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とある異世界の交差物語(クロスオーバー)

作者:鉄龍王
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第9話 過去の亡霊、鬼に牙を向く

 
前書き
1か月前からいろいろネタを考えているうちにこんなに時間がたってしまって申し訳ありません。
今回はあの男が出ます。良ければこんな駄作をよろしくお願いします 

 
土方達の話しが盛り上がっていたちょうどその頃、同じくファミレスで盛り上がっていた。外も夕暮れになり、千鶴たちもそろそろお開きなり、3人は常盤台の学生寮まで帰ることになった。
本来なら千鶴は帰り道が違うのだが『それじゃ、途中まで一緒に帰ろうか』ということになり、美琴とカナと一緒に帰ることにしたのだ。

「ごめんね…美琴ちゃん、カナちゃん。私の話につき合わせちゃって」

「いえ、気にしないで下さい」

「私たちがお願いしたんですから」

二人にそうあっけらかんと返されると千鶴本人も苦笑を浮かべるしかないが、それでも『ありがとう…』と返事をした。

「それにしても…千鶴さんも辛い体験をしたんですね…」

「私たちは戦争…しかも知り合いが目の前で死ぬなんて」

「うん…井上さんは、あの鳥羽伏見の戦いで私をかばって戦死したけど、最期にこう言ってたんだ……」



『トシさんに伝えてくれ。力不足で申し訳ない、最後まで共に居られなかった事、許して欲しい……最後の理想(ゆめ)を見させてくれて…感謝しても仕切れない……』



「…ってね。井上さんも土方さんと同じ“誠の武士”として最期まで戦ったの。もちろん近藤さんも…永倉さん、原田さん、斉藤さん、沖田さん、平助君、山南さん……新選組の皆さんは最期まで戦ったわ…自分たちが目指した理想のために……」

「………やっぱり、すごいですね。新選組の人たちは…」

「うん。私、あの人たちに出会えて本当によかった」

この時の千鶴の表情はまるで太陽のような温かい笑顔だった。美琴とカナも彼女の笑顔に惹かれる“何か”を感じた。2人は改めて千鶴と友達になれて本当によかったと心の中で感じていた。

そうして歩くうちに3人は違和感を感じた。もう暗いとはいえまだ人が賑わう時間。にも関わらず人の姿が1人も居ない。

「何、これ……?」

「誰も、いない……?」


美琴とカナがこの嫌な雰囲気に感じている丁度この時、千鶴はこの感覚に覚えがあった。それは殺気…しかもこの殺気に千鶴は覚えがあった。故に今の彼女の顔は青白くなっていた

「千鶴さん?」

「どうしたんですか!?」

2人は千鶴に声をかけるが当の本人の耳に入らず、目を大きく見開き、体をガタガタ震わせた

「この気配……まさか!?」

千鶴が恐怖に満ちた表情になった瞬間、周囲のビルの陰から人影が出てきた。30人はいる集団だった。着ている服は学生服や私服と様々だがその集団はある“共通点”があった。


白髪で紅い瞳そして……狂気に満ちた顔


この集団に美琴もカナも違和感を感じた

「な、何よアンタ達、そんな格好して…白髪でも流行ってるの?」

美琴は恐怖心を何とか押し殺して強気に振るうがこの集団は美琴の声が聞こえていないのか突然笑い出し


「……血を…血をよこせええええええええええぇぇぇぇぇっ!!!」


学生服を着た白髪の男を先頭にその集団は一気に3人に襲ってきた。美琴とカナの目にはそれは人というより猛獣の群れに見えた

「美琴ちゃん!カナちゃん!逃げるよ!!」

「千鶴さん!?」

「2人とも!急いで!!」

二人は千鶴の様子に戸惑いを抑えられなかった。今の彼女の顔は恐怖で満ちていた。先ほどまでの凛々しい顔は消えていた。そして3人は千鶴を先頭に出来るだけ人目がつく場所を選び、走り続けた。

「千鶴さん!どうしたんですか!?」

「“アレ”と戦おうと思っちゃダメ!!アレは…」

千鶴が説明しようとした矢先、白髪の集団が壁走りしながら一気に3人に襲い掛かった

「ひゃああああっ!はぁあああああああっ!!」

「血ぃをぉぉっ!よこせぇえええええええええ!!!」


普通ならこの以上過ぎるこの白髪に恐怖で動けなくなるが、ここにいる3人中2人は普通ではない。

念動(サイキック)ぅぅぅぅぅっ…女神の大盾(イージス・シールド)!!!」

カナは自分の右手を上げ、念動力の盾で白髪の攻撃を防ぎ…

「私の友達に近づくなぁぁぁぁっ!!」

美琴の電撃で白髪2人を気絶させるがまだ白髪の追手が来ていた

「血ぃをぉ、よこせぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「何なのよコイツら!!」

「なんか……普通じゃない!!」

2人は言葉にならない恐怖を感じ始めた。千鶴は何とか気を引き締め、2人を先導しながら逃げながら土方に連絡を入れる

『千鶴、どうした?なにかあったの…』

「土方さん!助けてください!!」

『千鶴!?どうした千鶴!?何があった!?』

「土方さん!学園都市に羅刹が…羅刹が現れました!!」

『何ぃ!?』


千鶴と土方の会話を隣で聞いていた美琴とカナは気になる単語を聞き逃せなかった

「千鶴さん……もしかしてコイツ等の事…」

「何か知ってるんですか?」



2人からの質問を受ける千鶴だが当の本人は辛い表情で答える

「うん知ってる……」

「「っ!!」」

「あの白髪は“羅刹”って呼ばれているの。彼らは圧倒的な身体能力と再生能力を持って、相手を圧倒する代わり、血を求めずにはいられない体質を持つ可哀想な人たち……」

「血を求めるって…そんな、吸血鬼じゃあるまいし……」

美琴は羅刹の存在を否定しかけるがそこをカナが“待った”をかける

「そうとも言い切れないよ美琴ちゃん。あの人たちを見たでしょう?あの様子はどう見てもオカシイよ。狂ったように笑う顔、『血をよこせ、血をよこせ』って何度も叫ぶあの態度…どう考えても…マトモじゃない…」

「…………」

(それに私も……“あの人たち”も知ってるしね)

カナの尤もな感想に流石の美琴も黙るしかなかった。そしてカナは千鶴に視線を向けて

「千鶴さん。貴女はどうしてその羅刹って人を知ってるんですか?」

「…………ごめん。まだ言えない」

「「……………」」

何かを隠している千鶴に対し、疑問の視線を送る2人だが「ふう…」とため息を吐き

「確かに今は喋ってる場合じゃないですね」

「それじゃあ、この状況から抜け出したら、きっちり教えてもらいますよ」

「美琴ちゃん、カナちゃん……うん!その為にも……ここから脱出して、土方さんと合流しなくちゃ!!」

千鶴はそう言いながら土方に連絡を入れようとするが

「もしもし土方さん?千鶴です。私たちは今…」

『……………(ツー、ツー、ツー、ツー)』

「土方さん?土方さん!聞こえますか!?土方さん!!」

突然電源が切れてしまい、携帯が使えなくなってしまった。しかも千鶴だけではなく

「黒子?黒子!?聞こえないの!?返事しなさい!!」

「飾利ちゃん!返事して飾利ちゃん!!」

美琴とカナも自分の携帯で連絡を入れるが全く繋がらなかった

「まさか…この周囲を電波ジャックされた!?」

美琴の言葉で千鶴は察した



“状況は最悪だ”。周りに人は居なく、居るのは血に狂った白髪……羅刹の群れ。連絡の手段が無い。

カナは美琴に訪ねた

「美琴ちゃんの能力でこの空間をどうにか出来ない?」

カナは美琴なら或いはと期待するが

「ダメ。さっきから試してるけど周りの電磁波を解除できない」

---当然だ、雪村には副長のエサになってもらう予定だからな。邪魔がはいったら面白くなかろう?うふふ……---

「「「!!!!」」」

何処からか突然不気味な声が響いた。しかも千鶴を狙うような発言で3人は更に警戒を強くした

「だ、誰よ!何処から見てるのよ!!」

美琴が震えながらも気丈な姿勢で声を出す

---ほう……思ったより気丈な娘だな…これなら副長が来るまでのいい暇つぶしになりそうだな---

そう言って声の主は高いビルから飛び降り、スタッと大きな音を立てることなく着地した。姿は和服の上に真っ黒な羽織を纏い、頭に同じく黒い笠をかぶった男。褐色の肌をしているが日本人の顔をしているので日本人だとわかるが、美琴から見てこの男の目は明らかにおかしかった。

美琴が今まで出会ったスキルアウトのような犯罪者の目ではなく、かつて対峙した一方通行(アクセラレーター)のような戦闘狂の目とも違う。この目の前の男の目が何なのか美琴は理解できなかった。分かるのは決して人間の目ではなかった。今はただ体の震えを押さえるのに精一杯だった

それはカナも同じで体の震えを抑えるのに精一杯だった。

そして千鶴だけはより一層震えを強くし、“ありえないモノを”見るような目で黒笠の男を見た

「うそ……どうして貴方が…鵜堂さん…!?」

千鶴に声をかけられた黒笠の男は彼女に恐ろしい目を向け返事をした

「久しぶりだな雪村。お前と副長と最後に会ったのは戊辰戦争だったから……大体10年ぶりくらいか?」

「「!!」」

美琴とカナは2人の会話から知り合いだと察しがついた

「戊辰戦争ってまさか…」

「この人も新選組の人間?」

美琴とカナが質問すると黒笠の男はニヤリと不気味な笑みを浮かべながら名乗りを上げた

「……元・新選組平隊士……鵜堂刃衛だ」

「「!!」」

「そして……新選組から維新側へ寝返った人斬りです」

「「な!?」」

そう…この男こそかつて土方たちと共に戦い、そして新選組(なかま)を裏切った最悪の人斬り……


美琴とカナ、そして千鶴は最も出会ってはいけない男と出会い、これから起こる大きな戦いの始まりだとこの時まだ誰も…知る由もなかった…………


 
 

 
後書き
これで今年最後の更新になります。こんな駄作ですが、完結まで頑張っていきますのでよろしくお願いします 
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