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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第5話:馬鹿と鋏は使い様……いや、技術の優良利用

(グランバニア城・客間)
デールSIDE

我々ラインハット一同は、兄さんに割り当てられたグランバニア城の客室に集まり、先程ウルフさんが伝えてきた事を相談している。
と言っても、我が国がグランバニアの提案を断る事など有り得ない。

それどころか、毎回有益な提案や提携協力などを持ちかけて貰い感謝してるくらいだ。
勿論今回の提案もです。
そんな訳で、アリアハンの天空人のテクノロジーを使い、新たな貨幣製造に国家を上げて賛成しており、国に帰っても家臣達への報告はしても賛否の是非は問わないつもりだ。

それより今我々が驚いてるのは、アリアハンのテクノロジーにより発明されたMH(マジックフォン)の存在だ。
今回の貨幣一新に伴い、協力国(アリアハン・テルパドール・通商都市連合(サラボナ)・ラインハット・グランバニア)間で協議(打ち合わせ)を多々行う必要が出てくる。

その都度代表者が各国に赴いていたのでは時間がかかりすぎる……それを解消する為に、その場に居ながら遠方の人物と会話が出来るアイテムを、リュカ陛下が概要を伝えマスタードラゴン様に作らせたのだ。

そして、そのアイテム……MH(マジックフォン)を先程託されました。
ラインハット用のメイン機が1台に、個人用のサブ機が3台。
メイン機は大きさも重量もあり、ラインハット城に設置して使用する様に出来ており、サブ機は持ち運びが簡単で、手帳の様にポケットへ仕舞う事が出来る代物だ。

システムとしては、メイン機とリンクしてるサブ機同士であれば、世界中の如何なる場所に居ても互いにコンタクトをとることができ、勿論メイン機を使えばサブ機の全員と同時に会話できるらしい。

同じようにメイン機1台とサブ機数台は各国に本日配備され、メイン機を使えば他国に赴かなくとも会話する事が出来るという……
なおメイン機で通信した状態であれば、他国のサブ機同士でも会話が出来るらしい。

そしてアリアハンの天空城の何処かには、全ての中枢になるマスター機があり、各国のメイン機通しの通信はそのマスター機を通じてと説明された。
つまり、我ら人間がこのMH(マジックフォン)を何らかの悪用をしたら、マスタードラゴン様がマスター機を使って使用停止する事になっている。

何らかの悪用というのが私には思い付かないが、リュカ陛下もマスタードラゴン様もテクノロジーの暴走を警戒しており、防護措置は万全と言う事みたいだ。
それとマスタードラゴン様が説明してくれましたが、この通信波は聖波と呼ばれ邪悪な気……つまり邪波が広まると不通になるらしい。

もしMH(マジックフォン)での会話にノイズが混じる様になってきたら、世界の何処かで邪悪な者が力を付けている証だと仰ってました。
因みに、その説明を受けた兄さんが「じゃぁお前(リュカ)の周囲じゃ使用不能じゃないのか?」と毒舌を振りまいたんですが、「じゃぁキサマ(ヘンリー)にもその血が流れてるな」と返され絶句。
まだまだリュカさんには適わないのでしょうね(笑)

「しかし……既にこのアイテムが存在してるって事は、随分と以前からリュカはマスタードラゴン様にアイデアを出しておいたのだろうなぁ。そんな素振りは全然感じなかったが……ポピーは何か聞いてたか?」

「お義父様、私はもうグランバニアの者ではありませんよ。父はああ見えて、その辺のメリハリをキチッと区別してますから、部外者に重要機密を漏らす事なんてございません! 娘の私だって先程この技術を目の当たりにしたばかりです」

「そ、そうか……アイツは直ぐに自慢してくる様な人間だと思ってたから……すまんな」
「自慢などしてきません。あの人()がしてくるのは、特定の情報を与え、その情報に対し如何なる反応を示したかを探る行為です。めったやたらに自慢してるのではなく、相手の事を推し量ろうとしてるんです。お義父様は私の父を、そんな底の浅い男だと思ってたんですか? ブッ殺しますよ♥」

「ご、ごめんなさい……」
ちょくちょく実家へ出入りしてる義娘なので、何らかの情報を持ってたのではと気にする兄さんに、満面の笑顔で脅し返すポピーさん。
その笑顔が美しすぎて本当に怖い。

「とは言え、これがあれば緊急時に重宝しますね」
私は話を変えるべく、MH(マジックフォン)を手に取り皆を見回す。
兄さんはマリア義姉と頷き合い、コリンズ君もポピーさんと手を繋ぎ頷く。

「このメイン機は城に設置するとして、サブ機は誰に所持させようか?」
「3台あるのだし、先ず1台はデール陛下よね」
「私ですか? ……そうですね、解りました」

兄さんの問いかけにポピーさんが素早く答える。
そして当然の様に私が1台所持する事に……
基本的に私は外遊等で国を離れる事が少ない(殆ど無い)為、メイン機が側にあれば必要ないと思うのだが……

「もう1台はお義父様よね。国内外へ出かける事が多いのだから……」
「そうだな。となると最後の1台はポピーが持つべきだろう。お前はルーラを使えるのだから、もしもの時は連絡を取り合って活用できる」

「では各自、MH(マジックフォン)の使い方を憶えておく様にな」
兄さんの指示に私を含め皆頷いた。
これで明日から忙しくなる。

グランバニアとの通信手段を手に入れたのだから、今回の貨幣一新案以外でも連絡を取り合わねばならない。
明日はグランバニアで朝食を戴いて直ぐに、ポピーさんのルーラで帰国だ。
ゆっくり休めるのは今晩が最後かな(笑)

デールSIDE END



(グランバニア城)
アルルSIDE

「じゃぁ行ってきますけど……何か問題ありましたら、直ぐに連絡して下さいね!」
「うるせーなぁ……早く行けよ。新妻が寂しそうに待ってるぞ」
柔軟な思考をする様になったとは言え、やはり根が真面目なティミーは、新婚旅行へ出発する直前まで仕事の事を気にしてる。

「あ、ごめんアルル……」
「私は大丈夫よ。別に予約とかしてる訳じゃないし……」
優し夫は私を気遣い謝罪をするが、本当に気にしてはいない。

と言うよりも、まだ目立たないお腹と言え身重な私は新婚旅行に必要性を見出してないのだ。(普段からティミーとは世界中を外遊してるから……)
でもリュカさん(お義父さんと言いづらい)が、貴重な思い出なのだから行くようにと重要アイテムの『魔法の絨毯』を貸し出してくれて、2週間ほどの新婚旅行(バカンス)になりました。

行き先は……
取り敢えず温泉に入ってゆっくりしようって事で、ビアンカさんのお父様がいらっしゃる山奥の村への療養です。
そして気が向いたら、ルドマンさんが手配してくれたカジノ船へ行き、ギャンブルでストレス発散するようです。

私も夫も…と言うか、リュカ家の殆どがギャンブルに興味が無く、気を遣ってくれたルドマンさんへの気配りからカジノ船へ行く事が決まってる。
なお、リュカ家でギャンブルに興味があるのはマリーちゃんです。

無料(ただ)でカジノコインを2000枚戴いたのを見て、彼女だけが『いいなぁ~!!』と騒いでました。
カジノコインは換金できないから、どんなに儲けても使用機会は限られてくる。
カジノの景品に魅力を感じないので、正直有難味は薄い。

「兎も角、ルドマンが余計な事……ゲフンゲフン、気を遣ってカジノに招待してくれたんだから、お前等は共に旅慣れしちゃってるけど有難く新婚旅行を満喫してこい。興味なくても行ってこい。もしお前等が必要になったら、MH(マジックフォン)で呼び出すから……」

アリアハンのマスタードラゴン様を脅して作らせたマジックアイテム“MH(マジックフォン)”。
グランバニアではルーラが使える3人(リュカさん・ウルフ・リュリュさん)に支給され、それ以外にもティミー・オジロン閣下・ピピン閣下の計6人に渡された。

重要人物と何処に居ても対応できる人物に支給させたと言ってる。
正しい判断だと私は思うが、マリーちゃんが『私もそれ欲しぃ!』と騒いでる。
今更言うのもアレだが、あの()は我が儘すぎると思う。可愛いんだけど、手に余る時が多々ある。

あぁ申し遅れましたが、私はこの度『アルリーリア・グランバニア』となりました。
現在グランバニア王国が進めている国民基本台帳作成に基づき、PNとFNが各個人に割り当てられる事になりましたが、それに伴い廃止されるMNのあります。

それは身分を表すMNです。
リュカさんも本来は『リュケイロム・エル・ケル・グランバニア』と言い、ティミーも『ティムアル・エル・ケル・グランバニア』と言うのだが、PNとFNの間にある『エル・ケル』と言うMNが身分を表すらしく、リュカさん曰く『ムダ』との事で廃止になりました。

因みに“エル”は『王族』を表し、“ケル”が『男』である事を表すらしい。
なのでポピー様は『ポピレア・エル・シ・グランバニア』で、“エル”は『王族』を表し、“シ”が『女』を表している。
だから以前だったら私も『アルリーリア・エル・シ・グランバニア』になってたらしいですが、ムダなMNが無くなりました。

とは言え、私も晴れてグランバニアの一員です。
国王がアレでも、私がグランバニアの名に泥を塗る訳には参りません。
何より夫の顔を潰すようなことは絶対に出来ない訳で……
不要と感じつつもルドマンさんのご厚意には、渾身の笑みで応えました。

そんな訳で、カジノへ招待してくれたルドマンさんへの挨拶もあるので、リュカさんに急かされる訳だけじゃなく、そろそろ出立しなければならない。
魔法の絨毯が快速でも、グランバニアからサラボナまでは7.8時間かかる。

今日中に温泉に浸かりユッタリ気分を満喫する為にも、サラボナへ夕方以降に到着するのは避けたい。
下手するとルドマンさんが『今夜は遅いし、我が家に泊まっていきなさい』と言いかねない。
悪い人でないことは承知してますが、折角の新婚旅行だし誰にも気遣いをせずに夫と過ごしたいです。

アルルSIDE END



 
 

 
後書き
携帯電話より進化してるマジックアイテムです。
通話は立体ヴィジョンで行います。
勿論、映像を映さないようにして通話も可能です。
でもメール機能や留守電機能はありません。
写真も撮れないし、お財布代わりにもなりません。 
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