| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

僕の周りには変わり種が多い

作者:黒昼白夜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

入学編
  第6話 判断

『特別閲覧室』の前で一瞬どうしようかと悩んだが、とりあえずは、幽体に向かって術式解体を放ってみた。術式解体のサイオンが身体の中心部とか頭にあたれば、幻痛をおこす。身体と同じ形状をとる幽体で、身体の動きに乱れが発生したかどうかはわかるのだが、残念ながら、痛みを感じたような挙動はみせないので、ここのドアはサイオンを通さないようになっているのだろう。

こういう時には現代魔法と違うことはあまりしないことにして、専門家に任せよう。図書館の出入り口にむかうことにした。階段を降りる時には、2科生の制服を着ている腕に、青と赤で縁取られた白いリストバンドを再確認して、「エガリテか。それとも、その上位組織のブランシュかな?」と独り言なので、当然のことながら、どこからも返事はなかった。



図書館の出入り口から、教師を呼ぼうとしたところで、魔法の集中砲火をあびせかけられる前の照準を感じとったので、慌てて物陰に隠れた。その時に何人かの気の特徴は覚えたので、そこに向かって『遠気当』を行う。魔法師の常識では、超能力は目視視認しないと、発火念力を発揮させられないことになっているから、必要以上の注目をあびるわけにはいかないので、体術である気功をおこなっている。

顔を出して、襲ってきた相手の気の特徴を覚えて、物陰から1人1人に『遠気当』を放って倒していき、覚えている気がいなくなったらまた顔をだしてと繰り返すが、質より量というので、切りがない。こういう場合、CADの有る無しがかかわってくる。

CADがあればマルチキャストが可能なので、1人ずつの照準でも、短時間で複数人を倒すことが可能だが、先天性スキルと呼ばれている超能力だと、今の自分ではマルチキャストは不可能だ。他にもいろいろとあるが、現時点で必要なのは、この能力だろう。

数回ばかり、ちまちまと応戦していたら、

「パンツァァー!」

そんな雄叫びではあったが、聞き覚えのある声だ。霊気を感じとると、この特徴はと思い覗いてみると、レオがレアな武装一体型CADを使っていた。過去のCG画像記録でしかみたことが無かった、展開と構成が同時進行する逐次展開という技術なんてものをつかっている。他にもナイフにさされたと思ったら、服にまで硬化魔法か。

他にも、達也とエリカに司波さんがきているので、こちらにきていた攻撃に隙が大きくできた。今の内にうっとおしい攻撃をしかけていた、石つぶてと氷塊を使う2人の魔法師のCADに故障をおこさせた。

おこなったのはCADの起動式補助演算装置にたいして、プシオンの迂回路をとざしたことだ。慣れていないCADを自分で使うと故障するのは、ここの部分がおかしくなるからだが、数時間から、数日で自然に直るのが普通だから、まずは気がつかれない。
ついでに4人ばかりは『遠気当』で、気絶させたので襲ってきている方も、魔法や武器を放つ方向がさらに分散し始めた。

その隙というべきか、達也たち3人が図書館に入ってきた。



図書館の内部に対しても陰になる、出入り口脇の小部屋に入ったところで、達也から質問があった。

「図書館内部の状況は?」

「気配で感じられたうち、残ったのは4人。それが特別閲覧室に入っていった。あとは、4人を倒すことができたけれど、図書館内で意識があるのは、他にいないと思う……気配を消せる達人レベルがいたら、今頃襲われていると思われるから、特別閲覧室が本当に4人かどうかはわからない」

「そうか」

そう言って、達也が考えるかのように目をつむった。そんな達也を見ているのは、エリカと司波さんだが、僕がみているのは、達也の中のサイオン。大量のサイオンによる情報体が構成されている。美月に「天通眼」と言っていたのは聞こえていたし、メガネも厚みで判断していたから、情報の確認をしているのだろうが、それはプシオンではない。それから他人の起動式を魔法式が完了する前に解析してみせるのは、エレメンタル・サイト『精霊の眼』を使う際の副作用の一種である、時間感覚の延長ではないか、というのが僕の推測だったが、

「2階特別閲覧室の中は不明だが、あとは確かに気絶しているようだな」

あら、推測が違ったかなと思ったら、

「2階特別閲覧室には俺と深雪。それに翔で行って、エリカは1階の階段前でまっていてくれないか。壬生先輩が逃げ出すかもしれない」

「任せなさい」

「エリカがそれでいいのなら。ところで壬生先輩って剣道部の人?」

「そうだ。行くぞ」



2階特別閲覧室前では、

「翔!」

「なんだい。達也」

「これから見ることは、さっきのように黙っていてくれないかな?」

「さっきのって、エレメンタル・サイトかい?」

「本物の天通眼は一味違うな」

プシオンが見れないと、内部のサイオンの動きがわからんものな。そういういうことができるという情報を知っていたんだな。そういえば、達也は九重八雲先生のところにいるから、そっちという可能性もある。

「九重先生にも内緒にしているのかな?」

「九重師匠は知っている」

「それなら、話す機会があるとしたら、九重先生のところで。ちなみに僕は、何をしていればいいかな?」

「何も」

「了解」

そうすると、達也が特化型CADを壁に向けて打っていたが、ドアが簡単に切断されていく。発散と他の魔法の複合であることも感じだが、あの特化型CADがシルバーホーンだと気がついた時に、ループキャストで処理しているから早いのだろうと納得していた。

あとは、自分の気配を消して、達也と司波さんが特別閲覧室の中へ入っていくのを見ていた。

特別閲覧室の中からは、人が倒れる音や、達也や司波さんと女性の話声がきこえたりとしたが、突如と変則的なサイオンの波が流れてきた。そういえば、達也のつかっていたキャスト・ジャミングよりもサイオン波のパターンが複雑だなと思ってはいたが、中では煙とともに走って出てきた女性、剣道部の女子生徒をみかけたが、手をださずに、階段へ行く方へ行くのを見届けた。

特別閲覧室の中では、煙が魔法で収束されたところまではわかったが、ことりと落ちた音を聞こえたところから、なんか固形化できる魔法にでもしたのだろう。

「おーい。縛るのを手伝ってくれないか」

「わかった」

そう言って、中の犯人の拘束を手伝いながら、

「実のところ、現状がいまいちつかめていないのだが、今日の強襲はエガリテ? それともブランシュ?」

「エガリテには、アンティナイトを取り寄せるだけの力は無いはずはないから、ブランシュが裏で手をひいているのは、間違いないだろう」

言われてみれば、あたりまえのことだった。軍事物資であるアンティナイトを、そう簡単に手に入れられるわけがない。1階のエリカと壬生先輩の気配から、エリカはどうも、自己加速術式を使う剣術家だから、師匠の言っていた通りに千葉家の者なのだろう。外部の気配も感じとって、

「ちなみに1階での戦いも終了したようだから、降りていかないか? 図書館の外も、高校側が相手を圧倒しだしてきているみたいだし」



1階へ降りたところでは、エリカが達也にたいして壬生先輩を保健室へ運んでいけ。そういう話だが、エリカは

「そんなの、壬生先輩が喜ぶからに決まってるじゃん!」

「なるほど。それなら、エリカが言う通りに達也が運ぶのに1票」

ここで、司波さんが少し話したあとに、

「相手はエリカなんですから」

「チョッと深雪、それ、どーゆー意味かな?」

「やれやれ、それもそうだな。仕方ない」

エリカがぎゃーすか言っていたが、そこには本気さが感じられないので、いいことだろうと思い、僕は学校に預けてあるCADをいったん受け取りに行ってから、保健室に向かった。

そこでベッドに寝かされた壬生先輩はいたのと、達也にエリカと、司波さんまでいるのはわかるが、レオもなぜか居た。壬生先輩が目を覚ますころには、生徒会長の七草先輩、部活連会頭の十文字先輩、風紀委員長の渡辺先輩まで集まってきた。

襲ってきた主要メンバーは教職員が対応していて、七草先輩、十文字先輩、渡辺先輩でも生徒である以上、そちらには手がだせないということで、壬生先輩の事情聴取をおこなうのに、つきそうことになってしまった。事情聴取は壬生先輩の方からいいだしたことだ。

話は壬生先輩が入学して、今回の首謀者とみられている司に声をかけられて、剣道部に入部したころには、すでに司の同調者が少なからずいたこと。生徒の自主的な魔法サークルを装って思想教育がおこなわれていたこと。

この時、僕は初めて生徒の自主的な魔法サークルがあるということを知った。CAD調整をメインに実施するサークルがあるかと、後でさがしたのだが、危険度が高いとの理由で、無かった。理由はこじつけな気はするが、どうしようもなかろう。

壬生先輩の話は、渡辺先輩に指導を頼んだ時にすげなく断られてショックを受けたという話と、渡辺先輩の方では、確かに断ったが、断り方は、剣の実力は壬生先輩の方が上だから、その実力に見合った相手と稽古してくれという話だった。

その時に窓辺で盗み聞きをしていた剣術部の先輩がそっと、離れていった。この中ですくなくとも達也は人がいることに、気がついていたであろう。もう1人、廊下に立っている『ミズ・ファントム』じゃなくて、今の立場はカウンセリングの小野先生……一部の男子生徒の間では(はるか)ちゃんとも言われている……がいるのも、気配を隠していないことから、わかっているのだと思う。僕の場合は、幽体の一部を足元より伸ばして、観察することもできるので、こっちは確認済みだ。

話として、結局は壬生先輩が一人勘違いしていて、自分のことを貶めていたというのが真相だったようだが、そこで達也にだきつき泣き出したところを、これが青春というものなのかなと、まわりでおろおろしている中で考えていたことだ。達也と司波さんは、冷静で何を考えているかわからなかったが。



壬生先輩が落ち着いたところで、達也があっさりと「叩きつぶす」宣言をしていた。渡辺先輩と七草先輩は、常識的と思われる

「危険だ! 学生の分を超えている!」

「私も反対よ。学外の事は警察に任せるべきだわ」

との声も聞こえてきたが、

「そして壬生先輩を、強盗未遂で家裁送りにするんですか?」

その言葉に反応したのは十文字先輩だった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧