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ジュエル

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第二章

「もうj結構持っててね。実家に大切に保管してるから」
「おいおい、持ってるのか」
「横浜スタジアムに行った時にいつも貰ってたの」
 そうしていたというのだ。
「ほら、私実家あっちだから」
「それでか」
「そうなの、だからね」 
 それもというのだ。
「サインボールもあるから」
「じゃあ今の選手はどうだよ」
「今の人達もね」
 彼等についてもだった。
「ほら、一緒に甲子園行った時に」
「ああ、そういえば菫ちゃんいつも三塁側に行ってるな」
 つまり阪神の相手チームのベンチにだ。
「その時にか」
「横浜戦の時に貰ってるから」
「いいんだな」
「そういうのもねえ」
「そうか」
「ええ、そうよ」
 菫は亮二にまた笑って答えた。
「別にね」
「そうよ、だから本当にね」
「これといった贈りものはいいんだな、菫ちゃんは」
「特別なのはね」
「俺の気持ちだけでっていうんだな」
「心が篭ってる贈りものが一番じゃない」
 やはり笑って言う菫だった。
「それ以外のものはいいわ」
「そう言われるとな」
 かえってだった、贈りものをする亮二にしてもだ。何を贈るべきか困るものがあった。それで彼はこのことについて暫く考えることになった。
 そしてだ、そうしたことを考えつつだった。亮二は菫との日常を過ごしていた。そしてその中においてだった。
 菫と一緒に朝も夜も二人のスケジュールが合えば一緒に食べていた、この日彼は菫が作ったゴーヤチャンプルを食べていた。
 菫の料理は美味い、それで彼は向かい側に座る彼女に言った。
「美味いよ」
「有り難う」 
 菫は亮二のその言葉ににこりと笑って返した。
「そう言ってくれることがね」
「菫ちゃんも嬉しいだな」
「やっぱりね、食べてもらうってね」
「美味しいって言ってもらえることがか」
「その気持ちが嬉しいのよ」
「本当に気持ちなんだな」
「それは亮二君もよね」
 彼もだとだ、菫もそのゴーヤチャンプルを食べつつ言った。
「お店の店長さんでお客さんにね」
「ああ、笑顔で有り難うって言われたらな」
「嬉しいわよね」
「それが一番嬉しいよ」
 接客業をしていて、というのだ。
「何ていってもな」
「そうよね、だからね」
「それでか」
「そうでしょ、気持ちが嬉しいのよ」
「食べて感謝してもらえる」
「それがね」
「そうだよな、心がないとな」
 それこそというのだ、亮二もまた。
「嬉しくないな」
「その通りよね」
「だからか」
「そう、それで今もね」
「俺が美味いって思ってくれていることがか」
「嬉しいのよ」
「そういうことなんだな」
 亮二は菫のその言葉を聞いて頷いた、そして。
 菫のその顔を見た、その目も。
 菫の目は喜びできらきらと輝いていた、そしてだった。
 その目を見てだ、こう言ったのだった。
「決めたよ」
「決めたって?」
「菫ちゃんへの今度の贈りものな」
「だから気を使わなくてもいいわよ」
「いや、俺もさ」
 亮二にしてもというのだ。 
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