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『自分:第1章』

作者:零那
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『何者?』

数ヶ月が過ぎて、ユウが図面の勉強の為『兄貴』と呼ぶ(当時30前半)人を家に連れて来る様になった。

夫婦仲は微妙。
零那の気持ちは冷めてた。
別居しはじめたその日からも、毎日上に帰る。
御飯も上で食べる。
だから零那はユウの御飯は作らんことにした。
その代わり、姑に食費を渡すようになった。

姑の会社の御歳暮やクリスマスなどのギフト関連のノルマも協力してる。
生協の宅配も勧められて共同で払ってる。

デリは続けてる。
でも、出勤は減らした。
娘との時間が欲しいから。
『母親としての自分』が、あまりにも不確かで怖かった。

産後最短で復帰するキャリアウーマンや、生活の為に労働を強いられてる人は沢山居る。
そんな人達は、母親としての自覚や自信をどう身につけてるのか。
一緒に過ごす時間が短い中で、どうやって母性をフル活用してるのか。
不思議でならん。
それとも、そんなん無くても生きていける?
実際、親なんか居らんでも生きていける?
とりあえず何か飲み食いしてりゃ死ぬことはない?
どれくらい一緒に過ごして、どれくらい解ってあげられるのが、親として普通って言える?
『普通』が解らんくてホンマに怖かった。
毎日毎日悩んだ。
泣いた。

改めて親を恨んだ。
零那は普通じゃ無い。
解ってた。
解ってたくせに。

『躓くな、こんな事で』
『同じ轍を踏むな』
『恨んでも仕方ない』
『自分が選んだ道』
『親は自分』
『育てるのは自分』
『自信なんか要らん』
『心を見よう』
『解る努力をしよう』
『一緒に歩んでいこう』

とにかく前向きに考えることに必死だった。
無理矢理...
苦しくて毎日泣いてた。
こんなに泣いたこと無かった。
それくらい泣いてた。
ほんま弱い。
母親になれてない。
ただ産んだだけ。
そんなん母親じゃ無い。

自分は一体何なのか。

嫁として最低。
母親として最悪。
女として汚物。
人間として汚物以下。

自分は何者にも成れん。
形として存在せん魂?
浮遊霊と同じ?
未練や恨みを残し漂ってる?

『怖い』
ただそれだけ。

『大事にする』
『愛する』
それが何を示すのか解らずに苦しんだ。

もっともっと娘との時間を過ごせば、何かが解る気がした。
でも空回りが多くて精神的に病んだ。
『母親』という立場になるべき人間では無かったと後悔した。
改めて、産んでしまったことを申し訳ないと悔いた。
こんな奴が親で娘が可哀想だと...
凄く情けなかった。

 
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