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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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子供は空を飛ぶ鳥である


子供は空を飛ぶ鳥である。気が向けば飛んでくるし、気に入らなければ飛んでいってしまう。
—ツルゲーネフ—

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子供は空を飛ぶ鳥である




港町へと至る長い街道

足取り軽く等と言えぬ状況に陥っている

俺の後方を歩く覆面の男性、もうじきすぐ傍まで近づくだろう

歩幅の差が恨めしい

足音に気づいたときに振り返ったあの瞬間

肝が冷えるどころではなかった

思わず首に手を当てて、今は消えさった絞め跡をなぞる

後ろを歩く男は暁の角都だった


(何なんだよお前S級犯罪者だろうせめてデイダラみたいに少しは変装しろよふざけんな怖い!)


肩に担いだアタッシュケースがより恐怖を際立たせる

あれか賞金首を換金されたんですね?

走り去りたいが一本道の街道で、まだまだ道が続くこの道で逃げ切れるわけがないだろう

せめて飛段がいないのが救いだろうか・・・

・・・そういえば湯隠れの里の飛階のおっちゃん、飛段に似てたな・・・

・・・まさか親族か!?

思わず肩が震え、抑えるように両手で抱き締めた


「そう怯えることはない」


声をかけられた

何故話しかけてきてるんだお前は

沈黙は金なりという偉大な言葉を知らないのか!?

汗をかきながら黙っていると悩みだされた

俺のほうが悩みたい


「ふむ・・・そう怖がられると困るな・・・」


困られても困りますぅ!

距離を取ろうと早歩きで行くが・・・全く距離は変わらない

何だと言うんだ


「・・・何か御用でしょうか・・・」


「あぁ、少し協力して貰いたくてな
 駄賃はやろう」


協力?と聞き返す間もなく、俺は首根っこを引っ掴まれ後方に投げ飛ばされた


衝撃に備えて可能な限り受け身の態勢をとるが、地面ではなく、誰かにぶつかった

あれ?


「うわっ!・・・くそ、ばれたかっ」


茂みに隠れていたゴロツキらしき男たちは刀を抜き、臨戦態勢にはいった

ちなみに多分リーダーであっただろう男はぶつかった拍子に気絶しており、子分たちが必死に揺り起そうとしている

角都は囲まれても悠然と立っており、ゴロツキなど眼中にないようだ


(・・・俺、投げる必要あったか?)


意味のわからない行動に目を白黒させているうちに、角都対ゴロツキ集団は勝敗を決し、あたりは血の海になった

噎せ返るような血の匂いに眉を顰める

いくら自分の血に慣れていると言っても、これだけの血は耐えきれない

気絶から回復したリーダーも復帰してすぐに心臓を貫かれて死亡していた


「・・・ふむ、一文にもならん雑魚め」


返り血を浴びて手帳を確認している

恐らく賞金首について書かれた手帳だろう


「あぁ、悪かったな
 ほら、約束の駄賃だ」


立ちあがって近づいた俺にようやく気付いて何かを渡される

・・・飴玉だった

ひとつふたつどころじゃなく、五袋ぐらいあった

何故こんな大量にと思い、飴の袋を確認すると賞味期限が今日だった

歩き出しながら話しかける


「・・・食べきれないから?」


肩をすくめ、呆れたように答えられた


「仕事の相方が預けていって、そのまま忘れているみたいなんでな」


飛段のおやつを手に入れてしまった

ジャシン様に呪われないだろうか、心配だ

でも投げ飛ばされただけでこんなに貰うのも悪いな・・・

一度も血を拭ったことのない、新しいタオルを角都に差しだす


「返り血、拭ってください」


「・・・あぁ、頂こう」


飴袋を取り出してからも外套のなかを漁っていたのを見て感づいた

こいつタオル忘れてやがる

予想は正しく、素直にタオルを受け取って返り血を処理し始めた

横目で眺めていると、潮の匂いが辺りを漂い始める

目を凝らせば海から反射する光が見えた

ここからなら、走って町にすぐ入れる

角都に向き姿勢を正して一礼した


「タオルは捨てていただいて構いません、飴ありがとうございました!
 失礼します!」


言うが早いが海に向けて走りだす

俺は海が見たいんだ、海は初めてでテンションあがってる子供なんだ

青春少年なんだと自分に言い聞かせて限界まで走る

海だ—と叫びつつ走り去る、そう俺はうみんちゅだ!


背中から生温かい眼差しを感じたが決して振り返ることはなかった


町に入り、茶屋でトイレを借りた瞬間、今までにない量を吐血して死にかけた












〜後日〜


「飛段、お前の飴は処分したからな」

「飴?んなもん渡してたっけ?」

「・・・やっぱり忘れていたか」

「んー?まぁいいけどよォ・・・処分って捨てたのか?珍しいな」

「いや、海が大好きな子供にやった」

「・・・?ところでそいつらは?」

「子供が近くにいたから攻撃を仕掛けることのできなかったゴロツキ共の死体だ」

「・・・子供?」

「あぁ子供だ」

「そっかー子供かー」

「海が大好きなんだ」

「お前が?」

「違う」




 
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