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一週間

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第一章


第一章

                       一週間
 一週間、それが長いか短いか。
 それについての間隔は人によって違うし時と場合によっては尚更違う。そして今の彼女の場合は。
「一週間ねえ」
 唐持優里亜は自分の部屋で悩んでいた。ジーンズでベッドの上に胡坐をかいてそのうえでゲームをしながら。あれこれと考えていた。
 茶色に脱色した髪を伸ばしていて顔は丸い。ついでにアーモンドを広げた様なやはり丸い目をしていてそれは少し上に向いている。眉は細く長く口は小さく唇も薄い。背は割かし高く一六五近くはある。全体的にそのジーンズが似合うスタイルだが胸等はあまり目立たない。
 その彼女がゲームをしながら考えていた。一週間あるのだ。
「どうしたものかしら」
 仕事で有給休暇をとりあえず一週間取った。しかし取ってみて逆に何をするか悩んでいるのだ。
「あいつ呼ぼうかしら」
 彼氏を呼ぼうと思った。
 それですぐに携帯に電話をかけた。それで相手に声をかけた。
「ねえ、いいかしら」
「何だよ」
「私一週間休みできたのよ」
「仕事首になったのか?」
「違うわよ」
 そのあまり質のいいとは思えないジョークにはむっとした声で返した。
「有給取ったのよ」
「何だよ、それで休みなのかよ」
「一週間ね。それでね」
「何だ?遊びに来いっていうのか?」
「そうよ。どうかしら」
 こう彼氏に言うのである。
「とりあえずね」
「夜位ならいいけれどな」
 電話の向こうの相手はこう優里亜に言ってきた。
「それならな」
「夜位って」
「俺今忙しいんだよ」
 彼は少しむっとした声で言うのだった。
「仕事がな」
「そんなに忙しいの」
「今仕事を二つ受け持ってるんだよ」
「二つもなの」
「だからだよ。だから今は無理なんだよ」
 彼はまた言った。
「悪いな、夜もそれもかなり遅くな」
「じゃあ昼はどうしろっていうのよ」
「ゲームでもしたらどうだ?」
 彼はこう勧めてきた。
「何か新作買うなりあとDVD買ったりな」
「ありきたりね」
「それか旅行でも行ったらどうだ?」
 彼は今度はこれを提案してみせた。
「何処かにな」
「旅行ね」
「御前この前函館に行きたいって行ってたよな」
「まあね」
 そのことを思い出して答えはする。
「何となくだけれど」
「じゃあそこに行って来たらどうだ?」
「今から?」
「一週間あるんだろう?」
「ええ、一週間ね」
「それじゃあ函館に行って帰って来る時間はあるだろ」
 その時間を考えての向こうの言葉だった。
「じゃあいいじゃないか」
「函館で遊んで」
「いくらとか海栗とか食ってろ」
 今度は食べ物のことを話した。
「それか蟹か烏賊な」
「海のものばかりね」
「函館っていったらそれだろ」
 まさにそれだというのである。それは確かにその通りである。やはり函館といえば海の幸である。それを食べずして函館は語れはしない。
 
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