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ソードアート・オンライン ~呪われた魔剣~

作者:白崎黒絵
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神風と流星
Chapter1:始まりの風
  Data.7 招かれざる道化

「来たぞ!」

 俺は声を張り上げて敵が来たことを伝えるが、ドラゴンのあの巨体はシズクにもしっかり見えていたらしく、

「え!?ちょ、ま、待って!?何か想像してたより全然強そうなんだけど!」

 実物を見て怖気づいたらしいシズクに、俺は簡潔に説明する。

「大丈夫だ!所詮は第一層のクエストMob。見た目ほど強くはない!」

「そ、そっか。だよね!」

「ああ。精々この層のフィールドボス×2くらいの強さだ!単体ではな!」

「ちょっと待って!何か安心感が一気に吹っ飛ぶような事案が聞こえた気がする!」

 ちっ。何とか誤魔化そうとしたが無理だったか。

「一撃喰らったらほぼ終わりの、爪と牙と尻尾とブレスによる攻撃を四方向警戒してれば問題ない!」

 そう言って俺はドラゴンたちが来ている方向に向かって走り出す。

「むしろ問題しかないよそれ!」

 と言いつつも走り出した俺についてくる辺り、今の掛け合いでだいぶ恐怖と驚きは薄れたらしい。良かった良かった。

 俺と赤いドラゴンのうちの一匹――――《赤の金剛龍(ドラゴン・ダイヤ)》の距離が直線にして約10mくらいになったとき、奴がブレスを吐く予備動作(プレモーション)を始めた。

 それを見て俺は慌てず冷静に腰に携帯していたナイフを一本取出し、肩に構えて投げる。

「うおらっ!」

 投剣スキル基本技《シングルシュート》のシステムアシストによって高速で飛んでいったナイフは、見事ブレスの準備をしていたドラゴン♦の口に刺さる。

 すると口の中で溜めていたブレスが暴発し、ドラゴン♦はもがき苦しみながら落ちてくる。

「シズク!スイッチ!」

「オッケー!」

 すかさず俺は近接攻撃役のシズクと入れ替わり、投剣で他の三体のドラゴンを牽制する。

 俺が牽制している間、シズクは目にも止まらぬ速さでドラゴン♦に攻撃を加えていく。それは昨日、俺が迷宮区で見たものよりさらに速く、さらに鋭くなっていた。

 もちろん相手だってただでやられてくれているわけではない。一撃当たっただけで致命傷になり得る爪や尻尾を使った攻撃を次々仕掛けてくるが、それをシズクは圧倒的な速さで避け続ける。

「これで、ラストッ!」

 シズクが片手剣スキル単発技《バーチカル》でドラゴン♦のHPを削りきる。即座に敵はガラス片のようなデータの塊になり、虚空に消えてゆく。

 俺はさっきと同じ方法や翼を根元から断ち切るなどして順調に他のドラゴンも落としていき、シズクがそいつらに近接攻撃でトドメを刺していった。

 そして最後の一匹、黒いドラゴンの片割れの《黒の槍剣龍(ドラゴン・スペード)》をシズクが倒しきった。

 これでクエストは完了、のはずだ。少なくともβ時代はそうだった。

 だが、何だこの違和感は。何かが足りないというか、どこかがおかしいというか。

 俺のその疑問は、次の瞬間に発せられたシズクの発言によって解消された。

「何だか予想してたり話に聞いてたより弱かったね。本当にこれが単体でフィールドボスの2倍の強さを持ってるの?」

「そうか……それだ。俺が感じてた違和感は」

 シズクの予想より弱かったのは仕方が無いにしても、俺が伝えた情報より弱いってのはどういうことだ?

 俺はβ時代、何度もこのクエストを体験した。ドラゴンたちの強さは完全に把握している。

 だが今回はその情報よりドラゴンたちは弱かった。では、その理由は何だ?

 茅場が正式サービスで下方修正した?だったらさらにその理由は?

 あの正式サービス開始日の茅場の発言や現在までの死亡者数を鑑みるに、奴はプレイヤーのために安易にクエストの難易度を下げたりしない。ということはもしかして、まだこのクエストは――――

 ピコーン

 俺の思いついた最悪のシナリオを裏付けるかのように、聞きなれたSEが俺にクエスト手順の進行を伝えてくる。

 恐る恐るそれを見てみると、そこにはこう表示されたいた。

『《赤黒の道化龍(ドラゴン・ジョーカー)を撃退せよ!』

 ボスモンスターの追加。これが、茅場が四体のドラゴンの強さを下げた理由――――

「ねえルリくん……?気のせいかな、もう一匹向こうの空から来てるんだけど」

 シズクの引き攣った声に導かれて空を眺めると、ソイツはいた。

 先ほど倒したドラゴンたちより遥かに大きい体躯。赤と黒の入り混じった皮膚。削岩機のような爪と牙に、大木みたいな尻尾、巨大な翼。HPバーはまさかの三本。つまりあいつは、フロアボス級の強さを誇るって訳だ。

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 大音量の咆哮に思わず耳を塞ぎながら、俺は思った。

 『さて、どうやって逃げようか』と。 
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