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ルドガーinD×D (改)

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十話:後輩が冷たいです

 
前書き



 

 

どうも、意図せずして置いてけぼりにされたルドガー(笑)です。
俺は今、いじけて部室の隅っこで体操座りしている真っ最中だ。
どうせ、俺は置いて行かれるほど影の薄いやつなんだろ?
いいさ、いいさ。皆から忘れられても俺はトマトと猫さえあれば生きてていけるんだ。
だから、目から溢れ出す、ちょっぴりしょっぱい水は涙なんかじゃないんだ!
俺は泣いてなんかいないんだからな!!

「……ルドガー先輩」

ひょこりと顔を覗かせて体操座りの俺を見下ろす塔城。
まさか、俺を慰めに来てくれたのか?
ああ…こんなところにも天使がいたのか―――



「……お腹すきました」



どうしてそれを俺に言うんだ…っ!?
俺はお前のお母さんとかじゃないぞ!
だから、そんなもの欲しそうな目で俺を見つめないでくれ!!

「……早く何か作ってください」
「ああ!分かったよ!作るぞ!作ればいいんだな!?」

ちくしょー!どうせ俺は料理が上手いぐらいしか取り得のない元ニートだよ!
言ってて悲しくなってきたな……

「……デザートもお願いします」
「そんなにガッツリ食べるつもりなのか!?」
「……おかわりも用意しておいてください」
「ええい!こうなったら食べきれないほど作ってやるからな!残さないでくれよな!!」

俺が吹っ切れてそう叫ぶとコクリと頷いて満足そうに笑う塔城。
くそ…っ!その仕草が余りにも可愛いから俺の中の憤りが薄らいでいく……
だから俺はロリコンじゃない、エルコンだ!!

「で、材料はあるのか?」
「……お金です」

そう短く答え、俺の手に一万円札を押し付ける塔城。
要するに俺に材料から買って来いってことか?しかも急ぎで。
それにしても……何故だろうか?やけに男らしく感じる行動だな。

「……えい」
「グハッ!?」
「……今、何か失礼なことを考えませんでしたか?」
「な、何でもないです」

俺を鋭いボディブローで沈めて冷たい目で見下ろす塔城が怖いので
高速で首を横に振って誤魔化す。
それにしても……どうして分かったんだ?
もしかして女の勘ってやつか?

「……まあ、いいです。それじゃあ早く行ってください」
「あ、ああ。分かった」

塔城の冷たい目線に見送られて、スーパーを目指して駆け出し始める俺。
と言うかこれって俗に言うパシリってやつじゃないのか?
………後輩にパシリにされる俺って一体何なんだ……はあ。





「……おいしいです」
「そう言ってもらえると嬉しいよ……すぐにおかわりをやるから皿を押し付けないでくれよな」

俺の料理を食べる手を休めることなく食べ終わった皿を片手で押し付けてくる塔城。
俺の料理を気に入ってくれたのは素直に嬉しいんだけどな……
これもう、俺が本格的なパシリになってる気がするんだけど
……最近、俺の扱いが色々と酷いと思う。裁判で訴えたら多分、勝てるレベルで酷い。

「……ルドガー先輩はトマトが好きなんですか?」
「ああ、俺の体はトマトで出来てるからな!」
「……冗談はどうでもいいので質問に答えてください」
「ごめん、俺、何か塔城を怒らせるようなことしたか?もし何かあったら謝るからさ」

後輩の余りにも冷たい言葉が俺の心を深々と削る。
思わず崩れ落ちて情けない姿勢になるがこの際気にしないことにする。

「……作ってもらった料理全てにトマトが使われているのでトマトが好きなんですね?」
「はい、そうです」

もう、先輩の威厳なんてどこにもないな……。
でも、まだ塔城のご機嫌をとる選択は残されているはずだ、さあ、どうする、俺!?

『L1 もう、諦めてもいいんじゃないのか? R1 プライドを捨てて土下座だ!!』

こうなったらやけだ!日本の伝統文化―――土下座を見せてやる!!
行くぞ、これが俺の―――選択だ!!



「……いい加減頭を上げてください。
 ……スカートを覗こうとしているみたいで気持ち悪いです」



どうやら俺は選択を誤ったらしい。

「本当に俺が何かしたのか!?ごめん!
 何をしたのか分からないけど取りあえずごめん!!」
「……別に何もありません。それより早くおかわり持ってきてください。」
「分かった…直ぐに持ってくるよ……くう……」

もうやだ、俺が何をしたって言うんだよ?
あ、姫島先輩、お願いですから俺を見ながら笑わないで下さい。
それ以上笑われたら俺はガチ泣きするぞ?みんなが引くぐらいに泣くからな?
ホントだぞ?ホントだからな?
だから誰か一人でいいから少しは俺に優しくしてくれよな!



Side塔城小猫

新しくオカルト研究部に入ったルドガー先輩は不思議な人です。
人間なのに祐斗先輩を軽々と倒してしまうぐらい強いですし、
魔王であるサーゼクス様が身元保証人とい言いますし
それまでの人生もどこかのヒーローみたいな経歴で不思議です。

それに料理をあっという間に作ってしまうところも不思議です。
これだけの量を直ぐに作るのは普通は無理です。
頼んだ自分が言うのもなんですが、学校であっさりと作るなんて色々とおかしいです。
いったい今までどんな状況で料理を作ってきたんでしょうか?

でも、一番不思議なのは、姉様の……いえ、懐かしい香りがすることです。
うっすらとしか臭いは残っていないので確信が持てるわけではありませんけど
姉様の臭いに近い物を持っているのは確実です。

もしかして姉様と繋がりがあるのでしょうか?
……いえ、それはないですね。姉様は、はぐれ悪魔です
サーゼクス様の保護を受けているルドガー先輩と
会うなんてことはまず考えられませんよね。

でも……もしかしたら……ああ、考えていたら、何だか頭がこんがらがってきました。
これも全部ルドガー先輩のせいです。
おかわりを持ってきてくれたら気晴らしにまたいじってあげます。

それにしても……ルドガー先輩をいじるのは楽しいですね。
反応が一つ一つ面白いのであきません。
何と言うんでしょうか?先輩はいじられ慣れてると思います。
それなのに変わらない、いじられ耐性……いじられるために生まれて来たみたいな人です。

そう言えば、新しく入ったもう一人の先輩、兵藤先輩は今何をしているのでしょうか?
昨日はシスターを助けられずにへこんでいましたけど今はどうなのでしょうか?
昨日と言えばルドガー先輩を置き去りにしてましたね……すっかり忘れてました。

Sideout塔城小猫





―――パシン!

……部室内に、響き渡る乾いた音。
その音の源はイッセーの頬で、その頬は真っ赤に染まっている。
まあ、当然だな。部長が本気でイッセーを平手打ちしたんだからな。

どうしてこんなことになっているかと言うとだ。
何でもイッセーはアーシアさんと何とか再開することが出来たらしいんだ。
でも、二人で話している時に空気を読まずに堕天使が乱入してきて
アーシアさんを奪われた。

イッセーは勿論アーシアさんを救うために堕天使が潜伏しているという教会に
乗り込もうとした。でも、そこで部長からのストップがかかって行けないという状態。
しかし、イッセーは諦めずに部長の説得を試みるが話し合いは平行線に入って
ついに痺れを切らした部長がイッセーを叩いたというわけだな。

「何度言ったら分かってくれるの!?イッセー。
 ……どんな理由があってもあのシスターのことは救えないわ!!」

まあ、普通はそうだよな。相手は本来悪魔が関わってはならない存在、シスター。
おまけに堕天使の配下にいる子だ。
迂闊に手を出したら戦争が起きてしまうかもしれない程、危険なことだからな。

「なら俺一人でも行きます」

毅然とした態度で言い放ち決して自分の意志を曲げようとしないイッセー。
正直言って、いつもの変態っぷりからは想像もできないような態度に俺は戸惑っている。
いや、『お前そんな顔出来たのかよ!?』ってツッコミを耐えているだけでも
褒めてもらいたいぐらいなんだけどさ。

「あなたは本当に馬鹿なの?行けば確実に殺されるわ。もう生き返ることは出来ないのよ?
 それがわかってるの!?」

確かに、イッセーの今の実力なら行っても何も出来ずに死ぬのが落ちだろうな。
それに、生き返ることは二度と出来ない。
それだけのリスクを背負ってでもいく覚悟がイッセーにあるのか?

「あなたの行動は私や他の部員にも多大な影響を及ぼすことになる!
 あなたはグレモリー眷属の悪魔なのよ!それを自覚しなさい!!」
「じゃあ、俺を眷属から外してください!俺個人であの教会に乗り込みます!!」
「そんなことが出来るわけがないでしょう!どうしてわかってくれないの!?」

部長は眷属から外してくれと言うイッセーに涙ながらに説得を試みるが
イッセーの覚悟は揺らがない。一度決めたら何があっても引かない目をしてる。

「俺はアーシア・アルジェントと友達になりました。
 アーシアは大切な友達です!俺は絶対に友達を見捨てません!!」

友達を絶対に見捨てないか……良い覚悟だな。
これだけの覚悟を見せられたら俺も何かしたくなるな。
………よし!

「イッセー、俺も行くよ」
「ルドガー、お前!?」
「ルドガー、あなた人の話を聞いてたの!?」
「部長、俺は人間です、眷属でもない。この中で一番身軽に動けるのは俺だと思います」

非難がましく俺に言ってくる部長にそう返す。
悪魔が動くことが出来ないなら人間である俺が動けば問題はないよな?
それなら被害を受けるのは俺だけだしな。

「それに一人より二人の方が生存率は上がります」
「そんなことを言っても…!」
「部長」

突如、姫島先輩が部長に何かを耳打ちし始めた、すると途端に表情を険しくする部長。
何なんだ、一体?

「大事な用事ができたわ。私と朱乃はこれから少し外へ出るわね」
「部長、まだ話は終わって―――っ!?」

イッセーの言葉を遮るように人差し指を立てて、イッセーの口元にやる部長。

「イッセー、あなたにいくつか話しておくことがあるわ。まず、あなたは『兵士(ポーン)』を弱い駒だと思っているわね?」
「は、はい」
「それは大きな間違いよ『兵士』には他の駒にはない特別な力があるの。それが『昇格(プロモーション)』よ」

なぜ今こんな話をされているのかが分からずにただ部長の言葉に頷くイッセー。
因みに俺も良く分からない。

「実際のチェス同様、『兵士』は相手陣地の最深部に赴いた時、『(キング)』以外の全ての駒に昇格(プロモーション)することが可能なのよ。イッセー、あなたは私が“敵の陣地”と認めた場所の一番重要な所へ足を踏み入れた時、『王』以外の駒に変ずることができるの」

そこで部長の言わんとしていることに気づき驚愕の表情を浮かべるイッセー。
俺も気づいた……でも不安だから後でイッセーに確認しよう、うん。

「あなたは悪魔になっての日が浅い、だから最強の駒である『女王(クイーン)』への昇格(プロモーション)は負担がかかって現時点では無理でしょうね。でも、それ以外の駒になら変化できるわ。心の中で強く『昇格(プロモーション)』を願えば、あなたの力に変化が訪れるわ」

へえ…悪魔の駒ってそんな便利な能力が付いたりするんだな。
種族が変わるだけで色々と変わるもんなんだな。
まあ、人間だって強い覚悟さえあれば強くなれるんだけどな。

「それと後一つ、神器についてよ。イッセー、神器(セイクリッドギア)を使う際には、これだけは覚えておいて頂戴」

そう言ってイッセーの頬を優しく撫でる部長。
うそ…だろ!?あのイッセーが鼻の下を伸ばしていないだと!?
どんな状況でもエロいのがあいつじゃなかったのか!?

「想いなさい、神器(セイクリッドギア)は想いの力で動き出すの。そして、その力も決定するわ。想いが強ければ強いほど、神器(セイクリッドギア)は応えて力をあなたにくれるわ」
「想いの力……」
「これで最後よ、イッセー。絶対にこれだけは忘れないでね。『兵士』でも『王』は取れるわ。これはチェスの基本よ、それは悪魔でも変わらない絶対的な事実なの。あなたは、強くなれるわ」

それだけ言い残して姫島先輩と一緒に魔法陣で消えていく部長。
そして残されたのは俺とイッセーに木場と塔城。

「さてと……許可も出たことだし、直ぐに行くか、イッセー」
「ルドガー、本当に着いてきてくれるのか?部長も言ってたけど死ぬかもしれないんだぞ」
「確かにな。でも俺はお人好しだからさ、こういうの見ると放っておけないんだ。
 それに……アーシアさんの事が大切なんだろ?」
「ああ!大切な友達だ!!」

真っ直ぐな目でそう断言するイッセー。
こいつは普段もこんな感じだったらモテるかもしれないのにな。もったいない奴だよな。
まあ、それは置いておいてイッセーにはあの言葉を送ってやるか。



「大切なら、守り抜け、何に代えても」



「は?」
「俺の憧れた人が言ってた言葉だよ。意味はそのままさ」
「良く分からないけど、覚えておくぜ」
「ああ」

良く分かってない風に頷くイッセー。
良く分からないか……まあ、それでもいいか。
出来れば全てを投げ出すことがないのが一番だからな。
でも……世界は残酷だからな。

「どうした、ルドガー?」
「いや……何でもないさ」

何でもないとイッセーに答えて誤魔化すために部室から出て行こうとする。

「二人共、僕は仲間外れかい?」
「木場、お前まさか来てくれるのか!?」
「君達だけじゃ不安だしね。……それに個人的に堕天使や神父は好きじゃないんだ。憎いほどにね」

そう言う木場の目には確かな怒りや憎しみが籠っていた。
何かしらの過去を持っているんだろうな……
まあ、今の俺にはどうしようもないんだけどな。
それでも何かあったなら力を貸してやるつもりではあるけどな。

「……私も行きます」
「なっ、小猫ちゃん?」
「……仲間を見捨る気はありません」

そう力強く話す塔城がやけにカッコよく感じてしまう。
でもこんなことを考えてたらまたパンチが飛んでくるから考えないようにしよう。

「感動した!俺は今、感動してるよ、小猫ちゃん!!」

何やら猛烈に感動しているイッセー。
おい、俺達の時にはそんなに感動してなかったよな?
今からでも抜けてもいいんだぞ?

「僕も一緒に行くんだけどね…」

ほら見ろ、木場も苦笑いを浮かべてるじゃないか。
二人でボイコットするぞ、このおっぱい魔人め!
………まあ、俺もアーシアさんが心配だからそんなことはしないけどな。

「じゃあ、今から教会に殴り込むぜ!!」
「ああ!」
「うん」
「……はい」

イッセーの言葉に俺達は力強く頷いた。
 
 

 
後書き
次回は少しでもいいから黒歌を書きたいなあ……。 
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