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聖魔弾の銃剣龍神皇帝と戦姫

作者:黒鐡
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第2巻
  犬猿の仲×ティグルに質問

「さっきの映像にあったヴォージュ盗賊団で、その内十数人が身に付けていたそうだ。兜や籠手は・・・・あったあった、この中にしまってあったがこれだ」

兜と籠手を置いてから、エレンは椅子から立ち上がってテーブルに回り込むと、俺が床から置いた鎧一式に歩み寄って観察を始めた。

「・・・・・オルミュッツ製の甲冑か」

「リムも同じ事を言っていたな、それとそれを着ていた者達は神兵の死神で魂だけを刈り取ったと言ってたからほぼ無傷で手に入れた」

俺の言葉に通りで新品に近いのかと言いながら、エレンは鎧の内側、脇腹辺りの目立たないところを指差した。そこには見た事ない何らかの模様が刻印されていた。俺の故郷だと家紋に近い感じではあったけど。

「戦神トリグラフを模したものだ。間違いない」

戦神トリグラフは、ブリューヌ・ジスタートで信仰される十神の1柱。傭兵や軍人に信仰されるが、俺達で言うならスラヴ神話に登場する神の名前である。

「オルミュッツの甲冑は値が張るんだ。気に食わない話だが、こいつは我が国でも一、二を争うほど出来が良くてな。製法が独特で、軽さの割に硬い。使い古された傷だらけの物ならともかく、食い詰め者の野盗崩れが、いくつも持てるような物じゃないな」

「オルミュッツといえば、確かライトメリッツから南方にある公国だったな。公国だから戦姫が治めているはずだから、この辺りだったか」

俺が手に持っている投影型の地図を出したら、ちょうどオージェ子爵が治めているテリトアール地方からヴォージュ山脈を越えた辺りだった。俺は端末を消してから恐らくここに来るであろう者に見られたくないので端末をポケットの中に入れた。

「リュドミラ=ルリエだったか、オルミュッツを治めている戦姫は」

「ああ、口を開けば礼儀だの品性だのとやかましいくせに、自分がジャムをぶら下げて歩くのは嗜みだと抜かす、何というか芽の伸びきったジャガイモのような女だ」

そろそろ本人登場するかもと思いながら、こちらに来る者に関しては口を開くべきではないと思った。それにエレンが言っているのは完全に罵倒している感じであった。まあそれに俺は彼女に会っているから顔は分かる。そん時は創造神と名乗っていてハリセンブッ叩いてあげたけど。

「・・・・黙って聞いていれば、誰がジャガイモですって!」

扉を強引に開け放つ人物が入ってきたが、俺はやれやれと言った感じであった。少女の怒声が居間に伝わると、振り返る俺とエレン。一人は疲れ切っていたリムともう一人は王宮で一度会った事のある戦姫だ。まあ今の状態だと初めましてなのかな?肩の辺りまで切り揃えた青い髪と、白い大きなリボンに華奢な身体を包む絹と薄衣の服が可憐かどうかは不明である。現にラヴィアスが何やら申し訳なさそうに輝いていたように見えた。

「・・・・リム。なぜ私の館にそいつが足を踏み入れるのを許した」

激しい怒気を帯びた、地の底から響いた声だったが俺には何も感じない。殺気ならもっと濃密に出ないのか?と思ったがここで出す訳にもいかんだろう。

「戦姫たる方を、追い返す訳には参りません」

血の気の通っていない人形か純血の吸血鬼並みに淡々と応じた。

「戦姫?」

俺は知らないフリをしていた、一度会ったとしても今の俺はプトレマイオス神国の大公だけだ。まあ戦姫より上位なのは間違いなさそうだけど、彼女は胸を張り通る声で名乗った。

「ジスタートが誇る戦姫の一人。『破邪の尖角』が主、リュドミラ=ルリエよ」

「帰れ」

「エレン、客人に対して失礼じゃねえのそれ?」

エレンの声が冷たく容赦がない。和やかだった空気が台無しになったと俺はラヴィアスを睨んだらまるで申し訳なさそうに、輝いたように見えた。この二人は犬猿の仲だったか、顔を合わせるとすぐに喧嘩すると言ってたな。ソフィーから聞いた。

「それが、あなたの客に対する口の聞き方なのかしら?全く持って無礼にも程があるわ、エレオノーラ」

まるで俺の声が聞こえていなさそうな態度を示していた、大公の俺をスルーするとは。失礼なのは君だと言いたいが、今は静観しておこう。国の大公がここにいる事がまるで知ってたかのようにここに来た様子のようだし。エレンもまなじりを吊り上げ、敵意を剥き出しにして応酬する。

「客と言うならそれらしい態度を取れ。手土産の一つでも持って来い。最も、お前を客と認める気はないがな」

「まず、人の事をジャガイモだのと罵倒した事を謝罪しなさい」

「お前が先に土下座しろ。人の会話を盗み聞きした事についてな」

俺は空間を切ってから、移動し静かにリムの隣に立っている。まるで最初からそこにいました的な感じで俺はリムの隣にな。

「盗み聞き?あなたの声が馬鹿みたいに大き過ぎるだけでしょう」

「この程度で声が大きいとは、随分狭い世界で生きて来たのだな。可哀想に」

「例え狭い世界だとしても、私は多くのモノを得て来たわ。あなたとは違って」

「多くのモノ、か。そこそこの身長とか、それなりの胸とかはなかったようだな」

「私はまだ十六よ。それらがこれから手に入る余地は充分にある。あなたはどうかしら、エレオノーラ?これから必死に頑張って、老いて死ぬまでに最低限の尊厳や礼儀、気品が身に付くといいわね」

歯軋りの音がした方をかは分からないが、二人とももう少しで戦闘になりそうなくらいになっていた。隣にいるリムを見ると、助けを求めているように見えた。まあここにいる者の上位な者は俺だけ、あとは戦姫と仕える筆頭家臣。

「・・・・一応聞くが、この二人はいつもこうなの?」

「最初に出会った時からこうでした。お互いの『竜具(ヴィラルト)』をつけつけ合い、一国の主とは思えない程の罵詈雑言の応酬で」

「そうなんだ、止める方法はないの?」

「止められる方の心当たりはありますが、遠くにいらっしゃるので無理となれば、今二人の戦姫を止められるのはヴォルン大公だけだと私はそう思いますが。あとはお二人の気が済むまで放っておくしかないでしょう」

リムにしては珍しく疲労と諦念をにじませた表情で首を振った。気が済むまでか、俺がこの二人を止めるにはアレしかないがアレを取り出すと俺が創造神だとバレる。まあバレるのに時間の問題かもしれんが、今は喧嘩より先ほど話してた話題を振らなければならないので、俺はハリセンを取り出してから二人の頭に向かって振り下ろしたのだった。

『パシィィィィィィィイン!パシィィィィィィィイン!』

二回音が鳴った事により、二人は叩かれた方なので頭を押さえていた。リムはリムであれは地味に痛そうだと考えていたら、リュドミラとエレンがこちらを見たのだった。

「お前ら、喧嘩すんなら外でやれ外で」

「アンタ誰よ!戦姫をはたく何て非常識にも程があるわ!」

「俺の名はティグルヴルムド=ヴォルン、プトレマイオス神国の大公をしている者だ。文句あるか?」

そう名乗ったら、二人は頭を押さえながら喧嘩をやめたのだった。空気的には誰も文句はないと言いたいくらいだったが、自然的に俺が殺気と覇気をオープンしてるのかリュドミラもエレンも顔を青ざめていた。俺は?になっていたが、リムが殺気と覇気が漏れてますと言ったので閉めた。

「で、俺に何か用でもあるんだろ?リュドミラ=ルリエ」

「そうだったわ、私はヴォルン大公に会いに来たの。プトレマイオス神国に行こうとしたけど、念には念を寄ってみたの」

「それで?俺に何の用だ」

そう尋ねる俺だったが、まだハリセンを持っていたからか視線をこっちに向けたのだった。

「大した事ではないわ。少し話をしたいだけだから、それをしまってくれるかしら?」

「いいだろう、が、ここでは話にならんから場所を変えないか?エレンがリュドミラを睨んでるし、話にならん。それとこれをしまうのは双方が喧嘩をしないためである。我が王もこれで叩いたと言っていた」

俺は誰の物でもないから、俺の判断で場所を変える事にした。ここだと喧嘩するだけとなるし、幸い俺は大公という偉い位だからなのかエレンも頷いたのだった。場所を変えるためにロドニークへ向かうと言ったエレンだったので、別荘から出た俺らはリュドミラが馬に乗ったので俺は空間からバイクを取り出してから走り出した。その前方にエレンとリムがいて後方に俺とリュドミラが走らせていたけど、エンジン音で馬が驚かないようにエンジン音をオフにしている。エレンとリュドミラが馬を並べる事を嫌ったのでリムがなだめる方になったので、さっさと用事を済ませようと話しかけた。

「俺に話とは何だ?」

単刀直入に尋ねると、リュドミラはバイクを物珍しそうに見るがすぐにこちらの視線を向けた。リュドミラは少し考え込むようになったが、すぐに俺を見る。

「あなたはテナルディエ公爵と戦うそうだけど、それはどうしてかしら?」

俺は呆気に取られたが、すぐに言い返したのだった。

「どうしてって、あちら側から喧嘩を売ってきたのだぞ?それを敵と見なし排除する事がどうしてと聞かれるとは笑止!」

「勝ち目はあるの?」

「あるに決まっているだろう、それを聞くと俺達の戦い方を見てなさそうだな。俺達には弩よりも正確に撃てる武器を持っている、それが1ベルスタ以上でも狙撃可能だ」

「それは嘘ね、どうせ噂の話を本気で信じ込もうとする魂胆でしょ?」

「俺は嘘なんぞ言っていない、ただ真実を言っただけだ。お前こそテナルディエ公爵とは長い付き合いを持っているから、俺らの敵となるとでも言いたいのだろうな」

そう言いながら俺はハンドガンを遠くにあるものを撃った、そうすると遠くにいたはずの動物がたった一撃で死んでいるのを見たリュドミラはさっきのが真実と知ったようだった。銃をしまうと、リュドミラが言った。

「兵を率いて駆けつける事だけが協力ではないわ。金銭、食糧、情報・・・・そういった物を送るだけでも大きな助けになるし、人によっては支持すると公に発言するだけでも影響を与える事があるのよ。あなたはそういった味方はいる?」

「今更だな。俺らには他国を味方にするほど馬鹿ではない、が、俺らにはそういうのが出来るもんが他国にばら撒いている。例えば斥候とかな」

テナルディエ公爵は国内だけではなく、国外にも多くの味方がいる事ぐらいは知っている。それが戦姫だと言う事ももちろん知っているし、多くの協力者がいる事も。俺達は他国の力無しでも力は発揮するし、無人偵察機を大量にばら撒いているお陰で他国の情報は知っている。それを知らないのはジスタートやブリューヌの知り合いやエレン達も含まれる。軽蔑する視線してきたので、リュドミラに向ける。

「その視線をしたって怖くも何ともないぞ、小娘。戦姫だろうが、俺は王の側近であり大公だ。ジスタートの戦姫だろうが、その視線は許さない行為だぞ?」

「・・・・そうね、あなたの言う通り、私は戦姫でそちらは国の大公でジスタートでは上位の者だわ。それで?本音は何なのかしら?」

「アンタは他人を見下しているとはっきり分かる、その眼をしてなくともな」

出来の悪い料理や酷い絵を見たときは好意的に笑っているかと聞かれたが、俺ははっきり言う方だと言っては、出来の悪い者は哂われ、辱めても当然なのかと聞いたら当然じゃないとそう返してきた。

「俺はこれでも何でも出来る方だが、弓だけは得意ではない。それは何故だと思う?」

「そんなの簡単じゃない、弓が得意そうに見えないだけよ!」

「不正解だ、俺にはこれがあるから弓何て必要ないからだ」

そう言ってから銃を出すと、もう一発撃ったらこの先にいたとされる兎が転がっていた。それも300アルシン以上から撃ったと推測されて、しかも前方にはエレン達がいるのに撃った先が兎だった事に驚くリュドミラ。これで理解しただろう、口でも武器でも勝てないと。威厳や愛敬、凄味、貫録というか、覇気だけで充分だと思う。銃の凄さが分かったらこの先にロドニークがあるのでハンドガンをホルスターに収めてから俺とリュドミラの会話が無くなったのだった。 
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