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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第一話

 
前書き
第三視点等にして第一話だけリメイクしてみました。 

 



「曹徳、そこの部屋を掃除しときなさい」
「………はい」

 母親の曹嵩に汚物を見るような目で見られながら青年――曹徳はグチャグチャになった宴会後の部屋を掃除していく。

「……あら? 曹徳はまた掃除なのかしら? よっぽど掃除が好きなのね」

 掃除をしていると貧乳のクルクルドリルが特徴である曹操とそのお供である夏侯惇と夏侯淵がやってきた。

「……それが仕事なのですよ姉さん」
「あらそう。ならついでに厠も掃除しといてね」

 曹操は曹徳の言葉に興味なさそうに言い、夏侯惇も先程の曹嵩同様に汚物を見るような目で曹徳を見て、二人は何処かに行く。
 唯一、夏侯淵は申し訳なさそうに曹徳に頭を下げて部屋を出た。

「……さて、片付けるか」

 曹徳はそう呟いて皿などの片付けにかかる。

(しっかしなぁ……恋姫の世界に転生してヒャッホーとしてた俺が情けないな)

 青年はそう思った。青年の名は曹徳で親は曹嵩、姉は曹操だ。そう、三国志に出てくる有名な人物の弟だった。ただし曹操は女性であり曹崇や夏侯姉妹も女性である

(自衛官を退職して運送会社に就職したのが間違いだったかな。そうすればまだ轢き逃げで死なずに済んだしな)

 曹徳の中身である未来日本人はある日、仕事が終わって帰宅途中に乗用車にひき逃げをされた。そして気がつけば、昔の中国ぽい家にいて姿は赤ん坊だった。更に母親が曹嵩で姉が曹徳と知った時は驚きを通り越した。

(歴史は好きだったから三国志もある程度は知ってるがまぁ殆どが横山三国志なんだよな……。俺の歴史は日本史なんですよ)

 ただ曹徳が弟でも曹操は血の繋がらない義姉らしい。(歳は曹操と同じ)
 曹徳自身も詳しい事は分からないが実は捨て子で、曹操が生まれてから曹嵩が家の近くを散策していたら俺を見つけて拾ったとか使用人達が話しているのを盗み聞きして得た情報だ。(確信はない)
 曹操は正に天才で、十年の一人の逸材らしい。対する曹徳は、平凡な大学を出て運送会社だったので、知能は普通、曹操同様に期待していた曹嵩は曹徳に落胆して教育の全てを曹操に注がせて曹徳は家の使用人と同様雑用の仕事ばかりさせてきた。

「……こんなもんだな……」

 曹徳は綺麗にした部屋にふぅと息を吐く。

(さて、部屋に帰って読書するか)

 曹徳の部屋は厠の近くにある物置に近い部屋だった。(てか臭い)

「……………」

 曹徳が読んでいるのは薬草の本であった。何でそんな本を読んでいるのかというと、もうすぐこの家を出るからだ。

(このまま家におったら近いうちに俺は死ぬわほんまに。全身痣だらけだしな)

 そのために、野宿する際に食べれるきのみや薬草をこっそりと勉強している。賊に襲われるかもしれないが一応曹徳は武芸を叩き込まれているので少々の相手なら勝てる要素はあった。ただ曹操にはいつも試合で負けていたが……。

「ま……悩んでも仕方ないし、厠にでも行くか……ってどわぁッ!?」

 曹操は足が縺れて転けた。そして書簡が積まれていた棚から書簡が落ちてきた。

「いつつ……げ、書簡を直さなあかんな、ほっといたらまぁた怒られるな……ん?」

 その時、足下に一つの書簡が紐を解かれた状態にあった。しかし曹徳はある文を見て驚いた。

「……日本語……だと?」

 何故かその書簡は日本語で文が書かれていた。

「こんな物あったか?」

 曹徳は驚きつつも頁を開いて文を読んだ。

「袈裟斬りの斬り方……ってこれは剣術?」

 その書簡には剣術の仕方が書かれていた。

「……まさか過去に日本人がこの世界におったのか?」

 それが事実ならこの書簡が日本語で書かれているのも頷ける。

(取りあえずは読んでみるか。何か分かるかもな)





 結果的に言えばこの書簡は過去にこの中国に来た日本人が残した物だった。しかも幕末……戊辰戦争を経験した人物であり、最期は函館で戦死したらしいが気付けばこの恋姫の世界にいたらしい。その後は曹崇の使用人となっていたと記述してあった。

「……てかこの人、二年前に病で亡くなった黄さんだよな。まさか黄さんが日本人だったとはな……」

 書簡には書簡室の奥に武器を隠している事も記述されていたので曹徳は夜中に書簡室に忍び込んで武器を探して発見した。
 見慣れない木箱が二つあり、中身を確認すると日本刀が二刀とこな時代ではオーパーツである火縄銃だった。

「……そういや幕末を経験していたと書いてたな。なら有り得なくもないか……」

 刀や火縄銃は保存状態が良かった。この他にもある書簡にはある武器や何故か日本酒……濁酒の製造法も書いてあった。
 刀と火縄銃は貰う事にした。それも路銀もかなり貯めている。

「ま、それより今は勉強だな………」

 それから、勉強と剣術の練習(使用人の一人から剣術指導をしてもらっていた)は遅い時間までやった。







 そして十日後、曹徳はとうとうこの家を出る事にした。

(正直、曹嵩のイジメには耐えられなかったな。よく十二年も耐えれてたわ。あ、歳は十九ね)

 皆が寝静まった夜中、曹徳はこっそりと塀を乗り越えて着地した。

「さて、追っ手が来る前にちゃっちゃと逃げるか」

 一応曹徳は旅の商人の恰好はしている。(それ用の服は町で商人から事前に購入していた。)

「……俺を育ててくれてありがとう。じゃあな、俺をイジメた人達よ」

 曹徳は生家に御礼を言い、曹嵩達への言葉を言って夜の闇の中に消えた。その道中で「あばよと〇つぁん!!」と叫んだのは些細な事だと思う。
 翌日、曹徳が消えた事を知った曹嵩は「育ててやった恩を忘れおったな曹徳!!」と激昂して見つけ次第打ち首にしろと命令をして曹徳の捜索を開始した。しかし、曹徳は一向に見つかる気配はなかった。




「そう……曹徳は見つからないのね。下がっていいわ春蘭」
「は」

 曹操の言葉に春蘭が下がる。

(曹徳が消えてしまったのはかなりの痛手ね。曹徳は昔からよく分からない男だったわ。でも、同時に私は無能の曹徳は化けると思っていた。そう直感した私は曹徳をあえて突き放していたわ。でも結果は御覧の有り様ね……)

 曹操はそう思っていた。

「まぁ、果実は熟したら美味しいからね。いつかまた会えたら曹徳……貴方は私好みに化けているのかしら? ねぇ曹徳?」

 曹操は面白そうに微笑むのであった。






「……曹徳様……」

 夏候淵は捜索隊を率いる中、思わず溜め息を吐いていた。曹徳の行方が分からなくなって既に三日が経過していた。

(私が初めて曹徳様にお会いしたのは七つの時だった。姉者は華琳様に付きっきりだったが、私は何故かよく曹徳様と遊んでいた。しかし、曹徳様が華琳様より普通だと知ると途端に私の両親は曹徳様に近づく事を禁じた。皆は曹徳様を普通だと言うが私はそうは思わない。曹徳様は華琳様とはまた違う逸材だと私は思う)

「曹徳様……貴方のこれからのご武運を祈ります」

 曹徳のために夏侯淵は曹徳の武運を祈るのであった。





「おのれ曹徳ゥ!! 人が育ててやった恩を忘れおってェ!!」

 曹嵩が酒が入った瓶を壁にぶつける。瓶は勿論割れて、酒を床にぶちまける。

「……やはりあの時、曹徳を拾うのではなかったな」

 曹嵩はそう呟いたのを使用人達が聞いていた。

「(よく言うよ……曹徳様を捨てたのは自分なくせに……)」
「(曹操様が頭が良いと知ると勉強を辞めさせて私達と同じ雑用をさせていたのは自分なくせに……)」

 使用人達はヒソヒソと話し合う。

「えぇい気分が収まらんわ!! 酒だ!! 酒を持ってこい!!」

 屋敷に曹嵩の怒号が響いたのであった。






「さて、何処に行こうかな……」

(確か董卓は涼州にいたはず……それに董卓軍は俺の嫁(笑)の華雄がおったしな)

「よし、涼州に行くか」

 商人の格好をした曹徳はそう呟いて涼州に向かった。


 
 

 
後書き
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