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魔法少女リリカルなのはStrikers~誰が為に槍は振るわれる~

作者:nk79
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夢追い人
  第4話 探索任務

 
前書き
更新ずいぶん遅くなってしまった……しかも短めorz
次話こそはもっと早く更新したいです(泣)

それでは第4話 探索任務、始まります。
  

 
  
 第97管理外世界、その世界の広大な宇宙に浮かぶ惑星の一つ地球。そしてその地球に多く存在する国の中の一つ日本の、これまた多く存在する街の一つ、海鳴市。
 その海鳴市の緑豊かな森に囲まれた湖畔のコテージの近くに、独特の光を発する円形の模様が浮かび上がる。
 それは魔法によるもの。
 魔法技術のない管理外世界には本来あるはずのない光である。
 その光の中にいくつかの人影が生まれ、その姿を現した。

「ん~、転移終了♪ やっぱり転移の後のこの解放感はいいな~」

 現れたのは機動六課のラディと隊長二人、そしてFWの4人。
 気持ちよさそうに伸びをするラディに対し、他の6人はげんなりとした様子。
 それに気づいたラディは首を傾げながら話しかけた。

「みんなどうしたそんな疲れた顔して。転移酔いでもした?」
「……転移酔い?」

 気遣うような顔を見せるラディに返ってきたのは誰からともなくあがった地の底を這うような低い声。
 年頃の乙女らしからぬその声にラディは顔を引き攣らせながら一歩身を引く。
 しかし引いたその距離もなのは達が一歩踏み出すことによって埋まり、そしてもう一歩踏み出すことによって逆に距離が縮まる。

「転移酔い、転移酔いって……」
「あの状況の後で転移酔いを心配してくれますか、そうですか……」
「え、なに? みんなしてそんな怖い顔してどうしたの……?」

 冷や汗を流しながら一歩、また一歩と下がるラディに一歩二歩三歩と他のメンバーは距離を詰めていく。
 次第に詰まっていく距離に危機感を感じ、ラディも足を下げるペースを早めていが湖の縁のところでとうとう足が止まる。
 動けなくなったラディに距離を詰め切ったなのは達は勢いよく顔を上げた。

「なに? じゃないよ!! ほんとにもう!!」
「ラディさんがはやて部隊長をからかうせいで抑えるこっちは大変だったんですよ!!」

 地上本部の転送ポートまでの道中、ラディが自身の正体を明かした後、はやてのあれやこれやの苦労をからかいそれにはやてが怒って暴走したのだが、どうやらその反応が予想以上に面白かったらしく、ラディはその後も延々とからかい続けたのだ。
 お蔭ではやての頭の血は上がりっぱなしであり、ヘリから降りて本部に着いた後も隙あらばラディを殺れないかと魔導書(デバイス)を展開する始末。
 広域殲滅魔法を得意とするはやてが暴れ始めたら一体どうなることか。二人が別れるまでの間、他のメンバーが生きた心地がしなかったのは言うまでもないことである。

「ラディさんいくらなんでもはやて部隊長からかいすぎです!!」
「抑えるこっちは大変だったんだよ!!」
「うぅ…すいませんでした!!」

 非難の嵐にさすがのラディもまずいと思ったのか、すぐに素直に頭を下げる。
 しかし逆に素直すぎたのかなのは達は少し納得がいかない様子だった。
 この状況をどうしたものかと悩むラディ。そこに一つの助け舟が現れる。

「まぁちょっとやり方はアレだったけど、うまく打ち解けることができたみたいだし、結果オーライということで」
「う~ん、まぁフェイトちゃんがそういうなら」

 フェイトの助け舟に一様に納得したようで、ラディへの非難はそこで収まった。
 そこに低いエンジン音を鳴らしながら一台の車が近づいてくる。

「あ、車」
「この世界にも車ってあったんですね」
「魔法技術がない世界の中ではそこそこ高い方の文化レベルを持ってる世界だからな、ここ」

 こちらに近づいてくる車に意外そうな顔をするスバルとティアナにラディが一応といった感じで説明を入れる。
 そうこうしているうちにすぐ近くまで近づいてきた車はスピードを落とし停車する。
 車のドアが開き中から現れたのは、なのは達と同じくらいの年頃の金色の髪をボブカットにした活発そうな女性。

「なのは、フェイト」
「アリサちゃん」
「アリサ」

 アリサと呼ばれたその女性は駆け寄っていったなのはとフェイトとハイタッチを交わし、楽しそうにおしゃべりを始めた。
 楽しくおしゃべりをする三人の輪に一緒に来ていたリインも加わり、さらに話が盛り上がる。
 その様子を残されたラディとFW陣は遠目に眺めていた。

「ティア、ティア。あの人って現地の方……だよね?」
「そうだと思うわよ。なのはさん達の知り合いみたいだけど」
「アリサ……あぁ、アリサ・バニングスか」
「えっ、知ってるんですか!?」

 ラディの口から出たアリサのフルネームにエリオが驚く。
 それにラディは知っていると頷いた。

「アリサ・バニングス。この世界の住人でなのはさんやフェイトさん、はやてさんの幼馴染。魔法や管理局のことも知っているみたいで、局の観察対象ランクEのデータブックに載ってたはずだ」
「観察対象ランクE……ってたしか、魔法に対する知識を持つ管理外世界の住人、でしたっけ」
「そう。たぶんなのはさん達から聞いたんだろうな。だから魔法や局の話がタブーってことにはならないから、あまり気構えないでいいぞ」

 ラディの解説にFW陣は感心したように頷く。
 そうこうしているうちに話にも一段落着いたのか、アリサと一緒になのは達が戻ってくる。

「紹介するね。私となのは、はやての友達で幼馴染」
「アリサ・バニングスです。よろしく」
「「「「よろしくお願いします!!」」」」

 フェイトの紹介にラディとFW陣は元気よく返事をする。
 そこでアリサが不思議そうな顔でなのは達に尋ねる。

「そういえば、はやて達は?」
「別行動ですぅ。別の転送ポートから来るはずですので」
「多分、すずかのところに」
「そっかぁ……ちょっと残念」
「また後で会えるから、ね」
「うん、そうね。あ~はやてとも会うの久しぶり♪ 楽しみだな~」

 瞳を輝かせて楽しそうに笑うアリサに優しい笑顔を向けるなのは達。こうしてみるとどこにでもいる普通の女の子のようだった。
 しかし年相応の笑顔もこちらに向き直った時には消え、いつもの管理局を引っ張るエースの顔に戻っていた。

「さて、それでは改めて今回の任務を簡単に説明するよ」

 なのはの言葉にFW陣は気合十分といった返事を返す。

「捜索地域はここ、海鳴市市街地全域。反応があったのは、ココとココと、ココ」
「移動してますね」

 展開されたスクリーンに離れて表示されたロストロギアの反応に、ティアナが難しい顔をする。

「そう。誰かが持って移動しているのか、独立して動いているのかは分からないけど、」
「対象ロストロギアの危険性は今のところ確認されてない」
「仮にレリックだったとしても、この世界は魔力保有者が限りなく少ないから、暴走の危険性はかなり薄いね」

暴走の危険性が薄いというフェイトの言葉にFW陣の顔がほっとしたように緩む。

「何が起こるか分からないし、場所も市街地。油断せずしっかり捜索していこう」
「では、副隊長たちには後で合流してもらうので」
「先行して出発しちゃおう」
「「「はい!!」」」

 普段は静かなFW陣の元気な掛け声が響き、なのはとフェイトの指示の下、各々がロストロギア回収のために動き出した。
 こうして海鳴市でのロストロギア回収出張任務は、本格的に幕を開けたのだった。


○●○●○●○●○●○


 海鳴市にいくつかある公園の一つ。かつてなのはとフェイトが戦い、そして再会を誓って別れた公園とはまた別の公園で、フェイト、エリオ、キャロ、ラディの4人はサーチャーとセンサーの設置を始めていた。

「すまんな、少し遅れた」
「あ、シグナム」

 公園の入り口の方から歩いてきたシグナムに声を掛けられ、フェイトが顔を上げる。
 作業を一時中断し話を始めようとしたフェイトに、手でそのまま作業を続けていいと合図しながらシグナムは話しかけた。

「それで、私は何をすればいい? いや、その前に作業はどこまで進んでいるのか、と聞くべきだったか」

 自分の仕事の質問を引っ込め作業の進捗を訪ねるシグナムに、フェイトは上機嫌な笑顔を見せながら、それがですねと前置きをして答えた。

「もうほとんど終わっちゃいました♪」
「……なんだと」

 フェイトの答えに驚きながらシグナムは腕にはめた腕時計を確認する。
 フェイトから先に作業を始めると連絡があってから確かに時間は少し過ぎているものの、あくまで少しだけ。当初予定されていた時間の3分の1も経っていない。
 時間を確認して驚くシグナムの様子に満足そうに笑いながらフェイトは言葉を続けた。

「ラディ君がすごく頑張ってくれたんだ」
「メイフィルスが?」
「うん。自分の仕事をしながらエリオとキャロにフォローやアドバイスをしてくれて。ほら、あんな感じに」

 そう言ってフェイトが指さした先には、3人でサーチャーの設置をするエリオとキャロ、そしてラディの姿。
 未だおっかなびっくりといった様子のエリオとキャロを一歩下がったところで見守りながら、なにかミスがあればその都度修正し、作業に詰まれば近くに寄りながら作業を教えていた。

「その上ほんとは私がやろうと思ってた各サーチャーの起動点検もやってくれて、お蔭で私は各サーチャー間のリンクの構築に専念できたんだ。後はもう、最後の仕上げだけ」
「それはまた……すごいな」

 感心した様子でシグナムはほうと息を吐く。
 だがそこで少し顔に影が差す。

「流石は本部の人間、といったところか」
「……うん。そうだね」

 いかに彼が優秀で頼りになる人間でも、彼の立ち位置は六課側(こちらがわ)ではなく、地上本部側(あちらがわ)。それを忘れるなと視線を向けながら念を押すシグナムにフェイトは、分かっていると悲しそうに頷いた。
 彼女自身、エリオやキャロと一緒に作業をするその背中を見ながら何度も思っていたことなのだから……

「フェイトさーん。サーチャーの設置、完了しましたー」

 キャロの間延びした明るい声にはっとしながらフェイトは声のしたほうへと顔を向ける。
 顔を向けた先には一仕事終えた達成感に満ちた顔でこちらに歩いてくる3人の姿があった。
 3人の距離はこの公園に来た時よりもずいぶんと縮まり、その空気からもどこか緊張したものがなくなりやわらかいものへと変わっていた。
 その姿に一抹の寂しさを感じながら、フェイトは手を振って分かったと応える。

「最後くらいは私がやろう。何もしなかったというのはいくらなんでも副隊長としての沽券に関わる」
「シグナム……」

 分かりづらい気遣いを向けながらスクリーンを開くシグナムに心の中で小さくありがとうございますと礼を言う。
 しかしフェイトは自分のスクリーンを閉じなかった。

「でも流石に、最後のお仕事を副隊長に全部任せるわけにはいかないので。それはそれで隊長としての沽券に関わります」
「ふっ、強情なやつめ」

 冗談めかしたフェイトの言葉に軽く笑うシグナムに釣られるようにフェイトも笑った。
 こちらへ来るラディ達を待ちながら、フェイトは上着のポケットに手を入れ、車のキーを取り出す。

「というわけで、私とシグナム副隊長で仕上げをするから、3人は先に車にいってエンジンを温めておいて」
「了解しました」

 やわらかい笑顔を浮かべながら車のキーをもらおうと開かれた手に、フェイトは車のキーを置き、再びスクリーンに向かって最終確認の準備を始める。
 自分たちの横を過ぎ、キーを受け取ったラディ達は車の方へと歩いていく。
 何を話しているのかは分からないが、おしゃべりに花は咲いているのだろう。楽しい笑い声が徐々に遠ざかりながら響いていた。
 響く笑い声を背に、フェイトは作業を始めて何度も思ったことを再び思う。

 本当に、彼が仲間(こちらがわ)だったなら良かったのに……。



to be continued

 
 

 
後書き
読んでくださってありがとうございました!!
楽しめてくださったなら作者冥利につきます。
もう少し書く予定でしたが、キリが良かったので今回はここまでです。
年内にもう1話くらい更新したいと思っていますが……がんばろ。

感想、ご意見お待ちしています。
それでは、失礼します。
  
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