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ロックマンX~5つの希望~

作者:setuna
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最終話 天より他に知る者もなく

 
前書き
エピローグです。 

 
ルミネとの戦いから帰還したエックス達は、アクセルを含めて全員が集中治療室行きとなった。
特にエックスとゼロのダメージはルインとルナより酷く、特にゼロは全身に包帯を巻かれるハメになった。

ゲイト「やれやれ…もしかして君達より女性陣の方が強いんじゃない?しっかりして欲しいもんだね」

ゲイトが溜め息混じりに言うと、見舞いに来たエイリアとアイリス、レイヤー、パレットがクスクスと笑い、ゼロがギロリとゲイトを睨みつけ、エックスは苦笑していた。








































そしてアクセルとルナの部屋では、アクセルが寝ているベッドの隣でルナがアクセルがいつ起きてもいいように林檎を剥いていた。

アクセル「あ、ルナ……おはよう」

果物ナイフを思わず指に刺しそうになったけれども、何とか刺さずにすんだ。

ルナ「おはよう、アクセル。気分はどうだ?」

アクセル「うん、とても気分がいいよ。ここは僕達の部屋?」

ルナ「ああ」

アクセル「帰ってこれたんだ…」

ルナ「ああ、お帰り。本当によかったよ…」

アクセル「ルナ…」

大人びた微笑を浮かべるアクセルにルナは思わず、顔を赤らめる。
2人の間に穏やかな沈黙が降りる。
ただ2人で一緒にいるだけなのに、とても安らかで、でも少し心がざわざわしたりするが、とても心地好い。
その時、アクセルの腹が空腹を訴える。
無理もない。
ハンターベースに戻ってからも数日も寝ていたのだから。

アクセル「…あはは、ルナ。何か食べるものない?」

ルナ「こんなのでいいならあるぞ?」

切ったばかりの兎カットの林檎を手渡した。

アクセル「あ、兎林檎。器用だね」

ルナ「まあな。」

しばらくしてアクセルは林檎を全部食べた。
空腹を満たしたアクセルがご馳走様と言うと互いに笑い合うのだった。
それから3日が過ぎた。
穏やかな晴天が、世界を見守るように広がる。
ったな」





































研究室では、ゲイトは非常にやる気なさげな表情をしており、エイリアは苦笑している。
彼の視線は厚みのある書類に注がれている。
アクセルが消えた前後の分析データ。

ゲイト「メモリが復旧するなんて…反則だろう」

ソフト的にはともかく、中心に穴を空けたメモリが、物理的に回復するなんて有り得なかった。
ソフト的でさえ、ゼロやルインの例外を除けば皆無と言っていい。

エイリア「……奇跡が起きたのよ」

ゲイト「エイリア。君は奇跡なんて信じているのかい?」

エイリア「エックス達といれば自然と信じられるようになるわよゲイト。」

ゲイト「あれは奇跡じゃなくて目茶苦茶って言うんだよ」

不満そうに文句を言うゲイトの表情は言葉とは裏腹にとても優しげである。




































エックスとルインは少ない休憩時間を共に過ごしていた。
快晴の空の下、ハンターベースに設けられた公園を歩いている。

エックス「今回は…本当にありがとう。迷惑をかけてすまなかった」

ルイン「ううん…気にしないで」

エックスの謝罪にルインはやんわりと否定する。
仲間を支えるリーダーとして、辛い戦いを強いられたが、これまで微塵も表に出さなかった彼女。
エックスはそんなルインに対して複雑な表情を浮かべた。
彼女にこれ以上辛い思いはさせないと胸に誓う。

エックス「アクセルのこと…ルナには辛い思いをさせてしまった…」

ルイン「………」

エックス「俺はアクセルを撃てなくて、あの時は結局、ルナが彼を撃った。ああすることで彼女はアクセルを救ったんだ。引き金を引くのを躊躇うなと言いながら…情けない」

ルイン「エックス…」

エックス「でも…俺は思うんだ。あの時、ルナが撃ってくれたからアクセルは戻って来れたって、彼女の願い、彼を返してくれた。」

翡翠の目が、空を仰ぐ。
まるで大気圏の向こうにある戦場を見据えるように。
ルインはエックスと並び、空をじっと見つめる。

ルイン「エックス…」

エックス「何だ?」

ルイン「お疲れ様」

エックス「ああ…」

胸に飛び込んだルインにエックスは、優しく彼女を両腕で包み込んだ。






































ゼロ達が一行の中で1番変化がない。
今日も今日とてゼロはミッションに勤しみ、アイリスとレイヤーはオペレートを頑張っている。

レイヤー『ゼロさん、お気をつけて』

アイリス『無理をしないでね?』

ゼロ「ああ、分かっている」

淡々とした口調だが、2人は満足である。
レイヤーは出来ればまた共に戦いと思うが、それは望み過ぎだろう。

ゼロ「レイヤー、アイリス。指示をくれ」

アイリス『はい』

レイヤー『分かりました』

そしてゼロの唐突な一言により、レイヤーの思考がピタリと止まる。

ゼロ「アイリス、レイヤー。オペレート、感謝する」

レイヤー『!!?』

アイリス『ふふ…レイヤーったら…ありがとうゼロ』

茹蛸の如く真っ赤に、直後頭から湯気がポワンと浮いたのを見たアイリスはクスクスと笑った。

ゼロ「レイヤー…レイヤー?」

アイリス『レイヤー、ゼロが呼んでるわよ?』

からかうような口調で言うとレイヤーはあたふたとしながら口を開いた。

レイヤー『あ、いえ、そのっ!!ななな何でもありません!!』

それは傍から見てもとても滑稽であった。





































アクセルとルナは休暇を取っていた。
アクセルはまだ本調子ではないために、思い切って休みにしたのだ。
アクセルは大丈夫と言っていたが、ルナを筆頭にエックス、ルイン、ゼロ、エイリア、アイリス、レイヤー、パレット、シグナス、ゲイト達から即駄目出しを受けた。
結局全員に押し切られて2人仲良く休みとなったのだ。




































現在ルナはアクセルと共に外出していた。
2人の間の空気はとても優しい。
行き先はアクセルがお気に入りの場所として、仲間に内緒にしていた向日葵畑である。

ルナ「わあ…」

ルナが思わず魅入る。
アクセルは得意気に笑うと、やがで懐かしむように遠くを見つめた。

アクセル「まだレッドが生きていた頃…1度だけ連れてってもらったんだ。あの頃も今みたいに向日葵が咲いていてね。ハンターになっても、時々ここに来てたんだ。レッドとの思い出の場所だから…今までは僕が独り占めしてたんだ…初めて誰かをここに連れてきたんだ。此処に連れてきたのはルナが最初」

ルナ「え…?」

その言葉にルナは思わずドキリとした。
アクセルは思い出す。
自分が天国に行く間際の出来事を。

アクセル「あれから…レッドといたんだけど、やっぱり戻らなきゃって思い直したんだ。だって僕、まだまだルナや皆といたいから」

ルナ「…………」

アクセル「シグマに捕まって…色々あって君との記憶も1度は失ったけど、何とか思い出せたよ。忘れないって約束したからね」

ルナ「ああ…」

並んで向日葵畑を眺めるアクセルは、彼女がよく知るアクセルである。
しかし同時にアクセルの中に、大人びた雰囲気を感じていた。
アクセルは失われた記憶を取り戻したはず。
悪しき科学者達に造られた新世代型レプリロイド。
エックスとゼロを殺すという使命も。
アクセルがまた遠くに行ってしまうような気がして、ルナは思わずこう呟いていた。

ルナ「アクセル…お前は…」

アクセル「ルナ」

ルナ「?」

人差し指でルナの口を止めるアクセルに目を見開く。

アクセル「ルナの…本当の口調で話してくれない?」

ルナ「へ?」

アクセル「今までのは、本当の口調じゃなくて、本当は月で見せてくれたのが本当の口調でしょ?」

ルナ「え?あ、そ、それは…」

意識だったために気づいてなかったが、思い出すと一気に顔が熱くなる。
ジャンク屋になって以来全く使っていない自分の本来の口調。

アクセル「僕は…本当のルナと話したい」

アクセルの表情にからかいはない。
本心であることを悟り、ルナは赤面しながら頷いた。

ルナ「う、うん…分かったよアクセル」

アクセル「それで?何なの?」

アクセルが先程ルナが言おうとした言葉が気になり、彼女に尋ねる。

ルナ「アクセル…ずっと…ずっと一緒だよね?私の前から…いなくなったり…しない…よね?」

アクセルは一瞬、面食らったような顔をしたが、次の瞬間優しく微笑んだ。

アクセル「当たり前じゃない」

ルナ「…っ」

息を呑むほどに優しく、暖かい笑顔。
吸い込まれるように見つめていた彼女にアクセルの手がそっと差し出される。

アクセル「行こう」

ルナに向けてゆっくりと差し出されたアクセルの手。

ルナ「…うん」

ルナは自分より少し大きいアクセルのその手をしっかりと握り返す。

ルナ「…アクセル…大好きだよ」

アクセル「うん」

彼女は向日葵畑の見える丘を、アクセルに寄り添うように歩いて行った。








































ルミネのイレギュラー化を受け、政府はコピー能力を持つ新世代型レプリロイドの初期ロットを破棄。
コピーチップの製造を中断した。
しかし、宇宙開発のさらなる隆盛から高性能な新型レプリロイド開発の要請は尽きず…。
数年後、厳重なプロテクトを施し、コピーチップの製造を再開した。










      人間とロボット

相容れぬ二つの生命が平和に共存する世界

それは私が望んでやまない理想郷だ

      トーマス・ライト。

遥か遠い過去。
時の流れは川のように絶えねど、その営みは天より他に知る者もなく。 
 

 
後書き
今まで、ロックマンX小説を読んでくださりありがとうございました。
これでロックマンX小説は終わりになります。
コマンドミッションは…書くかどうか悩んでいますが…。
もしかしたら、これにコマンドミッションの話を追加するかも 
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