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パンとコーヒー

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第二章

 その入口に来てだ、二人共眉を曇らせて言うのだった。
「今日店休みかよ」
「そうね」
「折角来たのにな」
「お休みなんてね」
 二人共がっかりとした顔で言うしかなかった。
「それじゃな」
「仕方ないわね」
 こう話してだ、そしてだった。
 岳は今度はだ、菫にこう言った。
「タロット行くか」
「あのお店ね」
「ああ、あそこもいいからな」
「あそこのモーニングいいわよね」
 菫はタロットと聞いて岳に笑顔で答えた。
「量も多くて」
「そうだろ、だからな」
「それでよね」
「あの店に行ってな」
 そうして、というのだ。
「パンとコーヒー食おうな」
「それは絶対よね」
「もう決めたからな」
 頑固な口調で言う岳だった。
「朝はパンとコーヒーにしようってな」
「岳って一旦決めたら変えないからね」
「基本そうだよ」
「一度決めたら絶対よね」
「そうしないとな」
 これは岳の信念だ、それで今もなのだ。
「だから今朝はな」
「パンとコーヒーね」
「パンはトーストだよ」
 これも彼の決めたことだった。
「それでいこうな」
「それじゃあね」
「よし、じゃあな」
 こう話してだ、二人で本日閉店のブルーライオンの前から去ってだ、朝の道を並んで歩いてそうしてだった。
 二人でそのタロットという喫茶店まで着いた、店の前まで来て開店しているのを確かめてだ。岳は菫にほっとした顔で言った。
「開いてるな」
「よかったわね」
「ああ、本当にな」
「これで朝御飯食べられるわね」
「もう十時か」
 携帯で時間をチェックするとこうした時間だった。
「九時に起きてな」
「もう十時ね」
「朝飯食おうと思ってな」
「かれこれ一時間歩いてるわね」
「歩いたら余計にな」
 身体を動かしたからだ、岳は困った顔で言った。
「腹が減ったよ」
「私もよ」
 それは菫も同じだった。
「もうお腹が鳴りそうよ」
「俺もだよ」
 腹の上に右手を置いてだ、岳は言った。
「本当にな」
「そうよね、それじゃあ」
「中に入って食おうな」
「トーストとコーヒーのモーニングね」
「今からな」
 こう話してだ、二人でだった。
 店の中に入ってだ、カウンターのところに行ってその中にいる親父にモーニング二つと頼んだ。だが親父はだ。
 苦笑いになってだ、こう二人に言った。
「悪いけれどね」
「モーニングはですか」
「ないんですか」
「今朝から人気でね」
 見ればだ、店の中にはだ。
 客が結構いた、その彼等がだ。
「トーストはね」
「ないんですか」
「コーヒーならあるよ」
「いや、コーヒーがない喫茶店は」
 そうした喫茶店はどうかとだ、岳はこう返した。 
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