調整しながら雷撃を放つ。
煙が晴れると、障壁で拡散砲撃を防御しているプレシアの姿が僅かに見えた。
大輔「(腐っても大魔導師ってことか。どうにか外で戦うことが出来れば…)」
大輔は辺りを見回しながら呟いた。
最悪、壁を吹っ飛ばしてでも…。
大輔「ん?」
煙が少し晴れた際、大輔はプレシアの背後の壁に入り口があった。
大輔「(非常用の出口か?よし!!)」
大輔は煙が完全に晴れる前に背後の壁の入り口に入って行った。
プレシア「くっ!!」
それに気づいたプレシアが慌てて大輔を追い掛ける。































大輔は隠し通路を走り続ける。
そして奥である物を見た。
大輔「これは…フェイト!?」
カプセルのような物にはフェイトにそっくりな少女が入っていた。
大輔がカプセルに近づいて触れようとした瞬間。
プレシア「アリシアに近付かないで!!」
大輔「っ!!?」
追い掛けて来たプレシアの電撃弾の直撃を受け、ダメージは受けなかったが、それでもプレシアの方を向く。
大輔「何で…フェイトが2人…?」
プレシア「フェイトが2人?勘違いしないで、私の可愛いアリシアをあの人形と一緒にしないで」
大輔「人形だと!?」
プレシアの言い方に大輔の顔が怒りで歪んだ。
プレシアは構わず続ける。
プレシア「フェイト・テスタロッサは私が造った人造生命体。フェイトの名は当時のプロジェクトの名残よ」
大輔「何…!?」
プレシア「でも姿形は同じでも、あの子はアリシアではなかった。記憶を与えても無意味だった…。アリシアはもっと素直で明るくていい子だった…いつも私に笑顔を見せてくれた…」
大輔「当たり前だ。記憶を与えても、フェイトの心はフェイトの物だ。アリシアじゃない…」
プレシア「だから私はあんな出来そこないを棄ててアリシアを蘇らせる決意をしたのよ!!」
大輔はプレシアの言葉に急激に怒りが冷めていくのを感じた。大輔「最低だな」
プレシア「何ですって…?」
吐き捨てるように言う大輔にプレシアの表情が歪む。
大輔「確かに子供なら親が自分のために、頑張ってくれたのを喜ぶだろうな。けど、あんたのフェイトを人形扱いするようなやり方をアリシアが知ったらどう思う?」
プレシア「…………」
大輔「……“失望”だ。」
プレシア「…っ!!」
大輔「俺がアリシアの立場ならあんたを軽蔑する。あんたの話が本当ならフェイトはアリシアの妹みたいなもんだ。あんたがフェイトにしてきたことを知ったら、例え生き返ったとしてもあんたを軽蔑する。」
プレシア「………そんなはずはないわ。アリシアは…そんなこと…」
大輔「アリシアがフェイトと違って何の感情もない人形なら…だけどな。…あんたと話してあることが分かった。あんたは未来から逃げているだけだってことをな」
プレシア「何ですって…?」
プレシアの表情が歪むが大輔は続けて口を開く。
大輔「あんたは未来を恐れて過去に逃避しているだけだ。」
プレシア「黙りなさい…」
大輔「アリシアがそんなことを望まないということにも気づきもしないで…」
プレシア「黙れ…」
大輔「今のあんたを見てアリシアって娘が喜ぶと思ってんのかよ!?」
プレシア「黙りなさい!!」
大輔「っ!!」
プレシア「あなたに何が分かるというの!?大切な娘を理不尽な事故で失った私の気持ちが!!怒りの矛先も見つからない…。この気持ちがあなたに分かるというの!?」
大輔「…分かる!!」
プレシア「何ですって…?」
大輔「俺はあんたじゃないから、あんたの受けた痛みを苦しみを完全に知ることなんて出来ない…でも、あんたの立場になって考えて…理解することは出来る!!」
プレシア「……」
大輔「確かに大切な娘を失ったあんたに前を向けっていうのは酷だろうさ。でも、痛みに耐えて耐え抜いて、いつかは前を向かなきゃいけねえんだよ!!」
大輔の言葉に反論出来なくなったのかプレシアは俯いてしまった。
プレシア「……私は…」
プレシアが口を開こうとした時、プレシアは咳込んで膝をついた。
プレシア「…うっ、ゴホッゴホッ…!!」
大輔「プレシア…!?」
大輔は膝をついたプレシアに駆け寄る。
すると、床には紅い血が数滴落ちていた。
大輔「あんた…もしかして病気なのか…?」
プレシア「フッ…大魔導師でも不治の病にはどうしようもないのよ…」
プレシアが自嘲の笑みを浮かべた。
娘を失い、不治の病を患っているのならば、プレシアは狂気に身を任せるしかなかったのだろう。
大輔「……」
プレシア「…私を倒すなら今がチャンスよ……」
大輔「俺の力は…ただ敵を倒すため物じゃない。大切な人と…大切な人が信じるものを守るための力…それにあんたを倒せばフェイトが悲しむ。」
プレシアの電撃で傷付いた甲冑がたちまち、元通りになる。
甲冑の自己修復が終わると、甲冑を解除すると同時にここから出ようと足を動かす。
大輔がプレシアの横を通り過ぎようとした時、プレシアが口を開いた。
プレシア「大輔って言ったわね…」
大輔「ああ…」
プレシア「大輔…私は間違っていたの…?アリシアも未来も…何もかも失った私はどうすればよかったの…?」
本来ならまだ10歳の子供に聞くのはおかしい質問。
だが、プレシアはそこまで追い詰められていた。
大輔は1度目を閉じるが、しばらくして目を開き、重い口を開いた。
大輔「俺には分からない…でも、あんたにはアリシアの妹の…フェイトっていうもう1人の娘がいるだろ?」
プレシア「……」
大輔「頼む。最後まで諦めないでくれ。あんたには守る物があるだろ…?それに、過去を無かったことにするなんて誰にも出来ない。過去があるから人は明日を願うんだ。」
プレシア「過去があるから明日を…?」
大輔「そう。過去は変えられないけど…過去をバネにして自分の運命を変えることは出来る。どんなに可能性が低くても最後まで諦めたりなんかしなきゃいつかきっと運命は変わる。俺はそう信じてる…。今も…そして……多分これからも…。」
大輔はそう言うと今度こそ、この場を離れてフェイト達のいる場所に向かった。
プレシア「…運命……私はどうすれば…」
誰もいない隠し部屋にプレシアの声が悲しげに響いた。
脳裏を過ぎるのは…自分の娘の…アリシアと今まで人形と蔑んでいたフェイトであった。
プレシア「…アリシア………フェイト…」
プレシアは自分の娘達の名を…アリシアとフェイトの名を囁いた。
プレシアは今になって漸くフェイトを娘として認めることが出来たのだ。






























プレシアのいた玉座から離れた大輔はフェイト達の元に向かう。
庭園内部のことは何も知らないが、ただ、何となく、フェイト達の居場所が分かる気がした。
大輔は1つの部屋に入る。
そこにはアルフとブイモンと気を失ったままのフェイトがいた。
アルフ「大輔!!あいつは!?」
大輔「一応俺が勝った…多分、もうプレシアはフェイトに暴力は振るわないだろう。」
プレシアは自分の過ちに気付いた。
もうフェイトに虐待はしないだろう。
アルフ「本当かい?」
アルフが疑わしそうに大輔を見つめる。
大輔「ああ…後は…」
彼女の問題だ。
大輔は声に出さずに呟いた。
フェイト「ん…」
フェイトは身じろぎすると目をゆっくりと開いた。
大輔「目が覚めたか?」
フェイト「大輔……」
大輔「辛いならまだ寝ていろ。もう大丈夫だからな…」
気づいていないが、大輔はフェイトを見て、ヒカリに対して抱く感情を抱き始めていた。
しかし、どこかヒカリに対して抱く感情と少し違うような気がする。
大輔「(俺…ヒカリちゃんのこと、好きなんだよな…?)」
自分の気持ちが分からなくなってきた大輔は思わずフェイトの手を強く握り締める。
フェイト「大輔…?」
大輔「あ、ごめん…フェイト…お前は俺が守るからな、絶対に…」
何が何でもフェイトは守り通す。
大輔は心の中で誓った。






























そして時の庭園の空間の一部に極僅かな罅が入っていたことを大輔もブイモンもフェイトもアルフも…プレシアも気づかなかった。 
 

 
後書き
前作と違い、ヒカリに対しての感情に変化が出ています 
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