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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第4話:華燭の典

 
前書き
リュカさんが真面目な回です。 

 
(グランバニア城・大広間)
マリーSIDE

我が敬愛するお兄ちゃんの結婚式が順調に進んで行く。
朝8時に始まったグランバニア大聖堂での式に始まり、昼前に4階テラスから大広場へのお披露目&新郎新婦のご挨拶も終わり、待ちに待った披露宴……改め、大宴会の幕開けでござりまする。

司会進行は国王主席秘書官であるマイダーリンのウルフ。
オールラウンダーな彼らしく危なげなく大宴会は進んで行きますよ。
真面目くさったオジロン大臣の挨拶で幕開けしまして、アリアハン王の挨拶・ラインハット王の挨拶と続きます。

そして我らがパピィーの挨拶&乾杯の音頭となり、会場全体が響めきます。
何故に響めくのかって? だってやらかすっしょ……この男は!
みんなそれが解ってるから、期待と不安を抱き締めて爆笑準備を整えてるんですよ。

だけど……
「どうも、只今ご紹介に与りましたティミーの父、リュカです……いや、もう違うな。ティミーとアルルの父と言った方が正しいですね(笑)」
と、なんとも爽やかな始まり方をしました。
勿論こんなんで終わりだなんて私も会場全体も思っておりませんですよ。

「ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、新婦のアルルは異世界で生まれ育ちました。そして運命なのか偶然なのか、ティミーと出会い愛し合う様になったのです。アルルの生まれた異世界にはご両親が健在で、2人の幸せだけを望む僕は……いや私は、2人に異世界へ残る様に言いました……しかし本心を言えば息子と別れるなんて嫌です。その気持ちが出てしまったのか、アルルのご両親にもグランバニアで共に生きる様勧められました。お陰で私には良い娘が増えたのです」

どうしましょう……驚きですよ。
何時でもアレなお父さんが、愛する息子の結婚式でなけなしの真面目力を大発揮。
皆さんキョトンとしながらも、その話に引き込まれます。

「アルルは私の娘です。それは息子と結婚したからではなく、異世界の親友からお預かりした……託されたからです。勿論アルル本人はティミーを愛し結婚する為に異世界へと来たわけですが、私にはそんな事関係ありません。大切な家族ですから……2人とも私にとって掛け替えない家族ですから」

何時しか会場の其処彼処で啜り泣く声が……
「長くなりましたが新郎新婦の父である私からの挨拶とさせていただきます。では乾杯しましょう……」
そう言って手元のグラスを掲げるお父さん。

皆もお父さんに倣ってグラスを持ち起立します。そして、
「乾杯!」
「「「「「かんぱーい!!」」」」」
と、グランバニア国王にあるまじき真面目っぷりで大宴会スタートです!

しんみりムードになっちゃったけど、そこはリュカ家に縁深い人々です。
直ぐに大騒ぎムードに大変身し、食事にお酒(私はジュース)と堪能します。
そして新郎新婦を祝福する為に何人かが出し物をします。

トップバッターはポピーお姉様とリュリュお姉様の漫才です。
漫才というのは語弊が有りますね……何故ならリュリュお姉ちゃんは挨拶だと思ってるからです。
ポピーお姉ちゃんの誘導で秀逸な漫才に変貌しました。

中でも笑えたのは、
「ティミーはシスコン気味で、未だにリュリュに気があります。私も双子の妹として共に過ごしてて、何時襲われるのか不安で大変でした。ですが彼はナルシストではなかった様で、同じ顔の私には興味なかったみたいです」

「いやそうでもないわよポピーちゃん。だって常々言ってたモン……『性格が僕ほど良ければ、最高にいい女なんだけど……』って! だから私が好かれてたのは容姿じゃないと思います」
まさかリュリュお姉ちゃんがそんな事を言うなんて思ってもなかったわ。

会場からは「リュリュさんは性格も容姿も最高です! だから私と結婚してー!」と、誰とは言いませんが大きな一声が……
それに対してリュリュお姉ちゃんの「隊長じゃ役者不足で~す!」との返し(笑)
もうワイワイガヤガヤ皆さん楽しんでますよ。

その後もメイド等の歌や、親しい兵士等の手品ショウなど、お楽しみ満載で大宴会は進んで行き……遂に、グランバニアの歌姫(自称)である私の出番が回ってきました。
予定通り木村カエラの『Butterfly』をお父さんのピアノ伴奏で歌います。

私の予定では、私の歌を聴いた会場の女人共から涙腺決壊のお涙頂戴だったハズなんですが……しくじりましたわ。
先ず、先程のお父さんのスピーチっす。

あれで多少感動してしまった為、耐性がついてしまい簡単に泣きゃしない。
さらにここまでの出し物が面白系だった為、切り替えが巧くいかず……しかも、この世界じゃ誰もが初めて聞く曲だった為、この歌で結婚式に泣くという構図が確立しておりませんでした。

何より会場の女人の殆どが、格好良くピアノを弾くパパの姿に見取れてしまい、私の歌など聴いちゃいない。
だって信じられない事に、新婦が「やっぱリュカさん格好いいわねぇ……」って呟いたんですよ!
ダメでしょ、アンタがこの場でそれを言っちゃ……

これならお笑いに走った方がマシでしたわ。
ですが、この後に歌うお父さんにも同じ事が言えるはず。
自分で作り出してしまったこの空気で、感動から回りさせるが良いのです!

会場の女人共を惚れさせても、感動の嵐にする事は不可能なはず……
父娘揃って『ん? あぁ……まぁ良かったんじゃね?』と評価されるのです。
それが私らにはお似合いなのです……

そう、思ってたのですが……
流石はお父様でありますのよ。
先ず選曲から意表を突かれましたからね。

何と歌ったのはさだまさしの『関白宣言』です。ピアノからギターに替えて弾き語りです。
結婚式に関白宣言って……喧嘩売ってるのかと思いますよ。
実際、歌い始めて直ぐに「ティミーはそんな亭主関白じゃないわよ!」と新婦からのクレームGOGO。

しかし、この歌の凄い所は後半になるに従って盛り上がると言う事なのです。
3番などは泣く為にある様な歌詞じゃないですか!
何時しか会場中から男女問わず啜り泣く声が聞こえてきましたよ。

全てを歌い終え、涙を流す新郎新婦に向き直り言うのです。
「アルル……やっぱり僕には血の繋がった息子が可愛い。だから頼む……ティミーより長生きしてほしい。1日でも良いから長生きして、ティミーを悲しませないでくれ」

もう誰もが号泣ですよ。
アルルお姉ちゃんも泣きながら「はい。私はティミーの事を愛してます……だから絶対に悲しませません!」って、『そりゃ新郎の台詞だろ!』って事を言っちゃいましたよ。

なお……我が城に勤めるメイド連中には“MID45”と言うグループが居りまして、彼女らはミニスカなメイド服を着熟し激しく踊って歌います。
そうです。例のアイドルグループ的なアレです。

プロデュースはパパで、曲目は全部連中のです。
創設にあたり『あと3人足りない……』と嘆いてましたが、パパは強行しました。
彼女らも、まさか王子様の結婚式でデビューするとは思ってなかったでしょうね……

マリーSIDE END



(グランバニア城・応接室)
デールSIDE

壮大な結婚式も終わり、今晩はグランバニア城に宿泊させて貰う為、割り当てていただいた自室へ戻ろうと披露宴会場を出た所で、リュカ陛下に呼び止められ応接室まで兄さんと共に訪れました。
しかも呼ばれたのは我々だけではなく、アリアハン王にテルパドール女王……更には通商都市連合(サラボナ)のルドマン殿もです。

「あれだけの式だったが、何も問題なく終わって良かったなぁ……」
「そうですね兄さん。グランバニアのオジロン閣下やウルフさんは優秀です……短期間であれほどの式を演出させ、そして成功させるんですかね」

呼び出されたものの呼び出した本人が一向に来ない為、先程の結婚式の雑談で時を費やす。
リュカ陛下のカリスマ性を含めグランバニアの人材の素晴らしさは脱帽の域です。
普段ふざけていても、やるべき時に本気を出すリュカ陛下だからこその国造りなのでしょう。

「いや……オジロンさんやウルフ君の優秀さもそうだが、俺が言いたいのは……」
「リュカが式をぶち壊さなかったって事ですねヘンリーさん?」
「私もそれは思いました。あのリュカが大人しく……いや、感動的なスピーチまでするなんて、本当に驚きです」

「兄さんもマスタードラゴン様も、それにルドマン殿まで酷い。リュカ陛下だって息子さんの晴れ舞台を台無しにするようなことはしませんよ」
「しかし娘(コリンズとポピー)の結婚式ではやったぞ。ケーキをホールごとコリンズに投げつけて、クリーム塗れになったコリンズを見て大笑いしてたぞ」

「あ、あれは……お姉(ポピー)さんと別れるのが寂しい(マリー)さんの失態をフォローする為でしょう。兄さんだってポピーさんの説明で解ったはずです」
「それはそうだが……本当のところどうだかなぁ? 娘の時は大笑いしてたんだぞ!」
確かに、その後説教されながらもゲラゲラ笑ってましたけど……

「ヘンリー殿……貴殿はリュカの親友と宣ってるわりには、その親友の事を理解してないのですな。娘の結婚式の時もそうだったが、本日も終始新郎新婦(息子夫婦)の幸せを心で祈ってましたぞ」
人の心を読む事の出来るアイシス様が仰るのだから、本当にその通りなんだろう。

「だからテメーは()の心を読むんじゃねーって言ってんだろ!」
そんなタイミングです……応接室のドアを勢いよく開けリュカさんが怒鳴り込んできたのは。
「これは御先祖様……申し訳ございません。つい……同じ先祖を持つものとして知らしめたかったので」

「ちっ、ヒゲ……喋ったな!」
「はい。皆様には知る権利があると思いましてお知らせ致しました。何か問題でも? この壮大な事実に問題でもありましたか?」
あのリュカさんが悔しそうに歯を食い縛りマスタードラゴン様を睨み付けてます。

「早く奥に行けよ……後ろが支えてんだから!」
すぐ後ろに居たウルフさんが室内に入れずリュカさんに文句を言います。
「ウルフよ……そう言うな。流石のリュカも自分の過ちを後悔してるのだから(笑)」
更に後ろではオジロン閣下が笑いを堪えてウルフさんを宥めます。

「うるさっい黙れお前等! 今日は真面目な話をしようと思ってるの! もうふざけちゃダメなの!」
拗ねた口調で叫びながら、応接室の上座へと座るリュカさん。
その両サイドにはオジロン閣下とウルフさんが座ります。

「そんで……お前が人生に数度しか訪れないという真面目を発揮させ、我らに話をしようとしてるんだろ、如何な用件かな?」
憮然としてるリュカ陛下に対し、珍しく優勢な態度で兄さんが話しかける。

我らの血筋にもリュカ陛下の血が流れてると知った時は兄さんも愕然としてましたが、リュカ陛下の弱点と思ったのか今では悠然と構えてます。
本当は兄さんも嬉しいのかもしれませんね(笑)

「あぁ、実は貨幣の事なんだけど……説明がめんどい! ウルフ、後頼む」
兄さんの態度になのか、アイシス様の暴露になのだろうか、そこら辺は解らないのですがふて腐れちゃってるリュカ陛下は説明をウルフさんに任せてしまいました。

「しかし陛下……私は先程『うるさっい黙れお前等!』と開口を禁じられました。今喋るのも陛下の意に反してるのに……」
グランバニア王の懐刀と呼ばれてるウルフさんらしく、主すらも辟易させる弁術さ。

だが、瞳孔の開いたリュカ陛下に顔を両手で掴まれ……
「お前……いい加減にしないと“近親相姦解禁”にして、お前の彼女を孕ますよ!」
「ごめんなさいごめんなさい……アイツ等アンタになら股開くからヤメて! アンタの娘、殆どファザコンだからヤメて!」

凄い事を人前で叫んでますが、多分ウルフさんの言ってる事は事実でしょう。
ポピーさんも兄さんと口論になると『はぁ~、私のお父さんはもっと格好いいのになぁ』と比較論を展開させますからね。

「リュカ……冗談でもそんな事を叫ぶな。リュリュに聞かれたら押し倒されるぞ」
「だってコイツ……ムカつくんだモン」
オジロン閣下に宥められながらウルフさんを離し言い訳してる。ちょっと可愛いかも……

「あいててて……では、リュカさんの種馬パワーが怖いから本題に入りますね。実はグランバニアで……」
急にだったがウルフさんが今回我々を集めた訳を話し始めた。
その内容は驚くべき事満載で、我が国からの返答は後日へとなる。

やはりリュカ陛下は凄い偉人だと思います。

デールSIDE END



 
 

 
後書き
ティミー君、アルルちゃん、お幸せに。 
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