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Gフォース~正義の行方~

作者:がっと
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第3話:大きな正義

 翌日、ワシントン。

 慣れないスーツを着るためだけに家に帰り、妻の寝顔をみたあとにフォードはすぐさま専用飛行機に乗りワシントンにやってきた。
 フォードは前日の疲れからか、飛行機に入るとすぐに眠りについた。
 彼についてきたヒオはフォードの軍服の胸ポケットの中で眠っていた。
 やがて、昼間になり彼らはなんとかたどり着いた。
 フォードはシートの中で倒れるようにして眠っていた、が飛行機が到着したことに気づくと目を覚ました。


「ワシントンか・・・。」

 アメリカ、首都ワシントン。
 ホワイトハウスが白く光り輝くアメリカの首都。
 フォードはここに来るのは生まれて初めてであった。

「おい、ついたぞ。」

 フォードは胸ポケットをつつき、ヒオを起こした。
 ヒオはゆっくりと顔を出すと周囲をみつめた。
 少しまだ眠いのか方目はとじていた。

「もうついたの?」

「ああ、もうついた。」

 するとフォードの前に黒い服を着た大きな男がやってきた。
 サングラスをした黒人男性だった。

「フォード・ブロディ少尉、車を待たせてあります。どうぞ・・・。」

 男性につれられるまま、フォードは飛行機の外へと向かった。
 外はすっかり寒い空気に支配されていた。
 フォードは体を震わせると、コートを身にまといはじめた。

「ちょっと!」
 
 ヒオは大きな声をあげると、胸ポケットから飛び出してきた。
 フォードは手をさしだすと胸ポケットから彼女を取り出すと、頭の上に置いた。
 そして、フォードは黒い軍帽をかぶって、ヒオの姿を隠した。

「なんでこんなことすんのよ!」

 ヒオは叫んだ。

「君を隠すためだよ。」

 フォードはそう告げると、飛行機から降り、滑走路の中にある車へと向かっていった。
 さきほどの黒人が黒いシボレーのドアを開けて待っていた。

「お待ちかねしました。」

 黒人はそういうと、にこやかにほほ笑んだ。
 フォードは無言で返すと、シボレーに乗っていった。
 すると、そこには提督が座っていた。
 フォードは目を丸くしながらかつての上司の再開を喜んだ。

「提督、お久しぶりですね。」

 提督はタカのように鋭い目をしていた老人だった。
 だが、不思議なことに彼は私服だった。
 黒いセーターと綿ズボンをきた提督は普通の老人にみえた。
 

「ブロディ少尉か、君だけか?」

 すると帽子の中からヒオが顔をみせた。
 提督の顔をみたヒオは微笑んで手を振った。
 提督は一瞬柔らかい笑顔になったが、表情をいつものように険しいものに変えてわざとらしい咳をすると会釈した。
 フォードは車に入るとドアを閉めた。

「オッサンの笑顔はじめてみたよ。」
 
 フォードはヒオの「オッサン」という言葉に反応すると眉間にしわをよせて訂正させようとした。
 提督は恩人である、無礼な真似はできないからだ。

「ヒオ!」
 
 提督は完全に大笑いしながら自分の足を叩いた。
 フォードは提督の笑う姿をはじめてみたので、少し驚いた。

「オッサンでかまわん、クソジジイでもいいぐらいだ。」

 思わずヒオは「クソジジイ」といいそうになったが、やめておいた。
 フォードは少し表情が柔らかくなった。
 そして、冷や汗をかくと提督に告げた。

「クソジジイはさすがにまずいでしょ・・・。」

「君だっていつまでも若くはない、いつかはおっさんといわれても苦にならないのさ。」
 

 提督はそういうと、カバンの中からとあるファイルを渡した。
 フォードはその中身をのぞいた。
 ファイルの中にはメカゴジラやメカニコング、そして父親ジョー・ブロディの姿があった。
 父のジョーはメガネをつけた壮年男性と握手をしながら写真にのっていた。

「父さんだ、横に移ってるのは誰ですか?」

「今日、会う男だ。名前はアルバート・シンクレア議員、有名な資産家一族の息子で君の父親の大口のスポンサーだった、そして上司でもあった男だ。」

 フォードはシンクレアのことをみつめた。
 どこかやさしそうな穏やかな目をした男性だった。
 若いころはハンサムだったんだろうなとフォードは思うと、ファイルをさらに開いた。
 そこには若いころのジョーと母親のサンドラがいた。
 そして、背後には原発があった。
 フォードはわかった、かつていた雀路羅市の原発だった。
 フォードは父親の説明を受けた時にある会社の名前を教えられていた。

「モナークって名前でした。」

「そう、モナークの経営者だ。」

「でも、モナークが何の用ですか?」

 提督は微笑みながら告げた。

「それは見ての楽しみだよ。」

 車はワシントン近くにある高速道路に入るとそのまま、脇に入り地下に入っていった。
 するとやがて、一つの薄汚れ今にも壊れそうなビルにたどり着いた。

「ここは?」

「だから見てのお楽しみだ。」

 そういうと提督は廃ビルのほうへと進んでいった。
 フォードもそれを追いかけると廃ビルの中へと入っていった。
 すると中にはエレベーターがあった。
 ふるぼけたビルの中に新品のエレベーターだけがちょこんとあった。
 フォードは少しデジャブに感じつつも、提督を追いかけた。
 提督はその中に入ると、フォードもその中に入った。
 すると提督はにこやかにヒオに話しかけた。

「どうだ?ヒオちゃん。これをエレベーターというのだぞ!」

「うーん、これで乗ったの600回ぐらいね。」

 提督はあっけにとられた。
 ヒオはそんな提督を見て微笑みかけた。
 するとエレベーターは地下で泊まった。

「なんだ・・・。」

「ついたか、ではヒオちゃん・・・これをみてまた驚かんかね?」

 提督はドアを開けた。 
 そこには研究所があった。
 白く綺麗な廊下の左側通路には窓があった。
 それだけならまだよかった。
 フォードは窓の外から、驚くべきものを目にした。
 それは無限にある、巨大なロボットたちだった。
 銀色の姿をしたそれの体は不思議と、鏡のように周囲のものを反射していた。
 フォードは茫然としていた自分の顔が歪んで、ロボットたちの体にうつっている姿をみて驚いた。
 しかし、人間の姿をかたどっていた。
 それは、間違いなく人間の姿をしていたのだ。
 鏡のように、周囲を反射するそれは人間の姿をしていた、しかし顔はなかった。
 大きさは100mほどあった。
 作業をしている人間が小さく見えた。
 フォードは少しゾッとした。

「これは、なんなんですか?」

 提督は誇らしげに彼らをみつめた。
 眉は上に上がり、口元は微笑んでいた。

「ドローン・ソルジャーだ、新世界の新しい戦力だよ。コンピュータの指令の元に動き、敵を必ず殲滅する。」

 フォードは提督の目をみつめて聞いた。

「なぜ、これを作ったのですか?」

「これは、君の父親のアイデアだよ。ブロディ少尉。」

 フォードは後ろを振り返った。
 そこには写真にうつっていたメガネをかけた壮年の男性がいた。
 立派な体格をした彼はスーツ姿にあふれんばかりの筋肉をもっていた。
 見てくれはジョーや芹沢博士と同年齢のようにみえた。
 リチャード・シンクレアだった。

「シンクレア議員ですね?」

 フォードは握手をするために手を差し出した、シンクレアは笑顔でそれに応じた。
 そして、窓の外にいるドローンソルジャーたちを指さした。

「これをみたまえ、君たちは中東でテロリストと相手に戦争をしただろう。」

 フォードは少し表情を曇らせ、口先をゆがめながら小さく答えた。

「そうです。」

 シンクレアはフォードをみると、しきりにかぶりを振りながら答えた。

「テロリストは漠然としている、実態がよくわからんのだ。実は国内にも多くいる。国外だけではない。イスラムテロリストだけではない。極左思想を持ったアナキスト、もしくは人種的偏見に基づいた過激派団体。あるいは何の思想もない犯罪者集団。敵か味方かわからんのだ。だが、彼らは違う。敵は絶対にみつけだし、殲滅するのだ。」

「僕にどうしろと?」

「君にはロボット戦術のノウハウがある、君の戦術を基に彼らを配置したい。もっといえば君を指揮官にしたいのだ。」

 フォードは中東での戦いを思い出した。
 敵はどこから来るか、わからなかった。
 そして、敵はどういうつながりをもってるか、多くの米兵はそれに苦しめられた。
 フォードもそうだった。
 イラクやサウジで敵を追いかけたはいいが、敵の存在やアジトを把握することはできなかった。
 単なる子供と思いきや、地雷をもった子供だったり、普通の市民が実はテロリストだったりとしていた。
 たいていの場合、ゲリラと戦闘になった時、米軍の部隊はこれを殲滅していた。
 だが、問題は敵がどこから来るかだった。

「どうやって、探るんですか?」

 フォードは聞いた。
 今後のためにも、本当にテロリストと戦うつもりならどうするのか気になった。
 テロリストを倒すなら「敵を知る」ことが必要だ。

「ついてきたまえ。」

 シンクレアはそう言うと、フォードと提督をある場所に進ませた。
 そこには巨大なサーバーを持った10体に及ぶコンピューターがあった。
 そして、オペレーターもいた。
 OSはウィンドウズだった。
 そして、巨大なモニターがあった。

「このネットワーク網をみろ、ここのサーバーには世界中のインターネットサイトからの情報が流れている。SNS、掲示板、動画サイト、amazonのアカウント、あらゆるものにハッキングを行うことができるのだ。たとえばやってみよう。」

 シンクレアはキーボードを推すようにオペレーターにいった。
 するとオペレーターはある男を映し出した。
 普通のイスラム系の男性だった。
 するとモニターには男の顔写真と経歴や指紋がうつしだされた。

「彼の名前はトマス・マクリー。SNSサイトでたびたび反社会的な書き込みを行い、また書き込みの傾向からややアナキスト的傾向がある。そして、アルカイダに好意的な書き込みも多くしている。彼のことは人工衛星や街に仕掛けた監視カメラが24時間監視している。もしも、彼が妙な動きをみせたら・・・・ドローンがいく。」

「いって、どうするのですか?」

 フォードは恐る恐る尋ねた。
 するとシンクレアはこういった。

「逮捕する、それだけだ。」

 シンクレアはさらに続けた。

「次にこれをみてくれ。彼の名前は竹田武、日本人だ。彼は中国や韓国に対する政治的な反感を抱いた書き込みをSNSやBBSでしている。そして、もう一方はキム・ヨンジュン。彼は韓国名を名乗っているが、日本に住んでいる。そして、竹田のような人間に対する憎悪的な発言も日常的に書いてる。また、日本人に対するヘイトスピーチも行っている。」

「それだけでテロリストですか?」

「あくまで、候補だよ。」


 フォードは少し眉をひそめた。
 
「ですが、それは市民の監視ではありませんか。」

 シンクレアはフォードのほうを見つめると、肩にふれた。
 そして、まるで父親のように話しかけた。

「若者よ、君が一番よくわかってるはずだ。テロリストどもを倒すには、そして秩序を守るにはまず国民がどういう思想をしているかをみつめなくてはいけない。どういう事を考え、何をしているか。どういう思考をしているかと。」

 フォードはシンクレアの目をみつめてこう言った。

「確かに、こういうやり方もあります。現実的であるとさえいってもいいでしょう。ですが、俺はこのやり方には納得も賛同もできない。国民の監視が必ずしも秩序を守ることにはならない。それが例え、ヘイトスピーチを書いていたとしても、人間であるなら監視されない権利があるはずなんです。」

 シンクレアは表情を曇らせて言った。

「君ならどうやってテロリストから世界の秩序を守る?」

 フォードは少し考えた。
 そして、答えを出した。

「少なくとも人々の監視はしない。」

 黙っていた提督が告げた。
 さすがに黙っていたれなかったのだ。

「だが、これは君の父のアイデアを基にしたものだ。君の父がこのドローンを生み出したのだ。」

 フォードは冷静に返した。
 呼吸は落ち着いていた。
 眼の色にも感情はなかった。

「父は悪人だった、だからこそ俺はこんなことには手を貸せない。もうしわけありません提督、シンクレア議員。俺はできません。」

 フォードはそう告げると去ろうとした。
 提督は少し残念そうに彼を見た。

「もうしわけありません、議員。彼は少し頑固なんです。」

 提督に顔をみせると議員は黙って首を縦に振った。
 わかっているという感じだった。
 提督はフォードの後を追いかけていった。
 フォードは何も言わずにエレベーターに向かって突き進んでいった。

「フォード、ちょっとかっこよかったよ!惚れ直しちゃったな!」

 ヒオは冷やかすように帽子の中から言った。
 ため息をするとフォードは帽子を撫でた。

「帰ろうか、ヒオ。」

 フォードはエレベーターのボタンを押すと、提督が入ってくるのを待った。
 エレベーター内にフォードと、提督は乗り込んだ。
 フォードは少し提督にもうしわけなくおもった。

「すみません、あんなことを言って。」

「君は恐らく反対するとは思っていたよ。」

 フォードは提督のほうをみつめた。
 彼の気持ちが気になったからだ。

「あなたはどう思いますか?」

 提督はフォードのほうを黙って見つめた。
 その視線はかつての提督の姿がみえていた。

「私は、テロリストたちを監視する程度ならアリだと思うし、使い方を考えればドローンも効果的だと思っている。それだけだよ。」

 提督は寂しそうにそういった。
 やがてエレベーターは地上にきた。
 フォードは外に出ると、提督のほうを見つめた。

「帰らないんですか?」

 フォードは軽くそういった。
 だが、提督は少し考えていた。
 はたして、自分やシンクレアが正しいのか。
 それとも、フォードが正しいのか。
 国民を監視することでしか秩序を守れないのか、ドローンを使う事でしかテロリストを倒せないのか。

「私も少し考える、そのために地下にいくよ。運転手にいって、送ってもらえ。私は私の車で帰る。また近いうちに会おう。」

 そう告げると、提督はエレベーターのボタンを押して去って行った。
 フォードとヒオは黙ってそれをみつめるだけだった。
 
「さあ、ヒオ。ワシントンの建物を観光してブラブラ遊ぼう。」

「そうこなくっちゃ!」

 フォードとヒオはそういうとシボレーに乗り込んだ。


 その夜

 提督は家に向かって車を走らせていた。
 するとケータイ電話が鳴った。
 提督は電話に出るために車を脇に止めた。
 提督は電話に出た。
 電話の主はシンクレア議員だった。

「シンクレア議員ですか?ガイガン計画ですが、計画の見直しを検討します。私もこの計画がどうなるかわからなくて・・・。」

 その時だった。
 先のビルから少し妖しい光がみえはじめたのを提督は見た。
 そして、提督の中にかすかにのこったベトナムの記憶がよみがえった。
 スナイパーだ。
 すると、光の先から何かが放たれた。
 やがて、窓を突き破って提督の近くまでよってきた。
 だが、提督は体を横に向けて急いでそれを避けた。
 頭に銃弾が当たることは避けれたが、銃弾は提督の肩に当たった。
 提督は車を急発進させると、急いでその場から逃げようとした。
 肩からは血が流れていたが、提督はそんなことを気にしなかった。

「議員、私は狙われています!」

 提督はそう言って、状況を伝えた。
 そして、車のアクセルを踏んだ瞬間だった。
 前に突然別の車が乱入してきた、提督はそれを避けようとして脇にそれた。
 あまりに突然のことだった。
 提督はブレーキを踏み込んだ、だがそれもうまくはいかなかった。
 車は猛スピードで駆け込むと、に近くにあったビルに激突した。



 
 


 


 


 



 




  
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