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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第7話:組織造り

(グランバニア城・会議室)
ユニSIDE

ティミー殿下が新婚旅行から戻り、久しぶりに各省のトップが揃った会議にて、以前より上がっていた案件がサクサクと解決して行く。
しかし、私の上司たるウルフ殿の懸念通り、物事が予想以上に大きくなり彼にのし掛かる負担も増大していった。

先ず、折角国家的イベントにするのだからと言う理由で、大会用にスタジアムを建設する事になった。
しかも2.3年に1度しか行わない武術大会専用だけではなく、常時使用できる多目的スタジアムの建設に決まった。

と言うのも、リュカ陛下が子供達に教えた『野球』と言う球技が、王都内で流行しており、陸軍と海軍が時折勝負をしているからだ。
軍の訓練場にライン引きで試合会場を造り、本気で競い合ってる事が多々ある。
リュカ陛下もそれを見学された事があり、結構楽しまれておりました。

更にスタジアムは、スポーツ以外のイベントも行える様に造る事が盛り込まれ、その代表案に“歌謡ショウ”や“ダンスショウ”等が提案された。
大まかなスタジアムの絵をリュカ陛下が黒板にスルスルと描き、それを国土交通大臣が賢明にメモして建設に備えていた。

場所も確定し、グランバニア城より東の『試練の洞窟』付近となった。
リュカ陛下は『あの洞窟要る? 壊しちゃって良くね?』とオジロン大臣に尋ねてましたが、歴史的には貴重な文化財だから壊す事なく保存しましょうと言われ、『ふ~ん……』と納得してました。

また、王都の中心地より外れた場所にスタジアムが建設される為、交通網……特に鉄道の新規路線案が確定し、国土交通省がそれも受け持つ事となる。
スタジアム建設並びに新規路線の増設は国土交通省が受け持つ事になったが、私の上司は国王主席秘書官な為、大きな政務には全て関わる事になる。

私が受け持つ担当範囲ではないので『ご愁傷様』としか言えないが、ここ最近の不機嫌さはこれを予期していたからだろう。
優秀すぎるのも考え物だ(笑)

次に決まったのが、スポンサーを募る事だ。
簡単に説明すると……スタジアムを造るのに国費だけではなく、民間企業からの出資も募る様にするらしい。

そうする事で、出来上がったスタジアムの壁などに民間企業の宣伝を入れ、知名度と売り上げ増加に協力すると言う。
流石リュカ陛下は考える事が凄いです!

税金を節約してスタジアムを造れ、出来上がれば経済効果も上がり、国内総生産も向上させる事の出来る案です。
もうグランバニアを『山奥の小国』とは言わせません。
偉大なるリュカ陛下が、この国を超大国に変えました。

国王主席秘書官の補佐として、この会議に出席できたのは幸運でした。
偉大なるリュカ陛下の、更なる偉大さを心に焼き付ける事が出来たのですから!
このまま感動の余韻に浸りたいのですが、会議はまだまだ続きます。

そう……大会の正式な名前が決まったのです。
最初は『偉大なるリュケイロム陛下武闘会』と、100%嫌がらせで我が上司が提案しましたが、リュカ陛下のヘッドロックに遭い断念。
とっても残念です。

次に上がった案は、ティミー殿下の『グランバニア武闘大会』で、リュカ様も『まぁそれで良いよね。でも“武闘大会”じゃなく“闘技大会”にして』と変更要求。
その理由は、武器を使用した戦いを許可したいからだそうです。

と言う事で、次に決めていったのは大会のルールです。
ほぼリュカ陛下が提案し、不足分や問題のある部分を皆で討議して出来ました。
そのルールとは……

・如何なる理由があっても不殺が原則。
・相手を殺してしまった場合は、反則負けであり殺人の現行犯で逮捕される。
・武器の使用は許可されてるが、殺傷力は無くす事。
・剣や槍などの刃部分を丸く加工したイミテーションを使用。
・弓矢やボウガン系の飛び道具は使用不可。
・魔法の使用も不可。
・基本的には参加者が自ら用意するのが原則だが、剣と槍は大会運営委員会でも用意し、貸し出しする事が出来る様にする。
・大会は1体1で戦う。
・横幅10メートル、縦幅10メートル、高さ80センチの舞台上で戦い、それ以外の場所に身体の一部(服などの一部も)が触れたら場外負け。
・ダウンし審判員が10カウントしたらKO。
・両者場外や両者KOの場合は、改めて再戦。
等々……

それ以外にも、一次予選は出場登録順に約10人単位でのバトルロイヤルで勝者を決め、二次予選は一次予選で勝ち抜いた者のトーナメント戦になる事が決まった。
最終的に予選を勝ち抜けられるのは16名。

本戦は16名によるトーナメント方式。
組み合わせは厳正なる抽選で決定。
一般の客に見せるのは、この本戦からとなる。

そして最後に決められたのは、優勝者への褒美についてだ。
当初の目的通り、大会優勝者には“陛下との手合わせ”が認められる。
それ以外を望む場合も許され、お金を必要とすれば“10万(ゴールド)”を賞金とし、それ以外の事で陛下の力が及ぶ物事であれば、望みを叶える事が出来る。

ただし、それ以外に関しては決まりが定められており、賞金金額を超える物品の請求は不可で、他人の人生を変えてしまう様な要求も厳禁だ。
他人の人生を変えてしまう要求とは何か……簡単に言うと、

・ある特定の人物または不特定の人物を死刑にする事。
・ある特定の人物または不特定の人物と結婚させる事。
・ある特定の人物または不特定の人物の役職を剥奪または理由なく降格させる事。

たとえリュカ陛下の力を持ってしても、罪無き人の生命を自由にして良い訳ではなく、その様な願いは聞き入れられないのだ。
ただし、ある特定の人物または不特定の人物について刑事的および民事的な調査を依頼する事は可能である。
本来それについての証拠を必要とするが、憶測または疑惑から調査を依頼する事は優勝者には出来る。

そして結婚も……と言うか、肉体関係の要求も陛下の自由にする事は出来ない。
ある特定の人物または不特定の人物と親しくなれる様希望するのは可能だが、その先の色恋事は当人達次第なので、第三者が強制する事は不可である。
リュカ陛下曰く『相手が嫌がったらダメ。女とヤリたいのなら自分で口説けよ』と言う事なのだ!

職務の剥奪なども、国家の根幹が揺らぐ恐れがある為、一方的に強制する事は出来ない。
しかし、刑事的および民事的な調査を依頼する事はこちらも可能である。
本来それについての証拠を必要とするが、憶測または疑惑から調査を依頼する事は優勝者には出来のです。

誰かを追い落としたいのであれば、自らにチャンスを貰える様リュカ陛下にお願いすれば良いのです。
『陛下の下で、陛下の為に働きたい』と言えば、リュカ陛下の見立てに合った役職を用意してくれるからです。
そこで励み、ある特定の人物または不特定の人物の役職を狙えば良いのです。
何事も本人の力量次第だ。

ここまでが本日決定した事で、会議に参加されてる皆様も納得されたみたいです。
するとリュカ陛下は……
「で……ちょっと悪いんだけど、色々伝えたい事があるからみんな聞いて」
と皆様に何かを伝えるみたいです。

「以前から国内の治安維持を、軍の憲兵隊から違う専門の組織に変更しようって話してたんだけど、この闘技大会を利用しようと思うんだ」
そう言って入り口に控えている兵士さんに手で合図し、厳つい顔の中年男性(多分貴族)を招き入れた。

「カ、カタクール候……一体……?」
法務大臣のシクーラ殿が驚いた様に呟いた。
そう言えばリュカ陛下が珍しく仲良くしている貴族に“カタクール侯爵”と言う方が居たと記憶してますが、この方みたいです。

「以前からシクーラ法務大臣に新たなる治安維持組織の設立をお願いしてたけど、カタクール候が良い案を持ってきたので、それを採用しようと思ってる」
「カ、カタクール候……貴殿、私に黙って勝手に……」

「だ~って、閣下に相談したら握りつぶすっしょぉ? オジサンい~い案思い付いちゃってさぁ、リュカっちに直接言っちゃったのよねメ~ンゴ」
C調というか独特なイントネーションで喋るカタクール侯爵様……イライラします。

「怒んなシクーラ、本当に良い案なんだからさ」
「で……父さん、その良い案ってのは?」
ティミー殿下はカタクール侯爵様と親しい様で、軽く手を上げ挨拶を交わすと、良い案の概要を催促する。

「うん。やっぱり憲兵隊って軍隊なんだよね。優秀だけど、武断的解決方法を優先しがちになる……国外からの脅威に対抗する為の軍隊は、それでも問題ないのだろうけど、国内の治安を維持する事が目的だと困るんだ。なんせ国民の平和と安全を守る為の組織にしたいのだからね……大切なスポンサーを守るのが目的だからね!」

リュカ陛下は時折仰る事があります。
『国家を一般企業に見立てた場合、国民はお客様だから大切にしないとならない。客足が遠退いたら企業は倒産しちゃうんだからね』と……

「でもシクーラが行おうとしてるのは、憲兵隊から優秀な人物を引き抜いて新たな組織に組み込む事なんだよ。確かに実力も人格も問題ない者達が選別されるんだろうけど、結局軍隊色は抜けきらないよね。困った場面で最終的に国民を犠牲にする様な武断的判断をしかねないよね。『多数を救う為に少数を犠牲にした』とか何とか言っちゃってさ」

「んで、オジサン考えたのよぅ。どーしたら国民を守っちゃう為の組織が出来ちゃうのかって。居酒屋が閉店するまでリュカっちと話し合ったのよ……で、閃いちゃったのピキーンとさ!」
普通に喋ってくれないかな……

「国民を守るのは国民がイチバ~ン適してんじゃん、てね」
「しかしそれでは時間がかかりすぎる。国内の治安維持なのだから早急にも必要ですよ陛下。私はその点も考慮に入れて、新組織を造ろうとしてるんです。そして後身の者達を育成する機関も……」

「怒らないでシクーラ。君は頑張ってると思うよ僕も……でも、1度軍隊色が根付くと後々まで残るから、最初から排除しておきたいんだ。体育会系のノリって嫌いなんだよ僕。だから初めから軍隊とは別の組織として立ち上げるカタクールの提案に賛成したんだ」

「それにぃ、オジサンだって後身の育成を含めた事も考えてっかしてぇ! その為にぃ、国内各地へ行っちゃったんだから、ねぇ~リュカっち」
「うん。で、カタクールが見つけてきた人材が、カタクールの屋敷で修行中なんだって。法律とかも勉強しながら、皆さん切磋琢磨しくしてるんだって」

「面白そうですねリュカさん……いや陛下」
「だろ。ウルフもそう思うだろ!」
「そこまでは解りましたが、今回の闘技大会と如何に関係するんですか?」

「察しが悪いなぁボウヤはよぉ……そいつ等の実力を皆々様にお披露目する為に、闘技大会へ出場させるってのがオジサンの狙いよぉ。田舎のサル共に『自身の実力を世間に認めさせ、その存在意義を発揮しろ!』と言ってやぁれば、大会に優勝し奴等の方から『国家の為に働かせて下さい』ってぇ言っちゃうよ、きっとぉ」

「そいつ等が優勝すればさ、僕と戦いたいって奴が出ないじゃん。助かるんだよねぇ……嫌だから本当に」
「なるほど……それに大会での優勝者に重要な役職を与えたと世間に広まれば、夢を持った若者が大会に参加して賑わかしてくれますもんね。大会が賑わえば経済の成長にも繋がるし、悪い事はないですからね」

自分の仕事を奪われたシクーラ大臣は、完全に納得してる訳ではなさそうだったが、リュカ陛下のお墨付きと私の上司が好意的意見を言った事に、それ以上の反論をしなくなった。
もしかしたらウルフ殿が賛成意見を言わなければ、もう少しリュカ陛下に食い下がったかもしれない。

「シクーラは納得してない様子だね」
「あ、いえ……そんな事は……」
そんな事大有りなのは丸分かりだ。

「だったらぁ、閣下のペットも出場させれば良いんじゃなかね? そんで優勝させちゃえば、陛下にお強請(ねだ)り出来るっしょ」
「そうだな……純粋に“強さ”で劣ってるのなら、国内の治安維持を任せるのは不安だ。“腕力馬鹿”は勿論困るが、国民を犠牲にせず犯罪だけを打ちのめす為の実力は絶対必要だからね」

流石リュカ陛下は懐が深いです♥
誰にでもチャンスを与え、そして努力する事を望む。
あぁ……格好いいです。

「しかし父さん。組織として大人数で参加されたら、他の参加者が不利になりませんか? 身内を優遇してる様で何となくズルイ気がするんですが……」
真面目なティミー殿下らしい疑問です。

でもリュカ陛下のお手間を軽減させるという目的には合致してるから、あまり気にしないで良いと私は思います。
世の中リュカ陛下を煩わす事が多すぎなんですよ!
まぁリュカ陛下は、強く・優しく・頭良く・格好いい何でも出来ちゃう超絶天才だから仕方ないのかもしれませんけどね。

「そうだねぇ……ズルはダメだよね。じゃぁ大勢で出るんじゃなくて、代表2.3人で出場すれば良いんだよ。代表の決め方は各陣に任せるけど、優勝した方……もしくは、より上位へ入賞した方を登用する。いや、待てよ……」
シクーラ大臣とカタクール侯爵を宥めながらリュカ陛下が決定を下すが、途中で何か変更を思い付いたみたいです。

「カタクールには悪いけど、お前の部下は優勝以外では登用しない。現在勉強してるとは言え、無学だった者をいきなり重職に就かせる訳にはいかないよ。それに引き替えシクーラが用意してる人材は、軍隊とは言え教育を受けてる連中だ。僕の思い描いてる組織とは違うけど、国民に迷惑をかけるより良いと思うからね」

「確かに……リュカっちが決めた事なら従うよ。だぁ~って、優勝しちゃえば良いんだってばさって、なぁ?」
「よく言う……何処で拾ってきたのか知らぬが、正規軍に勝てる訳がないだろ」
カタクール侯爵はそれ程気にしてないのだが、シクーラ大臣が敵対心を燃やして睨んでる。

「じゃぁシクーラ……もしこの大会でカタクールの部下が優勝したら、その功績として新設する『警察庁』の長官に任命するよ。法務省の管轄だけど良いよね?」
「そ、それは……」
突然の人事案。シクーラ大臣は言葉に詰まってます。

「君が子飼いの者を新組織の長に据えようとしてるのは知ってる。でも大会で優勝すれば新組織の警察は、カタクールの部下がメインに幅をきかせる事になる。だったら、その長はカタクールで良いでしょ……部下の使い方を解ってない者が就任しては、混乱が生じるだけでしょ」

リュカ陛下の仰ってる事は尤もだと思います。
でもシクーラ大臣は了承しづらいのでしょう……だってご自身の直ぐ下にカタクール侯爵が部下として就任するのですから。
私、あの人が部下になったらイライラすると思う。

ユニSIDE END



 
 

 
後書き
ユニについてはリュカ伝の外伝をお読み下さい。
カタクール候につきましたは……はい、初登場です。
私の中では若本さんの声で再生されます。ツッコミ無用! 
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