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ジュエル

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第四章

「ずっと見ていたいって思ってな」
「じゃあこれって」
「俺達もう一緒にいるからな」
 それで、というのだ。
「お互い好きだよな」
「うん、そのことはね」
「だったらな」
「結婚、ね」
「そうしないか?」 
 こう菫に言うのだった。
「そうしてずっと一緒にいないか?」
「断ると思う?」
 菫は泣いていなかった、しかし。
 嬉しくて仕方がないといった顔でだ、亮二に答えたのだった。
「こうしたお願い受けて」
「断ることはないよな」
「そう、断らないわ」
 とてもだというのだ。
「断る筈ないから」
「それじゃあな、今度の休みの時婚姻届貰って来るな」
「区役所で」
「そうしてな」
 そのうえで、というのだ。
「一緒に書こうな」
「うん、そうしようね」
「それじゃあな」
「ずっと一緒にいようね、ところでね」
 ここでだ、菫は亮二に彼女から尋ねたことがあった。
「これ琥珀よね」
「ああ、菫ちゃんの目を見てな」
「買ったのよね」
「菫ちゃんのその目が琥珀みたいだからな」
「黒くきらきらとしててな」
「ああ、それでだよ」
「琥珀なのね」
 菫は亮二の言葉を聞きながら頷いていた。
「そういうことね」
「そのままだと思うけれどな」
「高かったわよね」
 菫は亮二に琥珀の値段のことも尋ねた。
「やっぱり」
「まあ宝石だからな」
 それは、とだ。このことは少し苦笑いになって答えた亮二だった。
「それはな」
「ええと、それじゃあね」
「それじゃあ?」
「あの、結婚するのならね」
 ここで菫は顔を上げてだ、亮二に言うのだった。
「指輪必要よね」
「結婚指輪か」
「そう、琥珀買ったけれど」
「高かったからな」
「ってことは」
「今菫ちゃんに言われるまでな」
 まさに今の今までだった。
「忘れてたよ」
「じゃあ結婚しても結婚指輪は」
「絶対に買おうな」
 これが亮二の返答だった。
「金が溜まったらな」
「そういうことになるわよね」
「ああ、それじゃあな」
 こう話してだ、そしてだった。
 結婚指輪は後になった。しかし菫は亮二の心を確かに受け取った。彼女にとってはこのことが最も嬉しいことだった。


ジュエル   完


                          2014・7・27 
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