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ロックマンX~5つの希望~

作者:setuna
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第五十話 出撃

 
前書き
第五十話の更新。
今日から3日間、風邪を拗らせたために休ませて頂きます 

 
エックス達がハンターベースに帰還すると、ルナは既に傷が完治してしており、継ぎ足された片足も何も問題なく機能していた。
事情を知った時の彼女の絶望に染まったような表情は見ていて痛々しい。

シグナス「ご苦労だった。エックス、ゼロ、ルイン」

イレギュラーハンター総監のシグナスが総監らしく重厚な声で3人を迎える。
彼もアクセルのことを聞いたのだろう。
皆の知らないアクセルとなり、銃を自分達に向けてきたことを。
シグナスも戸惑わないわけがない。
苦楽を共に過ごした仲間がイレギュラーと化したことに。
しかし、今は感傷に浸っている場合ではない。
司令官であるなら尚更だ。
シグナスは部下を統べる威厳に満ちた表情を浮かべ、口を開いた。

シグナス「ルイン達の活躍もあって、残りのイレギュラーは残り2体となった。だが油断は禁物だ。早速エックスとゼロに出撃してもらう。ゼロはレイヤーと共にミッションに当たれ、行き先はプリム・ローズだ」

ゼロ「了解」

レイヤー「分かりました」

シグナス「エックスはルインと共にブースター・フォレストに迎え、エイリアとパレット、アイリスはバックアップを。ルナはもう少し休むといい」

エックス「分かりました」

そしてエックスは視線をルインに遣ると、気づく。

エックス「(ルイン…?)」

彼女は悲痛な表情で俯いていた。
不安が胸中に渦巻き、苛まれているような表情。
エックスが声をかけようとした時、ゼロがレイヤーと共に転送準備に入っていた。

ゼロ「行くぞレイヤー。アイリス、バックアップを任せた」

アイリス「任せて…ゼロ、気をつけて」

ゼロ「ああ、エックスも気をつけろ。忌ま忌ましいが、新世代型レプリロイドの性能は伊達ではないらしい」

エックス「ゼロ…分かっている…(でも…アクセルは……新世代型の前に、俺達の仲間なんだぞ?)」

シンクロシステムで電子頭脳に言葉を伝えるエックスにゼロからもエックスの電子頭脳に言葉が伝わる。

ゼロ「(分かっている…だが、アクセルが俺達に銃を向けた時は、イレギュラーとして処分するしかない。それが…俺達イレギュラーハンターだ)」

転送の光がゼロとレイヤーを包み込んだ。
光が消えた時には2人の姿はない。

エックス「ゼロ…」

アイリス「エックス…」

悲しげな表情でエックスに歩み寄るアイリス。
彼女もアクセルをとても可愛がっていた。
アクセルとルナがイレギュラーハンターとなる前は当時は所謂年下のような存在だった為に、自分より年下のアクセルやルナを弟のように可愛がっていた。
それなのにいきなりアクセルがイレギュラー化して、自分達を攻撃してきたなど認めたくはないのだろう。

アイリス「大丈夫よ、エックス。アクセルはきっと正気に戻せるわ。諦めなければきっと…きっと大丈夫だから…」

自分に言い聞かせているようにも聞こえるアイリスの言葉にエックスも少しの間を置いて頷いた。

アイリス「エックス、ルインの傍に居てあげて。アクセルから攻撃を受けて、ルインはきっと傷ついてる」

エックス「ああ」

いくら身体の傷は治せても心の傷は消えないのだから。



























そしてプリム・ローズに転送された2人は、一気に通路を駆け抜ける。
プリム・ローズは、重力制御システムを実験する研究施設であり、サイバースペースに似た冷たい部屋に、金属質の巨大なブロックが置かれていた。

アイリス『ゼロ、レイヤー。聞こえる?この施設には、重力を制御する装置があるようなの。重力方向を変えると、周囲の物体にも影響が出るから気をつけて』

ゼロ「ブロックに押し潰されないように注意しろってわけか…面倒な仕掛けだ」

レイヤー「急ぎましょうゼロさん。」

ブロックが積まれた部屋の中で、2人はメカニロイドを破壊しながら会話をしている。

ゼロ「羅刹旋!!」

レイヤー「雷光閃!!」

空中にいるメカニロイドはゼロが空中での回転斬りで破壊し、レイヤーはレイピアに電撃を纏わせ、高速でメカニロイドを切り捨てた。
大した物だと、ゼロはレイヤーの剣術を評価する。
確かにナイトメアウィルス事件以来に時々何度か会い、柄にもなくいくらか指導をしたが元々非戦闘型であるにも関わらず、ナイトメアウィルスの大量発生地でゼロとルナと一緒だったとは言え、殆ど無傷で潜り抜けた実力はかなりの物だ。
新世代型レプリロイドとの戦いで、彼女の剣の腕は飛躍的に上がっていた。
メカニロイドを殲滅すると、ゼロとレイヤーはスイッチを作動させる。

レイヤー「スイッチによって、重力の制御システムが違うようですね」

厄介な仕掛けだとゼロは顔を顰めた。
彼は頭を使うミッションはあまり好まない。
戦っている方が遥かに気楽だ。
そして、傍らを走るレイヤーが、唇を噛み締めた。

ゼロ「レイヤー?」

彼女の急な変化にゼロは疑問の表情を浮かべ、彼女を見遣る。

レイヤー「…私は彼らを…許しません。こんな戦いを起こし、皆を傷つけたイレギュラーを…ゼロさんやエックスさん、ルインさん達だけじゃありません。エイリア先輩やパレットだって」

普段、感情を表に出さない彼女が怒りに震えていた。
ゼロの知らない彼女がそこにいる。

ゼロ「(俺達が寝ている間に。彼女達には辛い戦いを強いてしまった……。)」

海を思わせるアイスブルーの瞳が悔恨に滲む。
感傷が胸に沸き、前方の景色が一瞬遠いものに見えた。

ゼロ「そうだな。だが、焦りは禁物だ。焦りは判断力を低下させる。」

戦場において、過度の感情は逆効果となる。
それが分かっているからこその言葉。

レイヤー「分かっています。あくまで、冷静に。」

ゼロ「ああ」

2人はそれぞれの武器を握り締め、更に奥へと突き進む。





































駆け抜ける先に執着の扉があった。
扉の先の開けた空間には、こちらに背を向けたレプリロイドがいた。
一見隙だらけだが、背中から放たれるオーラは、迂闊に踏み込めば命がないと思わせる程の恐ろしさを抱いていた。

ゼロ「この反重力研究所の主任研究員、グラビテイト・アントニオンだな?」

ゼロが殺気を内包した声で問うと、レプリロイドは静かに振り返った。

アントニオン「ようこそ、このステージの終着点へ。歓迎しますよ」

知性を感じさせる穏やかな声。
反乱が起こる前は新世代型レプリロイドの中でも優れた研究者だったアントニオン。
ゼロはその片鱗を垣間見た気がする。
尤も、今は戦いを引き起こした憎むべきイレギュラーであることに変わりはない。

ゼロ「シグマが貴様を狂わせたのか?」

アントニオン「狂った…?究極の破壊者となれる可能性を持ち、あの方と同じ素質を持つあなたがそんなことを口にするなど嘆かわしい…。イレギュラーか否かといったレベルで、あの方を測るのは不可能です」

やはり狂っている。
アントニオンの言葉を聞いたゼロは自然とセイバーを握る手に力を込めた。

レイヤー「…私達に理解出来ることは、あなた達を止めなければならないということです」

凛と言い放つ。
気高い華のような構えに、美しい長髪が揺れた。

アントニオン「愚かな人だ…私の邪魔をするというのならば、排除するまでです!!」

瞬間、真四角のブロックが現れる。
キューブドロップ。
巨大な物体を投げつける技。
重量のあるそれは、ゼロとレイヤーの元に勢いよく落下する。
バン!!と弾ける音が小霊し、キューブが砕け散る。
粉々の破片の下には何もない。
2人は寸前で回避していた。

アントニオン「ふふ…」

動物の蟻がそうであるように、アントニオンは壁をよじ登り、天井に移ると、緑色の液体を撒いた。

レイヤー「ゼロさん!!」

ゼロ「しまった…っ!!」

フォーミックアシッド。
粘着質の液にゼロの足が取られる。
レイヤーは直ぐさま駆け付けると、レイピアで液を切り裂いた。

ゼロ「助かった」

見上げると、アントニオンが超越者の如きの顔で見下している。
新世代型レプリロイドとして、アントニオンは旧世代のレプリロイドをゴミのように見下ろしていた。

アントニオン「さっきの威勢はどうしたのです?このままでは私を倒せませんよ」

ゼロ「貴様…」

レイヤー「ゼロさん」

ふと我に返る。
彼の傍らでは、レイヤーが冷静にアントニオンの隙を伺う。
ゼロのアドバイスを彼女は忠実に守っている。

ゼロ「すまない。言った俺が忘れていた。」

伏せ目がちに笑うと鼓動を落ち着かせる。
アントニオンが地に降り立つと、両手を掲げて意識を集中させる。
次の瞬間、巨大なキューブが次々に出現した。

ゼロ「(なる程、これで確実に押し潰すつもりか…)」

落下速度はかなりのものだ。
僅かでもタイミングを外せば下敷きになるだろう。

ゼロ「(レイヤー!!)」

レイヤー「(分かっています!!)」

シンクロシステム起動。
全身の感覚を研ぎ澄ませ、キューブを回避していく。
1つずつ1つずつ、キューブを回避していき、キューブの砕け散る音を聞きながら、敵との間合いを詰めていく。
落ちてくるキューブの数は10を数えただろう。
地面に叩きつける音と振動が、キューブの恐ろしさを痛感させた。
死が一瞬で到来するものだと、嫌でも思い知らされる。
しかし、これを乗り越えられれば勝てる。

アントニオン「な…!!?」

思わずアントニオンは目を見開いた。

ゼロ「これで終わりか?やはり性能が高くても戦いに関しては素人だな」

先程の仕返しも兼ねて余裕の笑みを浮かべながら言い放つ。

アントニオン「キューブを全て回避したというのか!!?」

必殺技を放っている間のアントニオンは無防備であった。
彼は両腕を掲げたまま、間合いを詰めてくる戦士を見つめるしかない。
疾走する戦士達は、まるで演舞でも披露するかのように、引き締まった勇姿を見せ付けた。

ゼロ「行くぜ!!」

2人のリミッターが解放され、セイバーとレイピアの光刃が巨大化する。
2つの剣が哀れなる獲物に躍りかかる。
切り刻まれた身体は生死を問うまでもない。

アントニオン「(………愚かなる旧きレプリロイドよ)」

死の気配を感じながら、アントニオンは低く笑った。
声は出ず、従って2人に笑いは届かない。
レプリロイド…。
人を超える新たなる生命体。
進化した者。
彼は優れた生命体として、自分より劣る生命体を支えてきた。
せれは劣る種への哀れみであり、慈悲であった。
だがその心は愚かな人間がプログラムしたもの。
自分の都合がいいように。
自分はプログラムをされた思考を破った特別な存在。
特別な者のみが生きる世界を実現するという理想は見る見るうちに自分から遠ざかっていくが、彼に後悔はなかった。
生き残った者達が後に続く。

アントニオン「(そして旧き世界が崩壊するのを、恐怖に慄きながら迎えるがいい)」

壮絶な笑みを浮かべながらグラビテイト・アントニオンは果てた。

ゼロ「やったな…」

敵の残骸を見下ろしながら、ゼロが独り言のように呟く。
傍らでレイヤーも頷く。
残る新世代型レプリロイドのイレギュラーは後1人。 
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