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元虐められっ子の学園生活

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人間関係の面倒くささ

憎しみの感情は人が必ず持つものである。
その感情を持つときこそ、自分が不愉快だと感じたときに起こる物だと思う。
それが人生の大半を閉めているのならば尚更だ。
そんな人間の原動力は憎しみであること間違いない。
だが人間はその感情を表に出そうとはしない。
何故ならそれが当たり前であり、普通だからだ。
なら表に出してしまう人間は何なのか。
答えは簡単。我慢できないほどに心が弱いのか、
若しくは我慢の限界であるかのどちらかだ。
自分は後者であると即答するだろう。
当たり前だ。私は中学時代の全てを棒に降るが如く我慢したのだから。
ならば俺はその現況を一生を賭けて許さないだろう。
何故ならそれが私と言う生き方なのだから。














俺、鳴滝 九十九は一人暮らしだ。
毎朝3時に起床し、朝食を軽く作る。
その後、新聞配達のバイトへ出かけ、終了と同時に一時帰宅。
制服に着替え、弁当に昼食用の具材を詰め込んで学校へと登校する。
それが俺の日課であり、一日の始まりとも言える。
そんな俺だが、一度だけ、バイトを中断せざるをえない状況を作り出してしまった。
配達中に事故に遭ったのだ。
偶然見かけた同い年位の少年が、路上に飛び出した犬を助けようと飛び出し、
そこに接近する車に跳ねられそうになるところ。
そこへ俺が庇おうと、少年をはねのけ、俺は撥ね飛ばされた。
結果だけを見るのなら、全員無事。
しかし、行程を見るのなら、助けた少年は右足を車に強く打ち付けて骨折。
俺は撥ね飛ばされた先にあった木に体を打ち付けて、軽い脳震盪と両手首捻挫をした。
割って入ったにも関わらず、自分だけ助かったような結果に罪悪感を覚え、
少年に謝りに行こうとするも、病室が分からず、
更には人にも聞けずに諦める他なかった。
今ではその事だけが気掛かりで、毎朝配達をしながらあの時の少年を探すのが日課の一部に加わっているのだ。

「…はぁ」

恐らくながら、彼は俺を恨んでいるだろう。
少なくとも彼の骨折は俺のせいなのだから。
もしも彼が望むのなら、金なり謝罪なりを精一杯させてもらう所存だ。
とは言え、会えていないのもまた事実。
いつか会えると信じた矢先のこの部活でまさかの再開である。
しかし彼は知らない、または覚えていないのか、俺の事は不良だと言うことしか知らないらしい。
実際は違うのだが。
だからこそ言うことが出来ないでいた。
罪悪感は勿論ある。
しかし、それ以上に恐怖が閉めているのだ。
何が怖いのかは察してほしい。
例を挙げるのなら『どの面下げて』と言うやつだ。
何分初めての事項で、どう対処すればいいのか分からない。
普通慣れていることでも無いのだが。
最近は彼に会うたびにその話題を挙げようとする。
しかし、喉の手前で止まる。
やはり俺にはまともな人生は歩めないのだと再認識したその日の出来事だった。















"ガラッ"

「おう比企谷、お疲れさん」

「…よう」

奉仕部部室。
毎度のように無言で入室する比企谷にそれまた毎度のように挨拶をする俺。
最近、俺は比企谷のフォロー役となっている気がするのが否めない。

「…会わなかったの?」

「誰とだよ」

雪ノ下が比企谷に問いかける。

"ガラッ"

「あー!いたー!」

「な、何だよ」

突然扉を開けて入ってきた由比ヶ浜に驚きながら、
比企谷は返答を返した。

「お前が中々ここに来なかったらな」

「探しにいっていたのよ。由比ヶ浜さんが」

「その倒置法で自分は違いますからアピール要らねぇから。知ってるから」

「俺はそんなつもりないからな。因みに俺はついさっき来たばかりだ」

そう。
俺は職員室に呼び出されており、部室に来るのが遅れている。

「わざわざ聞いて歩いたんだからね!
そしたら皆『比企谷?誰?』って言うし…超大変だったんだからね!」

因みに俺も探されていた。
俺の場合、由比ヶ浜は真っ先に心配されたらしい。
主に暴行を受けないかとかで…。

「わ、悪かったよ」

「べ、別に…いいんだけどさ…。
だから…その…携帯教えて!
ほ、ほら!わざわざ聞いて回るのおかしいし!恥ずかしいし!
…どんな関係って聞かれるとか……あり得ないし…」

「別に良いけどよ…ほれ」

そう言って何やら薄い機械?を手渡す比企谷。

「あれ?確か携帯ってこう…開くやつじゃ無いのか?
ほら、ボタンがあって、文字が打てる小さい受話器みたいなやつ」

「お前は昭和のじいさんかよ…。
これはスマートフォンっつってだな…。
お前の言っている形の最新型みたいなもんだ」

「へぇ…難しそうだな」

「そうでもねぇよ……つーか今の会話からしてお前、携帯持ってないのか?」

「ふっ。俺はそんな電子機器に金銭を巻き上げられる失態は犯さない。
俺は知っているぞ比企谷。
それは俗に言う裕福な家庭を持つ者が持つ、言わば排水溝の延長線上の物だと言うことはな!」

そんな大切なお金を通話した瞬間に何千円と消費するドブを好んで使うなど愚の骨頂。
俺はそうやって騙された人を知っている。
婆さんがそうだったし…。
あの時は大変だったなぁ…。

「いやいやお前。それ大分前の話だろうが。
今は契約したときにコースとか選んで設定とか出来るんだぞ。
ふざけたことをしなければ月に払うかねなんて五千円以下だ。
因みに俺は月々2800円位だ」

「馬鹿なことを言うな!
婆さんは10万程をかっ拐われる事件を起こしたんだぞ!
あの時はどれだけ大変だったか!」

「だから時代がかわってんだよ!
今じゃそんなこと全くないからな!」

「なん……だと!」

ならあの時の苦労は一体何だったんだ…。
1ヶ月間ご飯と味噌汁しかない生活を送ったあの頃の苦しさは…。

「はいヒッキー。一応登録しといた」

「おう………うわ…(何これ?登録名が出会い系のスパムメール見たいになってんぞ…)」

何故だかは知らないが、由比ヶ浜から返された携帯を見て比企谷は軽く引いているように見えた。

「あ……うわ…」

「どうかしたの?」

携帯を開いた由比ヶ浜が、急に暗い顔をしだす。
どうやら何かしらの嫌なことがあったと推測する。

「ううん。ちょっと変なメールが来ただけ」

確信。嫌なことだった。

「比企谷くん。
裁判沙汰になりたくなければ今後そう言う卑猥な行為は止めておきなさい」

「真っ先に比企谷を疑いにかける雪ノ下は本当に鬼畜だな」

「内容がセクハラ前提で、しかも犯人扱い…。
証拠を出せ証拠を」

「その言葉が証拠と言っても良いわね」

「っ!?」

まて、その表情は何故分かったっていう顔だぞ。
比企谷…お前…。

「犯人の台詞なんて決まっているのよ。
『証拠はどこにあるんだ』『大した推理だ。君は小説家になったほうがいいんじゃないか』
『殺人鬼と一緒の部屋になんか居られるか』…」

「最後、寧ろ被害者の台詞だろ。死亡フラグも良いところだ」

「そうだったかしら…」

よくあるよね、こう言う罪を認めさせるような言い回し。
そう言うときに決まって犯人扱いされたやつは実は違いました~なんてオチに繋がるんだよな。

「いやぁ、ヒッキーは犯人じゃないと思うよ」

「…証拠は?」

おい、お前も言ってるぞ。

「んー、なんちゅーかさ、内容がうちのクラスの事なんだよね。
だからヒッキーは無関係と言うか!」

「おい、俺も同じクラスなんだけど…」

比企谷、哀れ…。

「成る程。じゃあ比企谷くんは犯人じゃないわね」

「証拠能力認めちゃったしよぉ…」

「なら鳴滝くん…………は違ったわね」

「分かってて言い欠けるの辞めてくれる?
ちょっとドキッとしちゃったじゃん」

「あら、思い当たる節でもあるのかしら」

「ふざけんな。
俺にだって理想の女性像ってのがあるんだよ!
間違っても由比ヶ浜には該当しない!」

家庭的で?料理が俺並みかそれ以上?
口煩くなくて?親切で清楚で?
あとあと…美人とか?

「敢えて貴方の理想は聴かないことにするわ」

「そうしてくれ」

「だが俺は聞く。
鳴滝、どんな人?」

おっと比企谷くん。
なかなか突っ込んでくるねぇ。

「家庭的で料理は俺並みかそれ以上。
親切で清楚で口煩くなくて…あと美人だと良い」

「理想高すぎだろ…」

「まぁ理想と現実は大分違うって遥か昔から分かりきっている。
だが理想を持つだけならただだからな」

「まぁそうだが」

まぁそんな女性は殆どいない。
いたら逆にビビる。

「と、兎に角。こう言うのたまにあるからさ。
もう気にしないようにするよ」

"コンコン" "ガララッ"

由比ヶ浜が言い終わった直後に扉がノックされ、一人の男子生徒が入ってきた。

「………まるでタイミングを読んだかの登場だなクソッタレ」

入ってきたのは葉山隼人。
俺が小声だったのか、聞こえていなかったようでマイペースに接近してくる。

「奉仕部ってここで良いんだよね?」

「えぇ…ハハハ…」

葉山のスマイルに釣られるように笑う比企谷。
恥じることはない。
ソイツと話すやつの大半が釣られて笑うのだ。
忌々しいことこの上ない。

「平塚先生から悩みを相談するならここだって教えてもらったんだけど、
いやー、中々部活を抜けられなくって…」

「あーもうウザイカスいキツイ臭い。
さっさと用件言って消えてなくなれ」

「…悪かったよ。
えっと…これなんだけどさ…」

そう言って携帯を取り出し、由比ヶ浜に見せる葉山。

「あ…変なメール……」

俺達を代表するかのように、雪ノ下がそのメールを読み上げる。

「『戸部は稲毛のヤンキー。西高でヤンキー狩り』
『大和は3股。最低の屑野郎』
『大岡はラフプレーで相手選手のエース潰し』
チェーンメールね」

「これが出回ってからクラスの雰囲気が悪くってさ。
それに友達の事を悪く書かれていれば腹も立つし…あぁ、でも犯人探しがしたいんじゃないんだ。
丸く納める方法を知りたい。頼めるかな?」

言い終わるが早いか、ニッコリ笑う葉山。

「腹が立つとか言った側からニコニコ笑ってんじゃねえぞ」

「でた…必殺技、ザ・ゾーン…」

ザ・ゾーン?

小声で言ったその言葉は比企谷から発せられた。
聞こえたのは俺だけの様で、葉山は俺の言葉に顔をしかめている。

「(比企谷、ザ・ゾーンって何だ?」

「(説明しよう。
ザ・ゾーンとは、真にリアルが充実した者のみが持ちうる固有スキルで、
その最大の特徴は場を整えることにある。
彼らはリアルが充実しているために見下されがちな者にも優しい、
カリスマ性を有する良い人が持つ独特の空気間なんだ」

「(成る程、だが比企谷。
お前、二次小説とか知ってるか?」

「(ああ、ネットにある素人投稿のあれだろ?」

「(そこにさ、ニコポって用語があるだろ?」

「(ニコポ……っ!まさか!」

「(ああ。アイツは男女構わずにあの笑顔を振り撒く。
もしかしたら…いや、もしかしなくてもそう言う趣味や嗜好があるかもしれない…」

「「(…掘られる!」」

俺と比企谷は二人して尻を押さえる。
結論…葉山隼人はホモ、若しくは両刀。

「…詰まり、事態の収集を図れば良いのね?」

「う、うん。そう言うことだね」

「なら、犯人を探すしか無いわね」

「うん!よろし……え?何でそうなるの?」

「チェーンメール。
あれは人の尊厳を踏みにじる最低の行為よ。
自分の顔や名前を出さず、ただ人を傷つけるために誹謗中傷の限りを尽くす。
止めるならその大本の根元を根絶やしにするしか効果はないわ。
ソースは私」

「実体験かよ…」

「根絶やしにしたんだ…」

雪ノ下も雪ノ下でそう言った虐めにあってきたようだ。
今度からもう少し当たりを弱くしてやろう。

「兎に角、そんな人間は確実に滅ぼすべきだわ。
それが私の流儀。
私は犯人を探すわ。一言言うだけでパッタリ終わると思うわ。
その後どうするかは貴方の最良に任せる…それで構わないかしら?」

「あ、あぁ…それで良いよ…」

妥協したのか?
て言うかやっぱ心のそこから心配している訳じゃないな。
そうでないのなら食い付く筈だし。

「メールが送られ始めたのは何時から?」

「…確か先週末からだよな?」

「うん…」

「先週末…あぁ、そう言うことか」

「え?分かったの?」

「何お前、探偵?」

比企谷が俺の言葉に何故か引いた感をだす。

「大体のグループでは仲良くがモットーになっている節がある。
ではそこにそのグループ以下の人数でグループを作る場合、確実に誰かが溢れることは自明の理。
もしもそこに『自分以外の誰かが』なんて考えが浮き出たとするのなら?」

「……グループ……班?…職場見学か!」

「正解だ。
まあそんなちんけな班決めで内輪揉めを起こすのなら、
程度の浅いグループだったって事だろ。
何とも浅い友情なのかねぇ?」

「…確かにこう言うイベント事のグループ分けは今後の関係性に関わるからね…。
ナイーブになる人もいるんだよ…」

「職場見学のグループは三人一組。
四人から三人選ぶんだから、一人は必ずハブになる。
当然誰かを蹴落とすよな」

「じゃあ、その三人の中に犯人がいると見て間違いないわね」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

今度は何だよ。
また話の腰を折るような発言か?
いい加減にしとけよ腐れ外道…。

「俺はアイツ等の中に犯人が居るなんて思いたくない。
三人の事を悪くいうメールなんだぜ?
アイツ等は違うんじゃないか?」

お前の脳内は花畑か。

「馬鹿かお前は…。
そんなの自分に疑いが掛からないようにするために決まってるだろうが。
もっとも、俺なら敢えて一人だけ何も言わないでそいつに罪を被せるけどな」

「ヒッキー、すこぶる最低だ…」

「知能犯と呼べ」

「俺なら誰か一人を精神的に追い詰めて当日出席出来ないようにするな」

「鳴滝…その手もあったか…」

「二人して最低だ…」

まぁ、冗談なんだが。
しかし、小学生辺りが考えそうな幼稚な手だな。
看破なんて割りと簡単だろうに。

「…取り敢えず、その三人の事を教えてもらえるかしら?」

「うん…戸部は見た目悪そうに見えるけど、一番ノリの良いムードメーカーだな。
イベント事にも積極的に動いてくれる。良いやつだよ」

「騒ぐだけしか脳がないお調子者…と言うことね」

葉山の説明に饒舌なメモを取る雪ノ下。
あの変なしゃべり方のヤツか…。
アイツ騒ぐだけで人の迷惑考えないから嫌いなんだよね。

「…どうしたの?続けて」

「や、大和は冷静で人の話をよく聞いてくれる。
ゆっくりマイペースで安心させてくれるって言うのかな…良いやつだよ」

「反応が鈍い上に優柔不断…と」

あの体格の大きいヤツか?
何か騒ぎの助長してるようにしか思えない奴だよな。

「大岡は人懐っこくて、いつも誰かの見方をしてくれる。
気の良い性格だ。良いや「人の顔色を伺う風見鶏…ね」…だ…よ……」

「最早誰でもやりそうな回答である。
て言うか庇い過ぎだろ…やっぱりホモなのか?」

「葉山くん、人の趣味はそれぞれだけどその趣味はどうかと思うわ」

「ち、違う!俺にそんな趣味はないよ!
俺は普通に女の子が好きだ!」

「今度はプレイボーイな発言。
最早救いようがない」

「そんな……由美子かわいそう…」

「いや、そう言うことじゃなくて…」

何だか話が脱線してきたぞ。
このまま依頼は無しの方向に向かないだろうか?

「取り敢えず葉山くんの説明だけじゃ分からないわね。
由比ヶ浜さん、情報集めをお願いできないかしら?」

「え?うん…出来るかな?」

あ、やっぱりやるんだ。
て言うか俺その三人の事知らないんだけど。
精々放課で騒いでる程度にしか認識がないな。

「こいつが何かの用事を作って当欠するのが良いと思う」

「それだと本末転倒よ。
根本的な解決にはならないわ」

「ならこいつが怪我をしてグループ全員が当欠」

「却下」

「こいつがクラスで嫌われものになる」

「無理だな」

悉く却下を示される俺の意見は、言う旅に葉山の顔をしかめさせた。

「いや、出来るだろ。
例えば…全員の前で女子のスカート捲るとか?」

「そんなことできるはずないだろ!」

「いや、さすがに冗談だから」

何でそんなにむきになるの?
まぁやってくれるなら確実に変態のレッテルを張られることになるけどさ。












「……」

2年F組教室。
あの後、雪ノ下から件の3人を知るために情報を集めろと指示を受けた。
俺としては、情報集め事態はやることに遺憾はない。
だが葉山の依頼のためと言われるとやる気が上がるどころか落下する勢いだ。

「あいも変わらず喧しい…」

葉山のグループはいつも通り騒ぎ、後列の空間を目立たせている。
やれ葉山が将来を見据えている。
やれこれからは真面目系だ。
やれ少年の心を忘れたらヤバい。

あの野郎に限っては、何処へ行こうとも親の仕事を継ぐだろうことが目に見えている。
そして真面目系だと発言をするのなら、今すぐにでも勉強しやがれと言ってやりたい。
あと少年の心以前に落ち着きをもて馬鹿野郎。

「…はぁ」

その日の昼休み。
俺はこれと言った情報を集めることができなかった。








「で、何かわかったのかしら」

放課後、部室にて比企谷が「謎はすべて解けた」と豪語し、
今回の件に関わっている5人が部室へと集まった。

「犯人については分からん。だが一つ分かったことがある。
あのグループは葉山のグループってことだ」

「…あぁ、そゆこと…」

「はぁ?今更なに言ってんの?」

「えっと…どういう意味?」

まぁ理解できないのは分かってた。

「言い方が悪かった。
つまり、葉山の為のモノって意味だ」

「別に…そんなことないと思うけど」

「葉山、お前はお前が居ないときの3人を見たことがあるか?」

「あ、いや…無い…けど」

「アイツ等は三人だけの時は全然仲良くない。
分かりやすく言えば、アイツらにとって葉山は『友達』で、
それ以外の奴は『友達の友達』なんだよ」

「あっさ。関係浅」

「それ凄い分かる。
会話を回してる中心の人が居ないと気まずくなって携帯弄っちゃう」

「仮に貴方の言うことが本当だったとして、
3人の犯行動機の補強にしかならないわ。
犯人を突き止めない限り、事態は終息しないと思うのだけど」

どんだけ犯人突き止めたいんだよ。
拷問とか尋問とかしたくてたまらない人?
普段の饒舌ってこう言う場で生かされるんだなぁ…。

「葉山、お前が望むのなら穏便に解決することが出来るぞ。
犯人を探す必要もなく、これ以上揉めることもなく、
あの三人が仲良くなれるかもしれない方法が」

「……なぁ比企谷。
それってコレを班決めから外す方法か?」

「ぐ、やるな鳴滝。
その通りだ」

何でダメージ受けてんの?
俺何もしてないよね?

「そう言う鳴滝君は何か別の案があるのかしら?
と言うか、貴方は何か情報があるのかしら?」

「何でそんなに喧嘩腰なの?
…まぁ強いて言うなら五月蝿かった。喧しかった。
教室に居るのがいつも以上に苦痛だった」

「そんなに五月蝿かったんだ…」

「まぁ方法と言うなら…比企谷の意見と近い。
コレが全員+αで行く」

「…頭大丈夫?」

雪ノ下が俺の頭を心配…してないな。
どうやら感にさわった様だが、最後まで聞かないうちから罵倒するのは如何なものか?

「お前こそ大丈夫かよ。
そんなに犯人撲滅したいの?」

「あら、そんなことは言ってないわ。
私は犯人を探すしか無いと言っているだけよ」

その後どうするのか言わない時点でもう予想が出来るんだが…。

「そもそも班決めの人数は3人一組。
そしてコレのグループの人数は見積もって4人。
なら二班に各々で入り、グループ外の奴を誘って同じ場所へいけば問題はないはずだ」

「ああ!そっか!その手があったんだ!」

「だがその場合、葉山のグループに強制参加させられるんじゃないのか?
俺は正直御免だな」

「俺だって御免だ。
だが、こう言った方法もあるのだと、頭の片隅の奥の奥に置いとけば良い」

「それ遠回しに忘れろって言ってない?」

「どうだろうな?」

俺としてはこいつに俺の意見が採用されるのが嫌なだけだ。

「……わかった。参考にしてみるよ」

「参考にするなら丸パクリは止めてくれよ」

「……ヒキタニ君の意見でやらせてもらうよ」

「あっそ」

「「「………」」」













そんな経緯があって、葉山の依頼は終了した。
後日、葉山は件の3人に「一緒にいかない」と断りを伝え、
最終的にあの3人が仲良くなると言う結果となった。

「なぁ、鳴滝」

「ん?どした」

窓際で外をぼーっと眺めていると、比企谷が話しかけてきた。

「お前はどこに行くのか決めたのか?」

「俺は当欠するから関係ないぞ」

「へ?何かあるのか?」

「んー……まぁな」

「っ…そうか」

…どうやら比企谷は俺の考えていることを察したようだ。
流石は人間観察がうまいだけのことはある。

「まぁ、確り行ってこいよ」

「おう」

それっきり俺達は会話をせず、チャイムがなるまで二人して外を見てぼーっとするのだった。 
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