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僕の周りには変わり種が多い

作者:黒昼白夜
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入学編
  第5話 騒動

各クラブの勧誘活動が終わった日の授業後は、レオが

「達也。今日も風紀委員会か?」

「いや、今日は非番だ。新入部員勧誘期間も終わったし、やっとゆっくりできそうだ」

そっから、レオとエリカの茶々いれで、魔法を使わず魔法競技者のレギュラーを連覇した謎の1年生とか、魔法否定派に送り込まれた刺客だとか、達也はいいように言われていた。

ひるがえって僕が入っている操弾射撃部は、身体の動かす量が少ないということで、女子生徒の割合が、比較的多いというのもひとつの特徴だ。部としては男子の人数が少ないので、男子部が女子部と一緒になっている。その都合から、男子部用の操弾射撃には、主に上級生だが女子生徒も使っている。僕に対しては、弾丸の加速、特に移動は2科生ながらも、1科生の生徒と比べても上のレベルにあると、入部して数日で上級生たちにも認識をされはじめていた。



そして、勧誘週間が終わった翌週には、初の魔法実技の授業が開始された。初の魔法実技の授業は、基礎単一系魔法の魔法式を制限時間内にコンパイルして発動する。課題の内容といえば、単一系統・単一工程ということで、今回は的に向かって加重をかけるための、加重系魔法の起動式を読み込んで、魔法式を構築するという課題だ。パラメータはすでにうめこまれているので、単純に起動式を読み込み、コンパイルをして魔法式へと展開することになる。

そういう課題を、2人一組になってクリアするのだが、クラスが25人ということもあり3人一組というのもある。その3人一組というのが、僕のところで、他の2人は吉田幹比古(よしだみきひこ)林道南(りんどうみなみ)という女子生徒で、名前の順番により同じグループとなった。それぞれ1回の試技のあとに、実後は3人とも1回でクリアはした。

すでに操弾射撃部の2科生の先輩からは、期末試験ではこのCADが使われると聞いているのと、起動式やCADがいれかわるタイミングは夏休みと春休みとのことで、作った会社が同じなら、起動式に含まれる余分な部分をノイズとして感じる不快な部分にはなれるしかなかろう。それで、僕は2人にたいして

「もう少し練習させてほしい」

と言ったところ、南さんは

「私もするー」

とかわいらしく言っていたが、幹比古は

「見学している」

とそっけなく、後ろにさがっていた。

ちなみに南さんは教室の一番後ろの隅で、僕はその横だから、なんだかんだと言って話す機会は多くなる。いつのまにか「林道さん」から「南さん」へと呼び方を変えられてしまった。林道というと林の中の一本道を想像してしまうから、苗字にもある南さんということで、そう呼ばされている。まあ、これはクラス中のほぼ全員に対してだから、個人的な好き嫌いの意図はまるっきり無いのだろう。

幹比古は、幹比古でいいよと言われたので、こちらも翔でという話にはなっているが、友好的というわけではない。何か別な理由があるのだろうが、深くはさぐっていない。その幹比古は、達也の方へチラチラと視線を投げかけているようだ。まあ、風紀委員として活躍したから、他に終わったクラスメイトの視線も達也の方に向かっているのはわかる。ただし、課題である1秒をクリアしていないのを、不思議そうにしているが。

そんなことは気にせずに、自分に課した課題へチャレンジをしてみる。結果は南さんから

「352ms……入試の時に風邪じゃなかったら、本当に1科生だったかもしれないわね」

「いや、加重系魔法は得意な方の魔法なんだ。不得意な魔法だと、今の倍ぐらいはかかると思うから、1科生とはどうだろうね?」

「それでも、796msの私より早いじゃない!?」

「あっ、ごめん。悪気があったわけじゃないんだ」

「そういう意味じゃないので安心して。私より魔法式を早く展開できる人が練習するんだから、私もやらなきゃ、いつまでたってもおいつけないでしょう」

そんな話をして、南さんも700ms台で、交互におこなうことにより、数msから十数msずつだが、確実に時間が短くなっていくのを、お互いに確認しながら、この自主練習をおこなっていた。まあ、途中で美月がなにやら、目的がどうのこうのという話し声で、皆の注目を集めるというハプニングもあったが、なんとか300msへ迫ることに成功はした。



昼食時は、司波さんは達也といれば一緒に食事をしたこともあるからまだ良いが、ほのかと北山さんとは、入学日翌日に会って以来での食事だ。まわりに達也はいなくて、女子生徒3人と一緒というのは無い話ではないのだが、1-Aである1科生の生徒と2科生である僕が一緒にいるのをじろじろと見て、ウィードが一緒にとか陰口をたたきながら、遠巻きにしながら言っているのが耳に入るのだ。

まだ幸いなのは、1-Aの他の生徒からは、特になにも話しがないところだろう。これも入学式翌日帰りのときの目撃談と、操弾射撃部にいる1―Aの女子生徒が噂として、風邪で入試を受けたお間抜けさんという、あまりありがたくない噂が流れているのも一因だと思う。しかし、森崎だけはなにやら別な視線をなげかけてきているが、風紀委員だから、こちらに不手際が無い限りは安心していてよかろう。

達也たちがいないのは、直前の授業でレオとエリカがそろって、1秒をクリアできなかったので、達也にコーチを頼んだことにある。達也は俺に、昼食に間に合うとは思えないから、適当にサンドイッチと飲み物を買って、それを持ってきてくれということだった。選ぶのはほとんどが司波さんで、僕は昔でいう荷物持ちだ。クラブ活動でも、男子部員が少ない操弾射撃部では、1年生である僕が弾丸などをまとめて持っていくというのは、当たり前になっているので慣れだ。



居残りで訓練をしているレオとエリカに助手としている美月へ、サンドイッチと飲み物をもって、実習室に入ったが、レオとエリカに美月は気がつかないようだ。達也は気がついているようだが、話さないので黙っていると、一緒にはいってきた3人のうちの司波さんが、遠慮がちそうな声で

「お兄様、お邪魔してもよろしいですか……?」

「深雪、翔……と、光井さんに北山さんだっけ?」

「エリカ、気を逸らすな。すまん、深雪。次で終わりだから、少し待ってくれ」



レオとエリカも無事に、1秒をクリアして、昼食に入った。彼らには差し入れのサンドイッチ、達也には司波さんからのお弁当だった。飲み物は、ここにいる全員の分があるので、居残組の食事と一緒に、飲み物を飲みながら一緒に歓談を楽しんでいた。

歓談していた中で、1科生には指導教官がついて、2科生にはつかないことに対しての、エリカが習っている剣術での指導方法が、ここと同じという話に興味をもたらされた。エリカが剣術で有名な千葉家の者であるというのは、師匠から、この前の日曜に教えてもらったことだ。

ちなみに、エリカの話しで興味をもったのは、合気術では2人が互いに組んで練習をするというのもあるから、円明流合気術では、型がくずれていたらなるべく早めに修正を図って、練習相手にもひびかないようにするという考え方が、初心者には特に教え込んでいることだからなぁ。

この昼休みも最後の方で、司波さんがおこなった同じ実技で「235ms」という値には、自分用のCADを使うより、早いんじゃないかというのに驚かされた。まあ、発火念力の方がさらに早いのだが、能力の違いもあるしそれはおいとくことにした。



それから、平凡な学業と合気術の道場通いなどをして1週間あまり、放課後にそれは発生した。

「全校生徒の皆さん!」

ハウリングがおきて、再度、放送をしなおしている。『学内の差別撤廃を目指す有志同盟』とやらが、勝手に放送室をのっとたのであろう。そうでなければ、『放送部』が事前に紹介をするはずだ。

『有志同盟』とやらが、きちんとした手続きをとれば、『放送部』も、話を流すだけはするかもしれない。まあ、放課後よりも、昼休みにおこないそうだが。

放送は途中で切れたので、1科生と2科生の間の差別をなくすことが目的らしいが、差別と区別もつかないのが『有志同盟』のメンバーらしい。区別にしても、どれを選択するのかは難しいとは思っているのだけど、まあ、関係なかろうと部活にむかった。

話が動いたのは翌日の朝、生徒会長が「明日の放課後に『学内の差別撤廃を目指す有志同盟』と討論会をします」と放送を流したからだ。『同盟』(「学内の差別撤廃を目指す有志同盟」と呼ぶようになっていた)が、賛同者をつのる行動にでた。

参道する気も無いが、討論会に参加するのも面倒なので、用途は異なるが生徒会へ匿名で送れる公益通報システムに、2種類の内容についてだしておいた。

1つは1科生と2科生を、ブルームだの、ウィードだのと言っている元となる制服の刺繍について2科生にもつけられるようにしてほしい。

もう1つは、進級や卒業時の各時点で、1科生、2科生あわせて上位100名と下位100名を成績で入替えてもらいたい。

本当に匿名システムとして働いているかはともかく、討論会で全員の目の前で話すよりはよほど目立たないだろう。魔法実力主義だというのなら、ここまで徹底してほしいものだとの考えだが、1科生の下位にいる者は、安心できないだろうなぁ。ある意味『同盟』のおこした内容で考えなおしたところだけど、実際におこなわれるかは、生徒会がそこまで学校に対して影響力は有るか無いかというところだろう。



肝心の討論会がある放課後は、部活動も休みということで、図書館へ入って調べ物をする。図書館の資料は、教室からでも読めるが、図書館でしか読めない資料も非常に多い。今まで、休み時間の合間でみていた、霊気にも関連するプシオンの資料を読み漁っていたが、たいした収穫はなかったので、図書館でしか読めない資料を調べる時間として1人用の閲覧室を予約して、プシオンに関する資料を読み漁っていた。

そのはずだったのだが、資料を読んでいる最中に画面が変わって、この学校が武装テロリストに襲われていることと、避難経路の画面がでている。

外部の気配を探ると、閲覧室から十人以上と思われるのが、図書館の出入り口の武装テロリストがいるらしい方に向かって、残りは避難経路へ向かっているようだ。

さて、自分はどうしようかなと思って、合気術の基本は護身にあるのだが、都心で夜遅く遊ぶと絡まれることがあって、それの対処としての実戦はあるが、魔法に対しての実戦経験はつんでいない。あくまで、対人戦闘という意味での実戦であって、人型の鬼や妖魔の類……現代の古式魔法でいうところのパラサイトとの実戦経験はつんでいる。

まずは、現代魔法の欠点である知覚外からの術を放つことにきめて、閲覧室からでると、気配がおかしい。ここにはテレパシーを妨害するために、不完全ながらサイオンもれの対策もされている。物体がある場でのサイオンの知覚を僕は苦手としているので、プシオンを視覚化して知覚した。

ぶったれているのが2人に、待ち構えているような感じなのは、1階に2人だが、その上付近の2階あたりに2人がいるので、そこは階段のあたりだろう。2階と思われるところには、他の4人を感知する。図書館の出入り口付近では人が入り乱れているのが感知できるのと、避難経路のほうは外への脱出が進んでいるように感知する。

この状況と、閲覧室で考えていたのが3分も無いはずだから、内部にいる教師や生徒を外におびき出して、手馴れたメンバーが内部にいる警備員を倒して、2階で何かをしようとしているところか。

CADが無いのは、仕方が無いとして、気構えと能力は対妖魔用に切り替えた。

最初におこなったのは、階段の入り口で待ち伏せをしていた2人に対しての『遠気当』の変種。今では体術の一種と認識されている気功(きこう)を使った技法だが、単純に気を遠くへ当てるだけの術だ。しかし、大部分の物質は通過することができるというところで、魔法と勘違いするものも多い。影響を受けるのは気を持っている物体で、人を含む生物があてはまる。ただし、相手も気に対してある程度鍛錬をつんでいないと、効果が薄いので、プシオンに気をまとって、狙った相手のプシオンに反応したところで、放った気が爆発することにより、相手を倒す方法だ。

サイオンを使っていないので、魔法師には気がつかれない。それが普通なのだが、派手に音を立てて倒れたせいで、階段の上で待ち伏せしていた2人に気がつかれた。

1人は1階に下りてくるが、もう一人は魔法を使おうとしているところだ。まずは、術式解体で、相手が構築しかけていた起動式を破壊して、下でまっていた相手とは違い、高校の生徒服をきているが、日本刀をもっていることを確認してから、その日本刀を発火念力で燃やした。そのあとにまた『遠気当』だ。生徒ではないかもしれないが、生徒だった場合のため、先ほどよりは手加減をして放ったが、気配を殺すどころか、気をまともに練ることもできないみたいだから、半日ぐらいはねこんでいるかもしれない。

2階の4人のプシオンを感じる場所の目の前まで来たが、『特別閲覧室』と扉にかかれていて、どうしようかと一瞬悩むことになった。
 
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